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ハネムーン後日談
3 ギルフォードside※
しおりを挟む奥深く抉った後、彼女の身体を浮かせた。すると、彼女の肉襞が自分を離すまいと、きゅうっと締め付けてきた。
あまりの愛おしさにギルフォードの先端から雫がまた溢れる。
先に果てては恰好がつかない。
腰を揺り動かし、彼女の身体を上下させた。
悦ぶ彼女の媚態に心が躍る。いつの間にか彼だけでなく、彼女も身体を弾ませていた。
「腰を揺らして、可愛いな、ルイーズ……」
「揺らしてなんかっ……っ……あっ……あんっ……」
座席が軋む間隔がギシギシと狭まっていく。
ぐちゅぐちゅと淫秘な水音と懊悩な声とが車内に奏でられた。
「ギル、もっと……あんっ、あっ、はっ、あっ、あっ、あ……」
「ルイーズ……あんまり、可愛いこと言うなよ」
ルイーズを快楽の高みまで突き上げる。
ギルフォードの頭の中に甘美な痺れが駆け抜け、熱杭が律動をはじめた。彼自身も果てた。欲望は留まるところを知らず、ぶるりと震えたギルフォードは、愛しいルイーズの中に断続的に精を放つ。
ひくつく花襞に熱くしめつけられ、最後の一滴まで絞り出した。
愛し合った跡が二人の肌を零れ落ちていく。
恍惚とした表情を浮かべるルイーズに、愉悦を浮かべたギルフォードは口づけた。そっと唇を交わし合う。
「ギル、どうしよう……」
「ああ、わりぃ、汚しちまったな……」
馬車の座席を汚して心配そうにしている妻を安心させるように、彼は彼女の頭を撫でた。
「――大丈夫だ。こんなこともあろうかと準備はしてある」
車内の隅に、彼女の替えのドレスを置いてある。
彼女は怪訝そうな表情を浮かべる。
「準備していたの?」
「ああ」
いついかなる時も、こういった事態になることを予測して――けれども、愛しいルイーズに恥はかかせないように、ギルフォードは手を打っていた。
「困った顔も怒った顔も、もちろん堪らないがな……」
「ん? ギル、何か言った? ねえ、そう言えば、ご友人からもらった封筒の中身はなぁに?」
妻の質問にギルフォードはぎくりとした。
つとめて平静に返答する。
「ああ、これか? まあ、仕事が捗るための道具みたいなものだよ?」
嘘はついていない。
友人からもらったのは、隣国で彼女が紹介された際の新聞の切り抜きだ。自国では手に入らないものを頼んでとってもらっていた。
職場のデスクの上に、写真と一緒に飾ろうと思っていたのだ。
(ルイーズに見られているみたいで、ちゃんと仕事をしねぇといけない気になる)
先日、彼女が悲しむぐらいなら、いっそバレてもいいと思っていたが――やはりまだ、ためらいがあった。
「ほら、そろそろ馬車が着くぞ。着替えて宿に戻ろう」
そうして、妻のドレスを新しいものに着替えさせる。
馬車を降りる間際に、御者に頼んでいたものを受け取る。
そうして、彼女に手渡した。
「ルイーズ、お前にこれを」
大輪の紅い薔薇だ。
「ギル……! これも貴方が準備してくれていたの?」
「ああ、俺の妻になってくれた礼だよ」
「嬉しいわ、ありがとう……」
ルイーズの声が弾むと、ギルフォードの胸も高鳴った。
薔薇の花束に顔を埋める彼女を抱きかかえ、馬車を後にする。
(よし、今度も成功だ……! 旅行中も成功し続けてみせる……!)
甘い香りが漂う中、ギルフォードはルイーズに告げた。
「いつまでも愛している……お前は、俺の最愛の女だよ」
自身の欲望を満たすことと、彼女の幸福を天秤にかけながら――。
いつでもスマートなふりをしながら――。
新婚旅行は惜しみない努力の結果、最高の成果を得た。
これから先もずっと、ギルフォードはルイーズを愛し続け、そうしてまた、愛を請い続けるのだった。
※ここまでお読みいただきありがとうございました(^^)
ムーンライトに昨晩思いついた二人のSSを投稿しています。
ご感想いただいたので、春先になるかもしれませんが、また後日談を書けたらと思っています。
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