【R18】使用人令嬢は堅物騎士団長に不器用に愛される 〜王太子殿下が義妹じゃなくて私を専属メイドとして契約するって本気ですか!?〜

おうぎまちこ(あきたこまち)

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第3章 惹かれ合う二人

第9話 奇妙な同居のはじまり➁

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 イリスはひとまずレードヴァルドの言うことを聞くことにする。

「提案だが、君が嫌でなければ、俺と同じ部屋で過ごしてもらって構わない」

「え?」

 イリスは驚きの声を上げる。

「ですが……」

 先日一緒に夜を過ごしたが、身体の関係さえ結んでいなければ問題ないとは告げた。けれども、あれは一晩だったからだ。

「さすがに何日も一緒になるのは……」

 イリスは頬を赤くしながら俯いた。
 結婚する機会はないとは思っているが、婚前の婦女子にとっては、いよいよ不名誉な状態になってしまったように思う。

(それも込みで旦那様の私への嫌がらせなのかもしれないけれど……)

 ラシーヌ侯爵からの「一生、屋敷に仕えておけ」という暗黙の宣告のようにも感じた。
 レードヴァルドがイリスのことを真っすぐに見据える。

「ラシーヌ侯爵の思惑通りにはならないつもりだ。君を娼婦扱いするつもりは毛頭ない。いつも部屋に来てくれる延長だと思ってもらえれば良い」

 これまでのレードヴァルドは、いつだって紳士的だった。
 一晩過ごした際には、実際に何も起きていない。
 それに……

(この人は嘘を吐くような人ではないわ)

 イリスは深呼吸をすると、きっぱりと告げた。

「承知しました。でしたら、レードヴァルド様の部屋にお世話にならせてくださいませ」

 レードヴァルドは嘆息すると同時に少しだけ表情を和らげる。

「それは良かった。俺にとっては褒美のような、ある意味拷問のような日々が続きそうではあるがな」

 イリスはハッとなる。
 やはりレードヴァルドにとっては、懇意ではない女性と同室で過ごすなど、不本意極まりないのかもしれない。

「拷問……!? やはり私がラシーヌ侯爵に抗議をしてまいります」

「いいや、たとえ話で本当の拷問だとは思っていないから大丈夫だよ、イリス殿」

 だがしかし、彼本人が彼女をすぐに宥めてくれた。

「では、客室へと向かおうか」

「はい」

 こうして、イリスはレードヴァルドと同じ部屋に滞在することになったのだった。



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