9 / 16
9
しおりを挟む「陛下?」
人間界の絵本なんかでも描かれる、顔は狼、上半身は筋肉に体毛が生えていて、下半身は人間の姿をした、いわゆる狼獣人が立っていたのだった。
より獣らしさが増したものの、動きは優雅で平素の陛下とよく似ていて、紛れもなく本人だと認識させてくる。
「すまない、貴女にこの醜悪な姿を見せるつもりはなかったのに――」
「――醜悪……?」
そんなことはない。
これまで見た獣人達の中でも一際際立つ美しさを放っている。
「そんなことはありません――とっても綺麗で格好いいです」
そんな風に告げると、陛下はキョトンとしていた。
「この姿が綺麗で格好いい? てっきり貴方が恐ろしがるのだと思って……」
「だから、なかなか会いにきてくださらなかったのですか? 私が嫌だとかそういう理由ではなくて?」
「俺が貴女を嫌う……? 決して、貴方が嫌だとかそんな理由ではない。それどころか、俺は初めて会った時から、ずっと貴女のことを――」
相手がうつむく姿を見て、私の鼓動が高まっていく。
「だが、この姿、清らかな貴女から見れば、酷く恐ろしいものだろう?」
「いいえ、そんなことはありません……だって――」
そうして、私は歓喜に震える胸を押さえながら相手に告げる。
応援ありがとうございます!
1
お気に入りに追加
658
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる