あなたに忘れられない人がいても――公爵家のご令息と契約結婚する運びとなりました!――

おうぎまちこ(あきたこまち)

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 もうすぐ結婚式が迫ってきていた。
 
 シャーロック様の屋敷にお世話になっていた私だったが、さすがに結婚式の前しばらくは実家で過ごすことになった。
 そうして、彼から受け取った空色のドレスを、花嫁修業の合間に縫製にいそしんでいた。

「上半身部分はこれで完成ね」

 徐々に完成に近づきつつあるドレスを見ながら、ぼんやりと考える。

(これを着ていた女性はどんな人だったのかしら……?)

 シャーロック様の反応を見るに、おそらく妹君のものではなく、恋人だった人に贈る予定だったものだろう。
 なんとなく、そんな風に思った。

(社交界で浮名を流してきた人だし、私にもよく贈り物をしてくださる……だけど、先日の哀しそうなシャーロック様を見るに……数多くいる女性に、軽い気持ちで贈ろうとしたプレゼントではなかったのだと思う……)

 逆光で顔は見えなかったが、どこか苦しそうな雰囲気を見せていた。

 もし、軽い気持ちでお付き合いをしてきた女性への贈り物だったなら――。

(「ああ、昔懇意にしていた女性に贈るつもりのものだったんだよ」とか、軽い気持ちで返してくると思うのよね……)

 だけど、そんな反応を彼はしなかった。

(女性慣れしているシャーロック様の心を射止めた女性……)

 考えるととりとめもなく気になってくる。

(女性好きなのは玉に瑕だけど、非の打ちどころのない男性なのに……どうして、その女性と結婚しなかったのかしら?)

 元令嬢で貴族籍を失くしている自分と結婚するぐらいなのだから、身分差が影響したわけではないだろう。

「シャーロック様の片想いだったのかしら……?」

 夫になる男性の過去の相手のことが気にならないと言えば嘘になるが、気にしてもしょうがない。
 過去は変えられないのだから、受け入れていくしかないだろう。
 そもそもが契約結婚なので、割り切るしかないとも言える。

(よし、ひとまず結婚式が終わったら、ドレスを完成させなきゃ!)

 そんなことを考えていると、扉を叩く音が聴こえた。
 中に入ってきたのは、父親だった。

「アメリア、客人だよ、応接室にいらっしゃい」

 父に促されるまま、客人のもとへと向かったのだった。



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