【R18】愛するあなたのためならば、悪女にだってなってみせます!

おうぎまちこ(あきたこまち)

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 とある午後、彼が私の元を訪れていた。
 一緒に紅茶を嗜んでいる。

「マリー嬢。どうかな? 俺の暗殺計画は?」

「ふふふ、この紅茶も、計画の一端なんですよ」

「へえ? どんな?」

「陛下の好みの砂糖の量にしました」

「……それが?」

 呆れたような様子の彼に対して、私は得意げに告げた。

「陛下が私の紅茶の味から離れられなくなった後に、えいっと短刀で一刺しします!」

「ええっ? 何? それ、作戦なの?」

「もちろんです!」

 すると、ウルフ陛下が爆笑しはじめる。

「それはちょっと面白いな! さすが悪女だ、楽しみにしているよ」

「笑っていられるのも、あと少しですよ! ジュリーお姉様のためなら、私は身体を張って頑張れるのです!」

「確かに身体を張ってはいるかな、毎晩ね」

「そうですよ! ちゃんと陛下との夜伽を勤めていますから!」

 頬を膨らませて抗議してしまった。
 作戦を変更した方が良いかもしれない。
 ひとしきり、ひーひー笑って涙を浮かべる彼が、私に問いかけてきた。

「確かにそうだな、毎日潤っているよ。ああ、面白いな。そういえば、マリー嬢は、なんでそんなにジュリーお姉様が好きなんだ?」

「それを聞いてくださいますか!」

「うわぁ、すごい勢いで食いついてきた」

 私はうっとりとしながら告げる。

「あれは、まだ私が小さい頃のことです……陛下ならご存じでしょうし、隠してもしょうがないから言いますけれど、私の父であるアトス伯爵が汚職事件に巻き込まれました」

「ああ、そうだった」

 父である伯爵が直接引き起こしたわけではない。
 けれども、経理の管理者だったこともあり、罪に問われることになったのだ。

「その時、かばってくださったのが宰相様でした。陛下は宰相様のことが嫌いでしょうけれど、私としては恩人なのです」

 陛下の表情が一瞬翳ったように見えたが、すぐに元に戻った。

「ちょうどその頃、私は宰相様のお家に預けられて、ジュリーお姉様と一緒に過ごすことになったのです」

 彼は黙って聞いている。

「他の貴族や領民たちから、父だけでなく子どもだった私も責められていた頃でした。私は小さくてよくわからなくて、泣いて暮らしている中、お姉様はめげずに話しかけてくれました。陛下に詳細をお話することは出来ませんが、お姉様も色々あって……従兄弟だから知っていらっしゃるかもしれませんが――」

「ああ、ジュリーの母親はヒステリックだったからなぁ……周囲には巧妙に隠していたけれど」

「ええ。傷の舐め合いのようなものかもしれませんが――それでも、自分が苦しくても他人に優しく出来るジュリーお姉様のように素敵な女性と仲良くありたいと私は思ったのです! あとは……もう一つだけエピソードがあります」

「どんな?」
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