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17 アヤトの記憶2
しおりを挟むだが、そんなある日のこと。
たまたま父親に呼び出されて、アヤトが総合病院に顔を出した時のことだ。
その日は、進路についてとやかく言われ、うんざりしていた。
胸の内では父と同じ医者を再度目指したい、そんな風に思っていたのだが、正直にそのことを伝えるのはなんだか癪だった。
――父と同じだから医者になりたいんじゃない。
アヤトは実父のことを嫌悪していた。
医師が海外留学に向かうことは稀ではない。新たな研究手法を学ぶため、アメリカに留学した際に、そこで研究助手を勤めていたロシアンミックスの母と出会った。
美しいが研究に没頭すると周りが見えなくなる母。
そんな彼女に心惹かれた父は、熱心に口説き続けた。お互い故郷とは違う土地に住んでいるという類似点があり、急速に仲を縮めていった。実験室という狭い環境も手伝って絆された母は、そのまま父と懇意になり、アヤトのことを妊娠した。
1年の留学を経て父は帰国。
彼を頼って、アヤトの母は日本に来たのだが――。
(父は母を裏切った)
結局、父は今の義母との婚姻を望んだ。義母の父親は、父の勤務する医局の当時の教授だったのだ。今はもう亡くなってしまっているが、義母に見初められた父は、円満な医師生活を望んだのだ。
元々情緒不安定だった母は、見知らぬ土地という環境に耐えきれなかったことや元々の素因が原因で、心を病んだ。痛んだ彼女はそれ以降、精神科への入退院を繰り返すようになったのだ。
到底子を育てられる状態ではなく、帰化させようとしたが、父に思うところがあったのが、アヤトのことをひきとることにしたのだ。
その後、自身の父親が経営していた病院の跡を引き継いだ父は、母を精神科へと入院させるようになった。
父としては監視の意味もあるのか――はたまた義母の不倫に気づいたために追い込んでいるのか、それとも義母の命令なのか。
直接育てられたことなんてないに等しい。
だけれども、自分と同じ血を引く、日本では異質な彼女の存在はアヤトにとって支えだった。
いつしか、異様な環境に実母が置かれていることに、アヤトは耐えられなくなっていた。
幼子心に母を病院という狭い場所から救い出したかったのかもしれない。
だが、成長するにつれ、両親への嫌悪が勝り――そうして、医師になる夢まで捨てかけていたのだ。
(あの家族に関わりたくない――)
嫌な気持ちを引きずりながら、時間外窓口から外に出ようとした時、レイナと遭遇したのだった。
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