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ハネムーン後の物語「隠し子騒動?」
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しおりを挟む定時にギルフォードが店先に迎えに来ていなかったため、一人で屋敷に戻ることになった。
一人で先にお風呂に入って湯船から上がると、清潔で上質な素材の寝間着に着替えた。その後、寝室に置いてある鏡台の前で寝る前の支度をおこなっていた。
使用人たちも寝静まっており、静かな夜を過ごしていたところ、屋敷の一階で鍵がガチャリと開く音が聞こえる。
ショールを羽織ると、慌てて部屋の外に飛び出した。
「ギル、おかえりなさい」
「ただいま、ルイーズ、まだ起きてたのか?」
「ええ、そうなの」
夫のギルフォードが階段を優雅な足取りで登ってくると、心が弾んだ。
被っていたハットを脱ぐと、さらりと流麗な金の髪が零れてくる。
「あまり夜更かしはするなよ、菓子工房は朝が早いんだから」
「明日は休みだから、大丈夫」
ふと、夕方の出来事が頭を過る。
ギルフォードに肩を寄せられ、寝室へと戻ることになったが、やけに気持ちが落ち着かなかった。
「いったん戻ってきたが、風呂に入ってこようと思う」
ギルフォードがラウンジスーツを脱いで椅子にかけた後、真っ赤なタイに手をかけてしゅるりと解いた。そうして、エメラルドグリーンのカフスボタンに手をかける。
「どうした、ルイーズ、表情が冴えないな」
「え?」
どうやら暗い表情を浮かべてしまっていたらしい。
「いえ、なんでもないわ」
思わず、そっぽを向いてしまう。
ギルフォード本人の口から、他に女性がいた類の話は聞いたことがない。
そもそも誠実な類の人物なので、隠し子ができるようなことにはならないと思う。
だけど……
誠実なのは頭では分かっているのだが、どうしても自分の性格的な問題なのか、一つのことが気になり始めると、ずっとそこに思考が囚われてしまうのだ。
(違うとは思っているのよ。私が気にしすぎなだけで……ギル本人には、おかしなことを気にしていると思われそうで、聞きづらいわ……)
カフスボタンを机の上に置いたギルフォードが振り向くと、ベッドのそばで立ち尽くしていた私の方へとゆっくりと歩んでくる。
「俺に隠し事はやめておけ」
「え?」
彼の長い指が私の顎を掴んで上向かせる。
真摯なサファイアブルーの瞳と視線が合った。
「俺は、お前のことなら、どんなささいな変化でも見逃さない自信がある」
耳障りの良い低い声が耳に届いてドクドクと心臓が跳ねる。
トクントクンと心拍数が跳ね上がっていく。
「ギル……」
熱を孕んだ瞳で見つめられると、このまま彼に身を委ねてしまいたい気持ちになった。
「さあ、何に悩んでいるのか、白状してみろ」
私はごくりと唾を飲み込んだ。
ありもしないことで悩んでいるかもしれないというのに、ギルフォードの問いかけが優しくて仕方がなくて、ちゃんと誠意を自分も見せた方が良い気がしてくる。
覚悟を決めるしかない。拳をぎゅっと握って、ギルフォードのことを見据えた。
「ねえ、ギル……」
「どうした?」
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