βは蚊帳の外で咽び泣く

深淵歩く猫

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βは地を這う。

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「ちょっと待って!なんでソッチに行くのっ?!」

Ω女性が困惑した声を上げ
洋一目がけて飛んでく男性に手を伸ばしながら固まる

―――ん?待って待って?

自分に向かって飛んでくるαの勢いが落ちない事に
洋一は酔っ払った頭でも流石にコレはマズイと思ったのか
咄嗟にかけていたソファーから飛び降り、床に転がり込む

「いっつ…」

強(したた)か肩を打ったものの
洋一はそのまま床を這いながら後ろを振り向く
するとさっきまで自分が座っていたソファーの場所に
飛んできたαが勢いよくドスンッと着地をすると
低い唸り声を上げながらソファーの上に中腰で立ち
まるで猿が何かを探しているみたいな姿勢で辺りを見回し始める…

―――こっわ…なにあれこっわ…っ!

イケメンがソファーの上に立ち、獣のような姿勢で辺りを見回すその光景は
正に異様の一言…

洋一はホラー映画のようなこの状況にすっかり酔いも冷め
兎に角あのαにだけは見つかったらヤバイと咄嗟に判断し
静かに床を這ってこの場から逃げようと微かに身じろいだ次の瞬間――

「見”ぃつけたぁ~…」
「ひっ、」

ニタァ~…と
正にホラー映画定番の“何かに憑りつかれた人間”の様な笑みを
床を這う洋一を見ながらイケメンαは浮かべると
ソファーから飛び降り、洋一に向かって血走った目をしながら近づいてきた…

―――ひぃっ!怖い怖い怖い怖いっ!!

洋一は半ばパニックになりながら、床を這いつくばって逃げようとする
しかしαはそんな洋一に素早く近づくと、洋一の背中を片足で踏んで
床を這う洋一の動きを止めてきた…

「ぐぇっ、」
「逃がさない…」

カエルの様な呻き声を上げ、床の上でもがく洋一を見下ろしながら
αはそう呟くと
突然洋一の背中に覆い被さり、洋一の項(うなじ)に顔を近づけ
鼻を擦りつけるようにしながらスンスンと項の匂いを嗅ぎ始め――

「ッ!?テメー!洋一に何してやがるっ!!」

それを向かいの席で茫然と眺めていた浩介はその光景を見てハッと我に返り
襲われている洋一を助けようと慌てて駆け出すが
αが上体を起こして口を大きく開けた次の瞬間





ガリッ、
「いっ、」





「ってぇぇぇぇぇえええええぇぇえぇええっっっ!!!!!」


αが洋一の項に勢いよく噛み付き
洋一の大絶叫が店内に木霊(こだま)した…
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