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12-1※
しおりを挟む教会群の敷地内にある薔薇園にて――。
咲き誇る花々の甘い香りが鼻腔をつく。
夜風が花びらを舞散らす中。
東屋の長椅子の上に座る私の前に、シャーロック様が傅いていた。
「……シャーロック様……」
「アメリア……」
彼はちゅっと手の甲に口づけてくる。
その後、指先一本一本に丁寧にキスをし続けた。
「――君に俺のちゃんとした奥さんになって欲しいんだ」
翡翠の瞳には、真剣さが宿っていた。
「もちろんです、シャーロック様……私を貴方の本当の奥さんにしてください」
彼がギシリと音を立てながら、木の椅子に座る私の身体を覆う。
彼に一度口付けられた後、彼の唇が首筋を這いはじめた。
柔らかなそれは、鎖骨に到達した後、二つの膨らみへと近づきはじめる。
「シャーロック様……」
そのまま彼の舌が肌を吸い、いくつもの花びらを散らしはじめた。
スカートの裾から、彼の両手が侵入し、太腿を撫で擦られる。
身悶えしてしまって、なんだか気恥ずかしかった。
「アメリア……綺麗だ……」
視線を絡ませ合う。
腰を抱き寄せられた後、シャーロック様が何度も頬に口づけて来た。
彼の身体と密着しあい、恥ずかしさが増していく。
「初夜の日はごめんね……あんまり君が可愛いから、余裕を失くしてしまって――」
「余裕がなさそうには全く見えませんでした……初夜以外はシャーロック様が私に手出ししてこないからら、てっきり私は何かやらかしたんだと思ってましたもの」
彼は翠の瞳を真ん丸に見開く。
「こんなに女性の反応が気になったのは、生まれて初めてだったんだ……君が言うように、マーガレットのドレスを仕立てるようになってから、君の一挙手一投足が気になってしまって……なんだか気持ちが落ち着かなくて、自分でもよく分からなくなってしまって……」
彼は続ける。
「初夜の日に、君を俺で満たしたら落ち着くかと思ったのに、そんなことはなくて……まずは君のことを先に知らないといけなかった、順番を間違えたかもしれないって思って……あと、実は他の問題もあったんだけどね……」
――他の問題とはなんだろう?
気にはなったが聴かないことにした。
「だからあの日以来、お喋りとかお出かけとか、プレゼント攻撃が増えたんですね――なんだか女友達みたいになったなって思ってました」
「女友達……君に好かれるなら、夫でも兄弟でも女友達でもなんでも良いや……」
しかしながら、目の前でシャーロック様が葛藤をはじめだした。
「でも、やっぱり女友達だとダメだ……」
「どうしてですか?」
腕の力がぎゅっと強くなる。
「だって、女性同士だったらこういうことが出来なくなるだろう……」
彼が私の髪を撫でながら続けた。
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