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しおりを挟むそうして、陽が沈み切った。
拝殿の前、狛犬の前に二人は控える。
彼等よりも手前に設置された木のステージでの出し物もいよいよ終盤だ。
おこなわれているのは、のど自慢。
「ミサが商工会長のおじさんに、せっかくだからどうだって話を持ち掛けた、歌の対決、盛り上がってるみたいだな?」
「うん、良かった。小さい子も、お年寄りの方も楽しそうね」
特に順序を競ったりするものにはしなかった。
参加してもらった島内の人々には県内の特産品を、島以外の来訪者には島の特産品を配るようになっていた。
「ちゃんと今までミサが積み上げてきたものは無駄じゃなかったってことだな」
ぽんぽんと頭を叩かれたミサの頬が火照る。
「そうかな? ありがとう」
あとはリュウセイの出番だ。
夏の定番の歌を歌ってもらうことになっている。
「リュウちゃんが失敗するなんてことはないだろうけれど……」
各種色んな人々と打ち合わせをした。今さっきも色々と綿密に計画を見直したのだが――。
ファンが殺到して、場が大変なことにはならないだろうか。
マイクも調整したけれど、音が飛んだりしないだろうか。照明は――?
「祭りに合わせて、島の警察官も警備も多く配備されているし、お前だって色々考えてたんだから、問題ないって」
色々と不安はつきないミサだが、リュウセイが言うなら大丈夫な気がするから不思議だ。
そうして彼の出番になった。
イントロが流れはじめる。
いよいよだ。
「じゃあ、行ってくるよ」
そうして出発の際に、ミサに耳打ちをした。
「成功したら、俺に褒美な」
彼女の心臓がドキンと跳ねる。
爽やかな笑みを浮かべ、浴衣姿の彼はステージへと駆け上っていった。
そうして、曲のはじめと共に、彼が歌いはじめる。
最初はなんだなんだとなっていた客たちも、次第に歌い手の正体が分かってきてざわつきはじめた。
騒ぎの中でも、彼のよく通る声が境内に響く。
(リュウちゃんは、やっぱり何をしてもカッコイイ)
舞台の脇からミサはリュウセイの姿を見た。
田舎の小さな舞台でも、彼が立つととびっきり素敵な大舞台に見えるのはなぜだろうか。
活気づく島の皆を見ていると、結婚式場で仕事に精を出していた頃の記憶が蘇ってきて、胸がじんわり熱くなってくる。
歌い終わった彼が、島の皆に礼を告げた。
熱気が冷めやらぬ中、彼の声がマイク越しに響く。
「聴いてくれてありがとう。この場を提供してくれた、俺の幼馴染にも、どうか拍手を」
先ほど彼に言われた台詞。
『ちゃんと今までミサが積み上げてきたものは無駄じゃなかったってことだな』
もちろん今の盛り上がりはリュウセイの力あってこそだろう。
けれども――。
(また自分の手で、こんなにも多くの人々に喜んでもらえるなんて)
無事にステージは盛況に終わった。
「あとは皆、大目玉の花火をぜひ楽しんでくれ」
だけど、島の皆がリュウセイの正体に気づいてしまった、ここからが問題だ。
(最後まで気を抜いちゃダメ)
舞台に詰めかけようとする人々を、ひょいひょいよかいくぐりながら、リュウセイがミサに駆け寄ってくる。
「ミサ!」
彼の大きな手が、彼女の小さな手を掴んだ。
夏まつりの企画の人や警備の人々との打合せ通り、我々は確保された道を走って逃げることにしたのだ。
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