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本編
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しおりを挟む次に目覚めたら、朝だった。
雀の鳴き声がちゅんちゅん聴こえてくる。
痛いのかどうか分からないまま初夜は過ぎ去った。
(痛いような痛くないような? まさか側妃の仕事がこんなに眠れないものだったなんて……)
私の隣で眠る陛下も起きて欠伸をしている。
そっと彼の大きな手が私の金の髪を撫でてきた。
「おはよう」
「……ふぁあい」
まだちょっとだけ眠くて、妙な返事をしてしまう。
「これって一回で終わりですか?」
「いや、毎日続くけど」
「毎日……まあ、良いか……」
「俺に抱かれたら悦びそうな女性たちが多い中、ぼんやりした表情で気のない返事をするのも君ぐらいのもんだよ」
すると、陛下が意地の悪い言い方をはじめた。
「そういえばさ、ジュリーを修道院に送る件だけど」
「そんな! 絶対にダメです! ダメ! 絶対ダメ!」
大好きなお姉様の修道院送りの話が出てきて、思わずガバリと身体を起こしてしまった。
寝転がるウルフ陛下を見下ろす。
「刺し違えてでも止めるんだったかな? 元気がないと俺を殺せないんじゃないか? 俺の尻尾を掴んで宰相にも報告出来ないぞ。俺のことをどうやって暗殺に来てくれるのか、楽しみにしてるぜ」
「ええ! ぜひ、楽しみにしていてくださいね!」
「うん、お馬鹿さんで可愛いね」
裸のまま気分が高揚している私の姿を愉しそうに陛下が見ていたのだった。
※※※
初夜の翌日以降、昼間、陛下がおかしなことをしていないか見張る毎日が続いた。
とは言っても、彼が後宮にいる間だけなので、見張りになっているのかは分からない。
(でも他の人たちに聞いても、陛下は執務ばかりだという……)
後宮の庭の片隅から王城へ続く道がちらりと見えるのだが、女性を侍らせている姿はなかった。
女性達といつも遊び暮らしているという噂はなんだったのだろうか。
おかしなところを見つけて糾弾しようと思ったのに、あまりに隙がなかった。
とはいえ後宮からは見えないだけで、王城の中では爛れた日々を送っているかもしれないから油断ならない。
一応、約束通りジュリーお姉様を修道院送りにする様子はない。
ちなみに夜はと言えば、確かに痛くない日々が続いた。
「ああ、マリー嬢といると癒やされるなぁ。抱き心地が良い。ふわふわの金の髪がうさぎみたいだね」
「そうでしょうか?」
裸のままで抱きしめ合っていると、なんだか自分も幸せな心地になる。
(ウルフ陛下がジュリーお姉様を変な扱いにしないかどうか見張りに来たはずなのに……私ったらっ……! これも陛下が私を騙そうとしているのかもしれないのに……!)
だけど――私が接する限り、陛下は言動は軽いが、非の打ちどころのない誠実な人物だったのだ。
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