【R18】チョコに釣られるほど甘くはありません!!

おうぎまちこ(あきたこまち)

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 アルベルト様と約束通り、休日に外出することになった。

 宿舎で暮らす私のところに現れた彼は、紳士のように素敵なインバネスコートを身にまとっていて、とても大人な男性に見えてしまう。

(私服姿にドキドキしてしまうなんて、ダメよメアリー、正気になるのよ!)

 対して私は没落寸前の貴族の娘である。母が若い頃に父と出かけた時に着用していたという、地味目のワンピースしか持ち合わせていなかった。
 
「私服も可愛いね」

 さらっと甘い言葉を掛けてくるアルベルト様に、私の心臓がドキンと跳ねる。

(偽の恋人だから褒めてくださるのよ……! 休日だからって、ご令嬢たちが、どこから見ているかは分からないわけだし……! もしくはアルベルト様に致命的にセンスがないの!)

「さあ、一緒に歩こうか、メアリー」

 彼はそう言うと、私の手を引いて歩きはじめた。

(この間と言い、最近は手を繋ぐのが当然みたいになってしまっている……)

 偽の恋人どうしだと分かっているのに、どうしてもドキドキしてしまう私がいる。

(偽の恋人、偽の恋人……)

 聖書を繰り返し読むように、心の中で、その文言を何度も唱えた。
 そうして宿舎のある敷地内を抜けて、私たち二人は街へと繰り出したのだった。


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