88 / 228
第3章 身体だけの関係?
15-5 恭司side
しおりを挟む恭司が眉を顰めた。
難波が意気揚々と口にする。
「あの子がどこの部署かは知らないし、どんな理由で退職したのかは分からんが、なんか関係がありそうじゃないか? あんな可愛い顔して、順一がこっそり送って来た企業スパイだったりとかさ、妄想が弾んで――」
「難波」
恭司が低い声で制した。
「それ以上、おかしな話をするようだったら、お前をここで解雇するぞ」
ピリピリした緊張感が室内を支配する。
難波はしばらく硬直していたが、恭司の機嫌をとりはじめた。
「悪いって、面白おかしく噂話をしただけだって」
恭司はむっつりと黙りこんだ。
「恭司、俺が悪かった、お前がそこまで機嫌を悪くするとは思っていなかったんだって」
先ほどの難波の話について、恭司も思い至っていた内容ではある。だからこそ、昨日のうちから、美桜の噂話に関して調査を進めているところだ。
男女の噂話は面白いからと、いつの時代も広まりやすい。
難波の反応はある意味当然のものだし、話題を盛り上げようとしているだけだろうし、美桜を傷つけようとする意図があったわけではないのは分かっている。だが、第三者が面白おかしく話すことで、被害者はさらに傷つくし、第三者も加害者の立場に回ってしまう。
古くからの友人である難波を加害者にしないようにと制したのももちろんだが……。
(まあ、そもそもだ、あいつの処女を貰ったのは俺だしな)
美桜の性格なんかを鑑みても、順一と何かあったわけではないのだって知っている。
なのに……。
「なんでこんなにも不愉快なんだろうな」
――昔、ドイツで過ごしていた時に、女性達が恭司の関心を惹きたくて、当てつけに別の男性に抱かれただとか、告白されたりしている、恋人が出来た……などなどの発言をしてきていたことがあった。
その女性達と他の男性との噂が流れているのなんて、欠片も気にしたことがなかったのに。
『恭司さん』
美桜が頬を染めて笑いかけてくる姿が脳裏に浮かぶ。
(俺以外の男との噂だとか……)
想像するだけで胸の内がモヤモヤしてくる。
「面白くないな」
難波がこちらの顔色を窺ってきていた。
恭司は革張りのソファに背中を預け、黒髪をかきあげると独り言ちた。
「……あとで呼び出して聞いてみるか?」
連絡先も知らないから名案だ。
そうして――恭司はイタズラを思いついた少年のように口元を綻ばせると、難波に聞こえないぐらいの小さな声で呟いた。
「飼い猫の動向を逐一把握しておくのも、飼い主の役目だろうしな」
公私混同するなと言ったばかりの恭司だったが、ただ単に美桜に会いたいだけだなんて――彼本人が本心に気づいていなかったのだった。
78
あなたにおすすめの小説
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ブラック企業で倒れた私を、ネトゲ仲間の社長が強制保護して溺愛しています
紅 与一
恋愛
過労で倒れた私を救ったのは、
ネトゲ仲間――そしてIT企業の若き社長。
「もう君は、僕の管理下だよ」
退院と同時に退職手続きは完了。
住む場所も、生活も、すべて彼に囲われた。
外出制限、健康管理、過保護な独占欲。
甘くて危険な“保護生活”の中で、
私は少しずつ彼に心を奪われていく――。
元社畜OL×執着気味の溺愛社長
囲い込み同棲ラブストーリー。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない
二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。
ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。
当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。
だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。
――君の××××、触らせてもらえないだろうか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる