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第3章 身体だけの関係?
15ー1 仕事で
しおりを挟む翌朝。
美桜は朝早くに職場へ向かっていた。
トレンチコートにマフラーを巻いてミトンを装着して完全防備している。しかしながら、コートの中はポカポカして温かいが、外に曝け出している部位は、とにかく寒い。
太陽が覗きはじめているものの、寒くて寒くて仕方がない。
吐く息は白くて、息をすると身体の中までひんやりしてしまう。
(寒いの、苦手だな。冬は温かいお布団の中でくるまって、ぬくぬく過ごしていたい)
夏は薄着で過ごせるから好きだが、最近の夏は暑すぎるので、どちらが好きかと言われれば、少々悩んでしまうけれども。
(昔、おばあちゃんのお家の縁側でぽかぽか日向ぼっこして過ごしたなあ、懐かしい)
祖父母と過ごした頃のことを思い出すと、なんだかポカポカ胸が温かい。
両親が不仲だったものの、祖父母は仲がすごく良かった。
お見合い結婚だったらしいので、交際日数は0に近い状態だったようだが、夫婦円満だった。
彼らこそが、美桜の理想とする幸せな家庭像となっている。
祖母は祖父以外の男性とは関係を持たず、祖父とだけ添い遂げていたので、自分もそうなったらなと思っていたけれど……。
(私はもしかしたら誰とも結婚できないかもしれないな。初めての男性がよりにもよって、自分の夢が叶いにくい男性だったなんて)
初体験の男性と結婚したいというのは、なんとなく自分のこだわりみたいなものだ。
(猫ちゃんみたいに他の男性とたくさん……みたいに、まだ割り切れないかも)
とはいえ、そもそも両親の言いなりで結婚するのも嫌だったから、これはこれで良かったに違いない。
恭司と結婚したいかどうかは分からないが、他の男性との結婚願望のようなものもない。
(そういえば……)
なんとなく結婚で思い出したことがある。
昨晩、恭司と別れた後に、かつて働いていた際の上司・新宮部長からメールが届いていたのだ。
『梅田さん、突然、退職しとったから驚いた。一緒に食事に行かへんか?』
――とても優しい上司だったので、美桜の退職に心を痛めているのだろう。
その気遣いや心配りはとてもありがたいものではあるが……。
(婚約者のいる男性とは二人きりでは食事にはいけない)
仮に他の職員が一緒だったとして、噂の件もある。
それ以上に……。
(恭司さんが毎日一緒に食事しようって言ってくれたもの)
だから、新宮部長に対してはメールでははっきりと「気持ちは嬉しいですが、ごめんなさい、行けません」と答えたのだった。
(恭司さんに相談しようかとも迷ったけれど、連絡先が分からなかったし……)
そもそも恋人でもなんでもない。
身体の関係があるのは間違いないし、黒猫ミオの世話係を命じられたし、毎晩一緒にご飯を食べようと言われたけれども……。
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