【R18】使用人令嬢は堅物騎士団長に不器用に愛される 〜王太子殿下が義妹じゃなくて私を専属メイドとして契約するって本気ですか!？〜

第3章 惹かれ合う二人

第10話 一緒に過ごしてみて④

「レードヴァルド様、ごめんなさい」

　イリスの顔が真っ青になっていく。

「イリスったら、本当に何も出来ないんだから」

　パンセが義姉の姿を嘲った後、甘ったるい声を出しながらレードヴァルドに告げる。

「イリスはいつもあんな風に私たちに迷惑をかけるのです。レードヴァルド様、さあ、イリスを叱ってくださいませ」

　すると、レードヴァルド様が低い声のまま続けた。

「そうだな」

　イリスは彼の反応が気になってしまう。

（もしかしてお怒りになられてしまったの？）

　パンセはレードヴァルドに向かって猫なで声を出す。

「ねえ、レードヴァルド様ったら、何か仰ってくださいませ」

　すると……

「ラシーヌ侯爵令嬢、離してもらおうか」

　パンセに対してレードヴァルドは蔑むような視線を向けていた。
　きょとんとしているパンセに対して、ラシーヌ侯爵の顔がみるみる青褪めていく。
　レードヴァルドはパンセの手を振り払うとラシーヌ侯爵に向かって告げる。

「貴殿のご令嬢、パンセ殿だったか。あからさまにイリス殿が転ぶのを狙っての所業だった。ラシーヌご夫妻はどうして無礼を働いた娘を叱らない？」

　ラシーヌ侯爵の顔色は真っ青を通り越して真っ白になってしまっていた。
　レードヴァルドは椅子から立ち上がると、イリスが割った皿の破片を拾い始める。

「待ってください、レードヴァルド様、そのようなことはイリスがしますから」

　ラシーヌ侯爵が悲鳴じみた声を上げた。
　だが、それに対してもレードヴァルドが低い声で制した。

「ラシーヌ侯爵、俺がしたくて手伝っているんだ」

　イリスの胸がトクンと跳ねる。

（レードヴァルド様……）

　レードヴァルドの優しさにイリスの胸が暖かくなっていく。
　そうして、食事や皿の掃除が終わるとレードヴァルドが立ち上がりざま、イリスの腕を掴んで立ち上がらせる。

「食事はイリス殿とする。私の部下たちにも部屋の掃除を手伝ってもらうよう手配しよう。それでは」

　レードヴァルドとイリスはその場を退散したのだった。