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第4章 結婚後の求婚
第28話 夫は気持ちを自覚する?(中編)1
しおりを挟む新婚旅行でも一緒だった、体格が一際良い騎士と共に馬車に乗って、フィオーレはエスト・グランテ王城を尋ねていた。
「フィオーレ姫、お久しぶりです」
荘厳な城の扉の前で、彼女を待ち構えていたのは、宰相シュタールだった。
彼は、男性にしては少しだけ長い銀色の髪を持ち、宝石のように綺麗な紫色の瞳、中世的な雰囲気を持った、端正な顔立ちの青年である。彼女の夫・デュランダルの親友でもあり従兄弟でもある人物だ。
今日の彼は、白いフロックコートに蒼いクラヴァットを合わせた出で立ちをしている。
騎士と共に馬車から降りるフィオーレに、シュタールは話しかけてきた。
「騎士達から報告を受けております。デュランダルに、姫様自ら印を届けに来たそうですね」
フィオーレはこくりと頷いた。
そうして、ぽわんと考える。
(デュランダル様の妻とは言え、エスト・グランテからすれば、私は人質。城への報告が行き届くのがとても速い……早馬を飛ばしたりしているのかしら?)
シュタールが、フィオーレの動向に気づいていたことに、彼女は感心していた。
彼に先導されながら、城の扉をくぐり、紅いカーペットが敷かれた回廊をフィオーレは進む。彼女の少し後ろに騎士が着いてきていた。
彼女に向かって、シュタールは愉しそうに会話を続ける。
「先日のロウクワット湖近くの村におけるフィオーレ姫の活躍、デュランダルや他の騎士達からうかがいましたよ」
「活躍と言って良いのかは分かりませんが……」
「オルビス・クラシオン王国の王族に関しては、癒しの力を持つことが知らされていますが、周辺国からすれば謎の多い人物たちでもあります。先日の一件を聞いて、なるほど医術に関する知識も『癒し』と言われれば『癒し』だなと感心いたしました」
フィオーレは曖昧に笑う。
「そして――」
そんな彼女に、シュタールはにこやかに続けた。
「村人たちは、金の瞳を持った『竜の聖女』がついに国に現れたと言っているとか――」
「エスト・グランテ王国の伝承の……?」
「ええ、そうです、フィオーレ姫。伝承によると、『竜の聖女』は金の瞳を持っているそうでして。あと――」
今日のシュタールは気になる言い回しばかりするなと、フィオーレは思う。
「――愚王ジョワユース・エスト・グランテではなく――王弟デュランダル・エスト・グランテこそ、真の王ではないかと噂している者もいるそうで――ああ、つい口が滑ってしまいました」
彼の発言を聞いて、フィオーレは黄金の瞳を見開いた。
王城の中、しかも騎士たちが周囲で聞いている恐れがある中で、大胆不敵で不敬な発言である。
(やっぱり、穏やかそうな人だけど怖い人だわ……デュランダル様の親友と言うこともあって、怖いもの知らずなのかもしれないけど――)
シュタールは、彼女の考えを知ってか知らずか、話を続ける。
「今の発言はお忘れください――そうだ、最近デュランダルの評判も良いのですよ。フィオーレ姫と結婚してからは、部下への指導や稽古に熱心に取り組むようになったり、すぐに誰かを怒ったりしなくなったと――まあ、元々仕事は真面目にする性質の男ではありましたがね――」
シュタールのその話を聞いて、フィオーレは嬉しくなる。
(デュランダル様の評価が上がるのは、とても嬉しいことだわ)
その時、突然――。
――シュタールとフィオーレが歩く回廊の先で、女の叫ぶような声が聴こえた。
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