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最終章 一途な愛で孕みました
最終話ー4
しおりを挟む公園に向かう。
クリスマスということで、公園の中は賑わっていた。まるでドイツの時のように、クリスマス。マーケットのような屋台が出ていたりして、楽しそうな雰囲気だった。木や遊具にイルミネーションも飾られており、家族連れの子どもたちが嬉しそうにはしゃいでいた。
「あ、あちら!」
そう。実は恭司の父――元新宮当主の新宮譲之助が美桜の元を訪ねに来たのだ。
「預かってたミオちゃんが帰りたい言うてたから返しにきたで」
「恭司さんのお父様、ありがとうございます!」
黒猫ミオも「にゃあ」と嬉しそうに笑った。
恭司は少しだけ遠巻きに、美桜と譲之助のやりとりを眺めていた。会話の内容は聞こえているか聞こえていないか分からないぐらいだ。
(恭司さん、まだ少しわだかまりがあるのかも)
しばらく他愛のない話をした後、譲之助は沈鬱な表情を浮かべつつも笑いながら話してくれた。
「美桜ちゃん、黒猫ミオちゃんはね、恭司の母親から預かった黒猫なんや」
「そうなんですか? 恭司さんのお母様は……」
「先月ドイツで亡くなったんや」
「先月……ドイツ」
美桜は目を見開く。
――橋の上、恭司が涙を流していたのは……。
「ああ。どうも恭司の先生やってたみたいやけどな。恭司の母親は、最後まで自分が母親だとは名乗らんかったみたいやけど。顔立ち似ているし、恭司も分かってたんと思うよ」
どうやら――数か月前、恭司の母・清香と父・譲之助はたまたま連絡を取る機会があったらしい。譲之助の妻であり順一の母である環に許可を取り、二人はドイツで顔を合わせたそうだ。恭司の母は本当は誰にも何も言わずに死ぬ予定だったようだが、恭司のことがどうしても引っかかって譲之助を呼び出したようだ。
その際に、黒猫タマ――もといミオを預かったのだという。
つまるこころ、ドイツで会った気がしたのは気のせいではなく、恭司と美桜の出会いに立ち会った張本人(張本猫?)だったのだ。
「もっと早くに相談していたら順一が生まれてなかったかもしらん。せやったら、今となってはこの状況も儂としてはええと思うとるが、ほんまに子どもたちには苦労をかけてしもうた」
清香は環のことを妹のように、環は清香のことを姉のように、お互いに思っていたらしい。清香は譲之助と恋人同士だったようだが、環と譲之助が婚約関係になってしまった。二人のことを大事に思っていたがゆえに、清香は身を引いたらしいのだが、その後に恭司のことを妊娠していたことに気付いてしまった。
そこからは複雑な感情を抱えたまま過ごしてきたようだ。
「環は恭司の母親のことがあったせいで、性格がきつうなってしまってな。恭司に辛く当たってしもうた自覚があるんや。……せやけど、心を病んでいることは免罪符にはならへんからな。責任とらなあかんところは、しっかりとらなあかん。それでな、持ってる関連会社の株やら財産やら、全部恭司に上げようかって話になったんやけど……」
譲之助が続ける。
「恭司が『あの煩い母親の面倒見てたのは順一だろう? あいつに譲ってやれ。財産まで俺に渡してくるな』って言われてな」
「恭司さん、そんなことを……」
「元凶は自分にある。これからの余生はちゃんと自分の犯した過ちに向かい合って生きて行こうと思ってるんや。こんな爺さんやけど、猫のミオちゃんと一緒に孫の顔はみせてもらえたら嬉しいなあ」
そうして、譲之助は公園から立ち去って行った。
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