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第5章 兄弟からのプロポーズ
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しおりを挟む「順一さんは恭司さんとは敵じゃないんですか? 恭司さんの会社が大きくなったら、順一さんは困るんじゃ……?」
「んん? 美桜ちゃんがどう思っているかは知らんけど、僕としては恭司兄さんとは仲良くやりたいって思うとる。僕は子どもの頃から兄さんにアプローチしてはフラれてばかりやけどね」
そうして、順一が続ける。
順一の寂しそうな笑顔を見ると、美桜としても何となく胸が苦しくなった。
「恭司兄さんは子どもの頃から僕の憧れなんや。何でもできる。すごく妬ましかった。けど、そんな感情はもう通り越してしまった。ただただ僕にとっては雲の上の存在で……尊敬しとるんや。そんな兄さんにはどうか幸せになってもらいたいって思うとる。ただ、やっぱり人間離れしすぎていて、一緒におったら僕は卑屈になってしまうし、きっと美桜ちゃんも僕と同じ側の人間なんや。やからこそ心配しとる」
新宮部長だってかなり有能な人間だ。
だというのに、それ以上に優れているとみなされている恭司。
「美桜ちゃんも僕にとっては小さな頃から大事な存在なんや。やけど、恭司兄さんのそばにおるには純真すぎるんや。今はいいかもしれへんけど、五年十年一緒に暮らしている内に――だんだん美桜ちゃんが恭司兄さんのそばにいるのが苦しくなってくると思うんや」
ドクン。
美桜の心が揺れ動く。
順一は恭司のことも美桜のことも心配してくれているのだ。
ドクンドクンドクンドクン。
(恭司さんにとって相応しい女性は……私なんかじゃなくて……)
そんなことは最初から分かっていたつもりだ。
けれども、実際に事実に直面させられると、芽生え始めていた恋心がどんどん窮屈になって苦しくなってくるようだ。
「美桜ちゃんが恭司兄さんのことは分かった。恭司兄さんは財産も持ってるし、僕らの父さんみたいに度量が広い。せやから、僕の元婚約者と結婚したとしても、美桜ちゃんのことも面倒見てくれるかもしれへんけどな」
ドクン。
ドクンドクン。
『俺は母親を捨てた父親みたいに絶対にならない。一人の女性を不幸にはなしない。そう決めている。だから……俺があんたの世話をずっと見てやるよ』
美桜は首を横にフルフル振った。
「恭司さんはお父様のことがあるから、一人の女性を不幸にしないと話していました」
だから、きっと妻が出来たら愛人を置くような生活はしないはずだ。
――美桜では……。
(五年十年先、恭司さんに何かの利益をもたらしてあげたりは出来ない)
美桜は唇をきゅっと噛み締めた。
順一が彼女の肩をポンと叩いてくる。
「まあ、余計なお世話やったかもな。僕が恭司兄さんに関して色々話したのは憶測やねんけど、僕が見てきた恭司兄さんなら、そういうことしそうやなっていう弟としての意見でもある。だけど、美桜ちゃんが恭司兄さんのことで傷つく姿は見たくない。だから、もしも困ったら僕を――順一お兄ちゃんを頼ってな」
それだけ言い残すと――順一は掌をヒラヒラさせながら雑踏の中へと姿を消したのだった。
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