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 夜になり、私は窓辺で今日の昼のことを考えていた。

(陛下はやっぱり想い人の女性のことが好きなの……? だから、今晩も私に会いに来ない……?)

 その時――。

「あ……」

 眼下で白いマントが翻る――。

「陛下……」

 城の中にある丘に向かって、彼が一人で昇っていく姿が見える。

「もしかして、好きだったご令嬢に会いに行っている……?」

 そうだとしたら、邪魔すべきではないかもしれない。
 だけど――。

「本当に彼が浮気をしているのかどうか――百聞は一見にしかずよ……」

 くよくよし続けるのは性に合わない。
 最近はさすがに年を重ねて落ち着いてはいたけれど、小さい頃はお転婆令嬢として評判だった自分のことを思い出す。
 ここは二階であり、私は人間で体力がないと思われているから、さすがにバルコニーの下には見張りはいない。

「行くわ……」

 私は思いきってバルコニーの下へと飛び降りたのだった。


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