βは蚊帳の外で咽び泣く

深淵歩く猫

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いざ出陣。

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「かみしろ…」

山下の言葉に洋一が読んでいた参考書から顔を上げる

「正式名称“神代インターナショナルホールディングカンパニー”…
 世界でも有数の持ち株会社だ。――て…どうした皆瀬?何か顔色が――」
「!いえ…何でもありません…」
「そうか…?ならいいんだが――」

―――神代なんて苗字…そう珍しいもんでもないし…
   まさか――ね…

洋一がこの間“nymphee”で出会った男性の事を思いだし
何故か少し畏縮する

「神代は鬼生道財閥が幾つか持つの会社の株をかなりの数保有していてな
 コチラとしても無視できん存在なのだが――
 此処の社長が若いのに中々のやり手で…油断できん相手だ…」

命の表情が何時にもまして険しさを増す
そこにスッと影が射し、洋一が不意に窓の外に視線を移すと
洋一達を乗せた車が
キャノピーのせり出した立派なビルのエントランス前に静かに停車した事に気づき
洋一の身体に緊張が走る

「――到着いたしました。」

山下はそう告げるとサイドブレーキを引き、車から降りて
何時もの様に後部座席のドアを開ける

「油断できん相手だが――」

命が車から降り、洋一もそれに続く

「俺が傍についている。だからそう緊張するな。」
「…はい!」

命のその一言に、洋一は先ほどまで感じていた畏縮と緊張が少し解れ

命は洋一の肩を軽くポンと叩くと
洋一と佐伯を引き連れ、ビルの中へと入っていった…
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