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 教会群の敷地内にある薔薇園にて――。

 咲き誇る花々の甘い香りが鼻腔をつく。

 夜風が花びらを舞散らす中。

 東屋の長椅子の上に座る私の前に、シャーロック様が傅いていた。

「……シャーロック様……」

「アメリア……」

 彼はちゅっと手の甲に口づけてくる。
 その後、指先一本一本に丁寧にキスをし続けた。


「――君に俺のちゃんとした奥さんになって欲しいんだ」


 翡翠の瞳には、真剣さが宿っていた。

「もちろんです、シャーロック様……私を貴方の本当の奥さんにしてください」

 彼がギシリと音を立てながら、木の椅子に座る私の身体を覆う。
 彼に一度口付けられた後、彼の唇が首筋を這いはじめた。
 柔らかなそれは、鎖骨に到達した後、二つの膨らみへと近づきはじめる。

「シャーロック様……」

 そのまま彼の舌が肌を吸い、いくつもの花びらを散らしはじめた。
 スカートの裾から、彼の両手が侵入し、太腿を撫で擦られる。
 身悶えしてしまって、なんだか気恥ずかしかった。

「アメリア……綺麗だ……」


 視線を絡ませ合う。
 腰を抱き寄せられた後、シャーロック様が何度も頬に口づけて来た。
 彼の身体と密着しあい、恥ずかしさが増していく。

「初夜の日はごめんね……あんまり君が可愛いから、余裕を失くしてしまって――」

「余裕がなさそうには全く見えませんでした……初夜以外はシャーロック様が私に手出ししてこないからら、てっきり私は何かやらかしたんだと思ってましたもの」

 彼は翠の瞳を真ん丸に見開く。

「こんなに女性の反応が気になったのは、生まれて初めてだったんだ……君が言うように、マーガレットのドレスを仕立てるようになってから、君の一挙手一投足が気になってしまって……なんだか気持ちが落ち着かなくて、自分でもよく分からなくなってしまって……」

 彼は続ける。

「初夜の日に、君を俺で満たしたら落ち着くかと思ったのに、そんなことはなくて……まずは君のことを先に知らないといけなかった、順番を間違えたかもしれないって思って……あと、実は他の問題もあったんだけどね……」

 ――他の問題とはなんだろう?

 気にはなったが聴かないことにした。

「だからあの日以来、お喋りとかお出かけとか、プレゼント攻撃が増えたんですね――なんだか女友達みたいになったなって思ってました」

「女友達……君に好かれるなら、夫でも兄弟でも女友達でもなんでも良いや……」

 しかしながら、目の前でシャーロック様が葛藤をはじめだした。

「でも、やっぱり女友達だとダメだ……」

「どうしてですか?」

 腕の力がぎゅっと強くなる。

「だって、女性同士だったらこういうことが出来なくなるだろう……」

 彼が私の髪を撫でながら続けた。

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