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第6章 仕組まれた罠、互いの気持ち
第24話 叶わない恋だとしても※※
ティナの華奢な身体は、美青年姿のシグリードによってベッドまで運ばれる。
彼の腕の中、ティナは想いを口にする。
「シグリード様が愛していらっしゃるのは、クリスティナ姫だって分かっています。それでも、私はシグリード様のことが……」
「ティナ……勘違いしないで欲しいことがある」
――勘違い。
ティナの心臓はズキンと痛んだ。
無理に笑顔を作る。
「そうですよね……別に本当の夫婦でもなんでもないのに……差し出がましいことを」
シグリードがまっすぐにティナを見つめた。
「誓約がある。俺の口から色々告げることは出来ねえ。だが、確実に言えるのは、お前はあいつの代わりなんかじゃねえってことだ」
「代わりじゃないのも分かっています。シグリード様に愛されていたぐらいだから、きっとすごく素敵な人で、私なんか足元にも及ばない存在だったって……」
「そうじゃねえ……」
「あ……」
ティナはまたもやしゅんとなってしまった。
「責めてるつもりじゃねえんだ。ああ、なんだ……言い方が難しいな」
そうして、彼が柔らかく告げる。
「俺はさ、お前が生まれた時から……そばにはいなかったけれど……ずっとお前のことを知っていたんだ」
「え……?」
相手の思わぬ発言にティナは驚きに目を見張る。
「私のことをずっと……?」
「そうだ。俺はずっと……お前が生まれてくるのを待ってた」
ティナの心臓がドクンドクンと高鳴っていく。
「あ……の……シグリード様……」
彼の腕の中で彼女は思い切って告げた。
(怖いけれど……聞いてみなきゃダメな気がする……)
「経典にも書いてありました。魂は流転する……と。それは……例えば、壊れた魂でも再生して……そうして巡ることはあるのでしょうか?」
「本来ならあり得ねえ……」
「――あ」
やっぱりそうだ。
自分がクリスティナ姫の生まれ変わりだとか――そんな大層なことはありえなくて……。
「だが――」
シグリードが少しだけ寂しそうに微笑んだ。
「――天上の神っていうのは、気まぐれなんだろうな……絶対にあり得ないことなんて、この世にはないんだ」
彼は続ける。
「まったく同質の人間じゃねえことも分かってるつもりだ。だが、俺もなかなか割り切れねえ。どこかで期待しちまってる自分がいる……」
「あ……」
ティナの胸がざわついた。
少しだけ泣きそうな彼の頬に、彼女はそっと指を添わせた。
ちょっとだけ声が震える。
「シグリード様……自分でもちょっとおかしなことを言ってる自覚はあるのですが……」
「……ん?」
「どうしてだか、ずっと貴方のことを知っている気がするし……貴方といるのが当たり前なような、そんな気がします……夢の中の騎士様とは髪の色も何もかも違うのに……」
すると、彼が彼女に頬をすり寄せてくる。
「――そうか……」
彼はそれ以上は何も言わなかった。
それが全ての答えだったような気がする。
そうして、ベッドへと到着する。
彼の魔力によるものだろうか――?
古い山小屋のベッドだというのに、かび臭いことはない。
それどころか、洗い立ての香りがする。
雪のような純白のリネンの上に、彼女の身体は横たえられた。
裸の彼女に対して、跨ったシグリードが、一度だけ口づけを落とす。
「ティナ……」
「シグリード様……」
彼に見つめられると、先ほどまで全身に口づけられていたことを思い出す。
元々火照っていた身体は、再び熱を呼び起こした。
熱情の孕む蒼い瞳と潤んだ紫水晶の瞳の視線同士が絡む。
「あ……」
ローズゴールドの髪を撫でられ、一度口づけられた。
今にでも愛しい相手と繋がりたいという想いが胸の内から湧き上がってくる。
蒼い瞳が彼女をまっすぐ射抜く。
「もう一言だけ伝えたいことがある」
「はい……」
「――全く同じ人間はこの世には存在しねえ。そして、お前はあいつの代わりなんかじゃない。今この瞬間、確かに俺の胸の内にいるのは――お前だけだ、ティナ」
そうして、二人は身体を絡め合った。
「シグリード様……んんっ……」
「少しだけ、脚を開いてくれるか?」
「はい……」
彼の細くて長い指が、彼女の蜜口の中へとぬるりと侵入する。かきまわすと、ティナは堪らず声を上げた。
「ふあっ……あっ……」
もう片方の彼の手が、彼女の片方の乳房をこねる。
指で先端を弄られ、ティナの全身に甘い痺れが駆け抜けた。
「ふあっ、あんっ、あっ……ああっ……!」
