βは蚊帳の外で咽び泣く

深淵歩く猫

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楽しい楽しい新生活6

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時刻は午後20時を過ぎ
一時間以上をかけ、あらかた洋一の荷物を整理し終えたところで

トゥルルルルルン♪トゥルルルルルン♪

と、スマホの着信音が静かな部屋に鳴り響き
命が無言で脱いで近くに置いていた上着のポケットからスマホを取り出し
内容を確認する

「…どうやら――夕食の準備が整ったようだな。
 皆瀬、腹が空いているだろう?荷物の整理はとりあえず済んだことだし…
 ちょっと遅いが夕食にしよう。」
「夕食?」
「たった今、専属シェフからのメールが届いた。
 もう既にテーブルに料理を並び終えたとの事だ。行くぞ。」
「せ…専属シェフって…え…え…?」

命はその場に座って混乱している洋一の両手を手に取ると
その場から立ち上らせ
なおも混乱している洋一の手を引きながら部屋を後にした…


2人がダイニングに姿を現すと

「お待ちしておりました。命様。」

白いコックコートを身に纏い、コック帽子を被った若い男性が
2人に頭を軽く下げ出迎える

「ほう…今日は和食か…」

見ればダイニングテーブルの上には
洋一が今までテレビか雑誌でしか見た事も無い様な
盛りつけも鮮やかな豪勢な和食の数々が並べられており――

―――うっわ高そ~…

目の前に広がる見た目も美しい料理の数々に洋一は言葉を失う

「はい。本日は珍しい食材が手に入りましたので――
 これは是非、命様に召し上がっていただかなくてはと…
 なので本日は和食にしてみました。」
「――では早速頂くとしよう。
 皆瀬、ポカンとしてないでお前も席に着け。」
「はっ、はい…っ!」

命の促す声に、慌てて洋一は命の向かいの席に腰を下ろす

「本日のお勧めはコチラの白甘鯛の刺身と鱗焼きとなります。」
「白甘鯛か…皆瀬、遠慮せずに食べてみろ。
 コレは市場に出回りにくい高級魚で中々の美味だぞ?」
「そう…なんですか…?ならお言葉に甘えて――」

洋一は恐る恐る刺身を先ずは一口、口に運ぶ

「…!?」

すると口の中で脂が蕩け、瞬く間に味わい深い甘みが口いっぱいに広がり――

―――ナニコレ美味しい…っ!

洋一は目をキラキラと輝かせながら「ん~…!」と唸り
至福の表情で白甘鯛の刺身を噛みしめ
ソレを向かいの席で見ていた命は思わず吹いた

「そ…そんなに美味しかったのか?」
「はいっ!俺――甘鯛は知ってますけど
 シロアマダイなんて魚…今まで聞いた事も無くって…
 まさかこんなに美味しいお魚だったとは…!」

洋一はもうひと口刺身を頬張る
するとやっぱり身悶えながらその美味しさに感動をし――

―――やっぱり可愛いな…皆瀬は…
   要が好きになるワケだ…

洋一が身悶える姿を見ながら命は満足そうに微笑むと
命も洋一が身悶える原因となった刺身を口へと運んだ
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