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高校三年の夏休みのことだ。
島に昔からいる同級生の皆がバラバラになる前に、何か思い出でも作ろうという話になって――なぜか男子の提案で、肝試しをすることになったのだ。
「肝試しにしようぜ!」
「……男子、アホすぎる」
当時、高校生にもなって何をやっているんだと女性陣がブーイングの声を上げたが、結果的にやることになった。
暗い森の奥深く。お調子者の男の子がお墓の入り口に置いて来たという霊験あらたかな札。それを一番最初に取りにいった組が勝利だという。
男女二人一組になることになった。
くじ引きをしたら、たまたまリュウちゃんと一緒になったのだ。
「ミサがペアなのは良かった」
「私もリュウちゃんなら安心だな」
妙に静かだし、暗いからか、パキンと枝が折れる音に怯えてしまう。
懐中電灯の明かりでポヤンと光る土の色さえも不気味に感じた。
「きゃっ……!」
「意外と怖がりなんだな、ミサは」
気づけば、二人の距離は近くなっていた。
墓が近づき、線香とろうそく溶ける香りが鼻腔をくすぐってくる。
だが、もう先に札を確保していた人々がいたのだろう。墓の入り口に、札はなかった。
「ちっ、負けたな……」
リュウセイは負けず嫌いなところがある。
「まあまあ、今回は仕方ないよ」
「ミサがそういうなら……帰るか」
小さい頃に比べて大人に近づいたリュウセイに手を差し伸べられた。
(あ……)
夏だからだろうか、ミサの手をとるリュウセイの手は少し汗ばんでいた。
集合場所に帰って、結果発表があって、皆で写真をとって解散することになった。
リュウセイとミサの家は、同じ方向にある。肝試しの時みたいに、また一緒に夜道を歩いて帰った。
あとちょっとでミサの家だという頃。
彼女の肩に彼が手を置いた。
「ミサ、俺は高校を卒業したら、東京に行こうと思ってる」
「……演劇をしたいんだよね?」
「ああ」
「私はとりあえず県内の大学に出て、何かを演出する仕事に就けたらなって」
「――その、ミサ、お前に言いたいことがあって」
子どもの頃からずっと一緒の彼がいなくなるのが、なぜだか妙に寂しい。
いつもは明るいミサだったが、少ししんみりしてしまう。涙がじわりと浮かんできた。
「ごめんね、しんみりしちゃって」
寂しげに笑ったミサに――。
(あ……)
――リュウセイが口づけたのだった。
カチンと歯がぶつかる。
しまったという顔をリュウセイが浮かべた瞬間――。
「ちょうど良かった――お帰りなさい、ミサ! リュウちゃん、送ってくれてありがとうね!」
夜だというのに、テンションの高いミサの母が、迎えに現れたのだった。
近所に家が少ないゆえに声が大きいのは困りものだ。
リュウセイもミサも気恥ずかしくなって、ぱっと離れた。
結局、なんとなく彼の話したい内容を聞けないうちに新学期を迎えて……県外の芸能学校に渡航するようになったリュウセイの気持ちを聞くタイミングを逃したまま、卒業を迎えてしまったのだった。
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