「気持ちよさそうだな……指に吸い付いてきやがる……」
「……気持ちが良いです……シグリード様……」
再び蜜口がひくつき、とろとろと蜜を溢れさせる。
指に弄られ、くちゅりと淫らな水音が立った。
「さっき、俺が舌でならしておいたが――こんなだけ潤ってりゃあ良いだろう……」
そうして指を引き抜かれた。
蜜がとろとろと零れる。
そうして――。
シグリードが下衣をくつろげた。
荒ぶる巨塊がゆっくりと取り出される。
ほんの短い時間だったが、緊張するティナにはものすごく長い長い時間に思えた。
「シグリード様……」
彼女の心臓が、ドクンドクンと跳ねてしょうがない。
胸の魔核も同じく明滅しはじめた。
彼の顔が彼女の顔に近付いてくる。
彼の巨大な肉棒の先端が、彼女の蜜口に宛がわれた。
ティナの心臓の音がシグリードにも聴こえそうなぐらい大きくなっていく。
「力抜いておけよ……挿れるぞ……」
「はい……」
だが、どうしても震えてしまう。
ガタガタ震える彼女の身体を一度彼がふわりと抱き寄せた。
「ティナ、約束しただろう……?」
「シグリード様?」
彼が淡く微笑んだ。
「俺の身勝手のせいで、お前の心を守れずに、傷つけちまったみてえだが……大事にすると約束する――俺にお前の全てを預けてくれ……」
「はい……!」
先ほどと比べて震えは落ち着いてきている。
彼の顔がまた少しだけ離れた。
彼の広い背に彼女はそっと手を回す。
「挿れるぞ……」
彼女の狭穴を熱杭が穿った。
「あっ……ああっ……――!」
その熱はどんどん彼女の奥深くに潜りこんでくる。
あまりの熱と質量に、身体が壊れてしまいそうな感覚に陥る。
彼女は目蓋をきつく閉じた。
「あっ……」
「大丈夫、もうすぐだ……」
彼女の瞳にうっすらと浮かんだ涙に、彼が唇を添わせた。
「――っ……」
「ティナ、ほら、全部入ったぞ……」
結合部がくちゅりと鳴った。
身体の中心に彼の熱を感じる。
シグリードが淡く微笑んだ。
白銀の髪に隠れた額に汗が滲んでいるのが分かる。
彼女の身体に負担がかからないように、彼が気遣ってくれたのだろう。
(――もう命はないんだ。もう死ぬんだと、ずっと思ってた。だけど……)
物語の中のように、誰かが自分を助けに来てくれて……。
その相手に恋をして……。
だけど、相手の心の中には誰か別の女性がいて……。
それに気づいて苦しくなって……。
なのに、どうしても諦めきれずに、想いが胸をくすぶって……。
相手に想いを打ち明けられて……。
こんなにも慈しんでもらえて……。
今この瞬間だけだったとしても良い。
愛する人と繋がれるのが、相手を感じることが出来るのが、こんなにも幸福なことだったなんて……。
「命を……諦めないで良かった……知ることが出来て本当に良かった……」
ティナの紫水晶の瞳から、ひとしずくの涙が零れ落ちた。
「俺の心臓……めちゃめちゃ綺麗に紅く染まってるな……」
淡く微笑む美青年が、彼女の心臓の上の魔核を撫でる。
そうして、彼の顔が近づき、彼女の唇を塞いだ。
ふっと、真っ赤だった魔核が色を失う。
「あ……もしかして……」
まだ彼と繋がっていたいのに――。
彼女の身体に根付いていた魔核――竜の心臓を持ち主に戻さないといけないようだ。
だけど――。
(大丈夫、私にはこの日の記憶があれば、これから先も生きていける……)
彼女が満ち足りた表情を浮かべていると――。
「なあ、ティナ……」
いつもは自信に満ちた彼が、少しだけ自信がなさそうに口を開いた。
「これは、俺の我儘だが――」
ティナは彼の言葉を待った。
胸がトクトクとなる。
「これまで、お前は契約上の妻だったが……だが、俺の命のある限り、どうか俺のそばにいてくれないか?」
彼の身体は氷のように冷たい身体なのに、視の内に宿る熱情は――まるで炎のように熱い。
彼女の心は、ほろほろと蕩けていくようだ。
「返事は……?」
なかなか声が出ない。
だけど、彼女は幸せな涙を零して返答した。
「シグリード様、もちろんです……!」
「そうか、良かったよ。なんか二千年ぶりぐらいに緊張しちまったな……」
彼が嬉しそうに微笑んだ。
「改めて、お前に愛を誓い直す……愛している……俺の姫……ティナ……」
繋がり合ったままの二人はゆっくりと口づけあった。
唇から互いの想いが伝わり合う。
――一度別たれた二人の魂は、離れがたい絆で、強く強く結ばれ合ったのだった。
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