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最終章 一途な愛で孕みました
41ー2
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新宮環のことを思い出すと鬼気迫るものがあった。
あの調子でずっと過ごしていたら、かなり辛かっただろう。
先ほどだって、過去の自身への仕打ちを告発して良かったし警察に突き出して良かっただろうが、「意味がない」からとそうはしなかった。彼女と同じ土俵に立ちたくないのかもしれないが、美桜が嫌がるからだと思ったのかもしれない。
「順一と一緒に飼っていた黒猫も死んで、無気力なままで過ごしていたら、親父に部下のところに娘が生まれたからついてこいって言われてな。屋敷にいたくなかったから、ついていったことがあったんだ」
「部下の娘さん……?」
「ああ、それで俺が飼っていた猫の名前を口にしたら、母親が気に入ってそのまま娘の名前になったんだ」
「恭司さんがその女の子の名づけ親なんですね?」
「まあ、そうなるな」
そうして、恭司が淡々と話を続けた。
「それからだ。俺が名前をつけたからか知らないが、『黒猫の生まれ変わりの女の子がいるから一緒に遊ぼう』って世迷いごとを言い始めた、もちろん俺は相手にしなかったんだが……」
美桜は拳を握って抗議をはじめた。
「子どもらしくてかわいいじゃないですか。子どもは空想に浸るものなんです。世迷いごととか言い方が辛辣すぎます。子どもには優しくしてほしいです」
「ん? 俺も当時は子どもだったんだがな。子どもに優しくすることに関しては善処する。……それで、話は戻すが、新宮本家の屋敷での俺の隠れ場所にその名前を付けた子どもが現れることがあった。新宮の会社のイベントなんかの時だろう」
「隠れ家?」
「ああ。木の下だけどな。人気がないんだが、黒猫みたいに突然現れて、絵本を読んでくれって話してきたんだ。それで時々読んでやってたら、懐いてきてた」
恭司が少しだけ嬉しそうだった。
「あれだ。女が好きそうな話で、ドイツの古城みたいなのが出てくる絵本だ。お姫様のために騎士が成り上がる感じのやつ。不遇な騎士が姫と最後には結婚する類の。姫は魔法が使える黒猫を飼ってるんだ」
「お姫様と騎士様!」
美桜の表情がぱあっと明るくなった。
――子どもの頃に見ていた絵本に似ている。
「そう。それで、そいつが言うんだ、『お兄ちゃん、この騎士様に似てる』って。絵本の不細工な騎士に俺が似てるって言い張るんだ。『きっとお兄ちゃんもすごくなれるよ。そうしたら迎えにきて。お城に連れて行って』って」
恭司が嬉しそうに口元を綻ばせている。
「すっかり忘れてたな。記憶力はいいはずだったが……すぐ後に、一族の奴らに閉じ込められたりしたから、周辺の記憶が飛んでたんだろうな。ぼんやり頭の中にドイツの古城の記憶が残ってて……無性にドイツに行かないといけない気がして、あっちの大学を受けたんだったなって……どうした?」
美桜は頬を膨らませていた。
あの調子でずっと過ごしていたら、かなり辛かっただろう。
先ほどだって、過去の自身への仕打ちを告発して良かったし警察に突き出して良かっただろうが、「意味がない」からとそうはしなかった。彼女と同じ土俵に立ちたくないのかもしれないが、美桜が嫌がるからだと思ったのかもしれない。
「順一と一緒に飼っていた黒猫も死んで、無気力なままで過ごしていたら、親父に部下のところに娘が生まれたからついてこいって言われてな。屋敷にいたくなかったから、ついていったことがあったんだ」
「部下の娘さん……?」
「ああ、それで俺が飼っていた猫の名前を口にしたら、母親が気に入ってそのまま娘の名前になったんだ」
「恭司さんがその女の子の名づけ親なんですね?」
「まあ、そうなるな」
そうして、恭司が淡々と話を続けた。
「それからだ。俺が名前をつけたからか知らないが、『黒猫の生まれ変わりの女の子がいるから一緒に遊ぼう』って世迷いごとを言い始めた、もちろん俺は相手にしなかったんだが……」
美桜は拳を握って抗議をはじめた。
「子どもらしくてかわいいじゃないですか。子どもは空想に浸るものなんです。世迷いごととか言い方が辛辣すぎます。子どもには優しくしてほしいです」
「ん? 俺も当時は子どもだったんだがな。子どもに優しくすることに関しては善処する。……それで、話は戻すが、新宮本家の屋敷での俺の隠れ場所にその名前を付けた子どもが現れることがあった。新宮の会社のイベントなんかの時だろう」
「隠れ家?」
「ああ。木の下だけどな。人気がないんだが、黒猫みたいに突然現れて、絵本を読んでくれって話してきたんだ。それで時々読んでやってたら、懐いてきてた」
恭司が少しだけ嬉しそうだった。
「あれだ。女が好きそうな話で、ドイツの古城みたいなのが出てくる絵本だ。お姫様のために騎士が成り上がる感じのやつ。不遇な騎士が姫と最後には結婚する類の。姫は魔法が使える黒猫を飼ってるんだ」
「お姫様と騎士様!」
美桜の表情がぱあっと明るくなった。
――子どもの頃に見ていた絵本に似ている。
「そう。それで、そいつが言うんだ、『お兄ちゃん、この騎士様に似てる』って。絵本の不細工な騎士に俺が似てるって言い張るんだ。『きっとお兄ちゃんもすごくなれるよ。そうしたら迎えにきて。お城に連れて行って』って」
恭司が嬉しそうに口元を綻ばせている。
「すっかり忘れてたな。記憶力はいいはずだったが……すぐ後に、一族の奴らに閉じ込められたりしたから、周辺の記憶が飛んでたんだろうな。ぼんやり頭の中にドイツの古城の記憶が残ってて……無性にドイツに行かないといけない気がして、あっちの大学を受けたんだったなって……どうした?」
美桜は頬を膨らませていた。
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