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しおりを挟む「やはり……貴方があの時、攫われそうになった私を助けてくれた……命の恩人の狼獣人さんだったのですね……」
すると、鋭くなった瞳を陛下が見開いた。
「我が妃は……覚えておいでだったのか?」
小さい頃、幼い妹のワガママに付き合わされた結果、私は人さらいに攫われかけた事件がある。
叱られるのを恐れた妹が大人に何も言わなかったため、発見が遅れてしまいかけたのだけれど、人さらいに手籠めにされる寸前、いつも一緒に遊んでいた半獣人の男の子が助けてくれたのだった。
あの少年が成長していたら、今目の前にいる陛下のような姿になっていただろう。
「はい、もちろんです。小さい頃に何度か遊んだ貴方を忘れるはずがありません……それに、あの日以来、貴方はずっと私の英雄だったんです」
「そう……だったのか……」
すると、陛下も淡く微笑んだ。
「俺も――半端な獣人だったが――身分を隠して一緒に遊んだ俺の半端な姿を見ても、貴女だけは優しかった。貴女はあの頃と変わっていなかったのだな……」
そういうと、半獣人になった夫が私の身体をひしと抱きしめてきた。
なんだか暖かいものが胸の中に流れていくようだ。
そうして抱きしめ返していると、ふと彼が私の首筋を甘く噛んできた。
「きゃっ……」
「すまない、妃よ――どうしても、この姿になると――人間の頃のように理性が効きづらく……このままだとひどく乱暴に貴女を抱いてしまいかねない――だから、どうか俺から離れ――」
「いいえ、私は離れません」
「妃よ――」
ワガママが過ぎると思われただろうか――。
「――だから、陛下、どうか、そのお姿で抱いてください……あ……」
「俺の理性を崩壊させた貴女が悪い」
そういうと、そのまま木の幹へと身体を絡ませ会いながら雪崩れ込む。
「あっ……陛下……」
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