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第1章 海外での出会い
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しおりを挟むそうして、美青年が下衣のポケットからスマホを取り出すと通話をはじめた。
「Hallo. Ich möchte Sie um einen Gefallen bitten」
クリスマスマーケットの店先でも思ったが、日本人だがドイツ語が堪能なようだ。何を話しているのか聞き取ることができないが、なんとなくどの言語かは理解できる。
「よし、俺の知り合いのところのホテルを紹介してやるから。こっちについてこい」
「え? もう見つかったんですか?」
「ああ、そうだよ。ほら、行くぞ……って、どうした?」
「実は……脚が震えて歩けそうになくて……」
「ああ、あの男に追いかけられて怖かったのか。だったら、ほら」
すると、美青年が美桜の身体をひょいと抱き上げた。
先ほどのように猫よろしく抱えられているわけではなく、いわゆるお姫様抱っこの状態だ。
「ええっと、あ、あの……! 重いんじゃないんですか?」
「さっきも言ったが軽いから気にするな」
かくして――横抱きにされたまま移動することになった。
人通りがある場所だし、日本人の男女が珍しいのか、ジロジロと視線を向けられる。
(こういうことするの慣れてる人なのかな?)
別れる前にも、後腐れない女性がどうとか、何かあったような言い方をしていた気がする。
そのままの格好でしばらく連れて行くと――大きな門柱が目に入る。
「ここは?」
思わずキョロキョロしてしまった。
あまり高い建物が少ない土地なのだが、小さなお城のような場所だった。
門を抜けた先には噴水があり、左右には薔薇園がそれぞれに設けられている。
「すごく可愛い場所ですね。童話のお城みたいに可愛い場所……!」
「あんたのことを見てたら、この場所が浮かんだんだよな。ここがあんたに泊ってもらうホテルだ」
「ここ、ですか……?」
見るからに高級そうな場所だ。
「ホテル代は俺が腹ってやるから気にするな」
「払ってやるって、こんなに立派なホテルの宿泊料金を払ってもらうなんて、そんなことはできません!」
「別に気にするなって。同じ日本人のよしみだ。ほら、案内してやるから」
そうして、抱きかかえられたまま玄関まで向かう。メルヘンチックな見た目だが、ちゃんと自動扉が備え付けられていた。二メートル近くある自動扉が左右に開くと、ホテルマンたちと黒づくめの男たちが左右に控えていた。
エントランスは上品に整えられており、シックな色合いの大理石がキラキラと輝いている。受付には綺麗な薔薇が飾られており、エレガントな印象が強い内装だ。
(それにしたって……)
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