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第4章 兄弟が愛した女性
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しおりを挟む(恭司さんは私を幸せにしようとしてくれている?)
――どんな風に不幸にしないと考えてくれているのだろうか?
もしも、一人の女性として幸せにしてくれようとしているのなら嬉しいのだが……。
(愛人だったお母様のようにはしないってことだから、もしかしたら……)
教会で彼と腕を組んで過ごす自分の姿をついつい想像してしまう。
都合の良い想像かもしれないけれど、幸せな未来を考えていたら、なんだか幸せだ。
(はやく恭司さんとミオちゃん、帰ってこないかな?)
その時。
砂利を踏む音が聞こえた。
美桜の頭上にサッと影が差す。
「恭司さん……?」
美桜はブランコに座ったまま、人影に向かって声をかけた。
逆光で姿が見えない。
だけど……。
(恭司さんじゃない)
シルエットですぐに分かった。
恭司よりもやや身長が低くて細身の男性だ。
美桜は猫のようにびくついて、ブランコから飛び降りた。
先ほど恭司が言い残していった言葉が脳裏を過る。
『おかしな男にはついていくなよ』
こんな時に限って、ドイツでおかしな男に追い回された思い出が脳裏を過る。
(あ……)
美桜の血の気が引いていく。
心臓がバクバクとおかしな音を立てている。
まだちょっとあの件がトラウマになっているようだ。
逃げないといけない。
けれども、恭司からは待っていろと言われた。
(ちゃんと自分で考えないと……)
さすがに恭司だって、知らない男に襲われるぐらいなら、その場から逃げろというだろう。
――ここは逃げるしかない。
美桜が一歩後ずさった、その時。
「梅田? そこにいるのは梅田やろ?」
美桜はハッとする。
(この声……)
顔を上げると、声の主の方へと視線を向ける。
少しだけ色素の薄い髪色に、キリリとした眉に穏やかそうな眼差し、上品ですっきりした顔立ちの美青年。
荒々しい獣のような恭司とは違って、貴公子然とした優美な所作でこちらに歩を進めてくるのは――前の会社の上司・新宮順一だった。
いかにも御曹司といった出で立ちで、休日だけれど品の良いスーツの上に高価なコートを身に纏っている。
「新宮部長……!」
美桜が声を上げると、相手が歓喜の声を上げてくる。
「やっぱり梅田や。僕のお気に入りの、妹分の美桜ちゃんや」
気付いた時には接近してこられていて、ぼんやりしていた美桜の目の前に新宮部長がそばに立っていた。
恭司よりも少しだけ低いがかなりの長身男性だ。
見下ろされると、まるで大人と子どものようでもある。
穏やかで優しくて気さくな人物だったのに、多くの女性社員たちの憧れの存在だった。
(どうして新宮部長がこんなところに……?)
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