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第1章 海外での出会い
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しおりを挟む美青年がこんな高級ホテルに顔パスだったことに驚きを隠せない。
現れたドイツ人男性と美青年とがドイツ語で会話をはじめる。
そうして、挨拶を済ませた後、奥にあるエレベーターへと向かった。
「すごいお金持ちの方とお知り合いなんですね?」
「ん? まあな。ほら、どうせまだ足が動かないんだろう? 俺が部屋まで案内してやるから」
「ありがとうございます!」
その時。
ぐ~~。
(……っ!)
美桜のお腹の音が盛大に鳴り響く。
(は、恥ずかしい……! 穴があったら入りたい……!)
顔を真っ赤にしてプルプル震えていると、美青年が腹を抱えて笑い始めた。
「ははっ、今日だけで一生分は笑ったな」
「さすがに一生分は言い過ぎじゃないですか……?」
「ああ、すまない。普段はこんなに笑ったりはしないんだがな」
たまたま視界にドアマンたちの姿が映ったが、皆が一様に美青年の笑顔を見て驚愕していた。
(なんなの……?)
「久しぶりに笑わせてもらったな。ほら、周りのやつらも奇妙なものでも見てるみたいだろう?」
よく笑う印象があった美青年だったが、周囲の反応を見るに、どうやら本当に滅多に笑わない人物のようだ。
「俺を笑わせられるとか、お前、絶対に何かの才能があるよ」
「……褒められている気があまりしません」
「そりゃあ、悪かった。ちょうど一階にレストランがあるから、先にそこに連れて行ってやるよ」
そうして、予告通り、ホテルの備え付けのレストランへと案内された。ふと、窓の向こうに視線を移す。
ちょうど川に面しており、対岸に立つ建物の灯りが、まるで星々のように煌めいていた。
「わあ、すごく綺麗な夜景!」
テーブル席への案内も忘れて、美桜は窓から映る光景に感動した。
隣に立った美青年が外の景色の説明をしてくれる。
「昼間だと、オレンジ色の屋根の家がたくさん建っているのが分かる。童話に出てくる建物みたいで、あんたも見たらもっと喜ぶかもな」
「観光ガイドにも書いてあった気がします! 可愛らしい建物がいっぱい建ってるんですよね!」
「そうそう、なんだ、知っていたのか。百聞は一見に如かずだ。明日の朝にでも部屋から眺めてみろよ」
「そうしてみます!」
そうして。
テーブル席に誘導されると、美味しそうな食べ物たちを食することになった。
白いテーブルウェアの上に並べられるのは、極上の味たちだ。
レンズ豆のスープには大胆にソーセージが丸々一本入っていて、驚かされてしまった。赤ワインと酢で煮込んである牛シチューの芳醇な香りとコクのある味で満足感がすごく高い。白身魚のムニエルは上品で軽やかな味わいだ。デザートにはハイデルベルク定番のメダル型のチョコも食べれて、うっとり夢見心地になった。
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