βは蚊帳の外で咽び泣く

深淵歩く猫

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それぞれの思惑 2

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命達がマンションの部屋に入ると

「…シャワー…浴びてきます…」

洋一が未だにぼんやりとした様子で命にそう言い残し
覚束ない足取りでバスルームに向かって歩きだす

「…大丈夫か…?」

そんな洋一の様子に命は心配になって声をかけるが
洋一は命の方を少しだけ首を動かし、振り返ると

「…大丈夫です…」

…と、力のない笑みを浮かべ
羽織った命の上着の袖の部分を片手で握り締めながら、洋一はその場を後にする

―――…本当に大丈夫か…?

命は何処か様子のおかしい洋一を一人にするのは不安だったが――
浩介がいる手前、流石にバスルームにまで洋一を追って着いて行くわけにはいかず…
命は渋々といった感じで浩介をリビングへと通す

「――それで…話というのは…?」

命は浩介をソファーに座る様に促し
浩介が促されるままソファーに腰を下ろすと
それを見届けた命が浩介が座るソファーの対角線上に備えてある
一人がけ用のソファーに腰を下ろし、改めて浩介の方を見る

「洋一が外に飛び出したのは――俺が洋一を追い詰めたせいだ。」
「…“追い詰めた”?」

浩介の言葉に命の表情が険しくなる

「俺が洋一に“運命の番”には抗えないんだと…
 例えどんなにαとβが愛し合って居たとしても――
 αは“運命の番”が現れた途端…平気でβを捨て、Ωを選ぶと
 言ってしまったから…」
「ッ!?何故…っ、洋一にそんな事を…!」

―――俺は決して洋一を捨てたりは…!

命の表情が強張り、前で組んでいる手に力が籠る…

「…俺は洋一に…俺の母親の様な想いをしてほしくないからだよ…“命様”。」
「!…それは一体どういう…」

命が唐突に出てきた浩介の母親の話題に困惑し
浩介の方をマジマジと見つめる

「…俺は正直…“運命”なんてものは信じちゃいない…
 何しろ俺はβだし――
 そもそもαとΩにしか感じる事の出来ない“運命”なんて感じないから
 理解しようがないしな…」
「…」

浩介が何処か寂し気な表情を浮かべながらフッと自嘲気味に笑う

「…だからαとΩが互いに“運命”だと感じた時に
 互いにどういった心境の変化が起こるか――何て解らないし…
 要さんが“運命の番”を見つけた時にどういった心境の変化が起きて
 洋一を捨てたのかも解らない…」
「ッ、」

―――それは…

「…ただ…そんなβには理解しがたい“運命”に
 βである俺のお袋は二十年以上…
 下手したら俺が生まれる前からαである俺の親父に
 “運命の番”が現れるんじゃないかと怯え、翻弄され、苦しんできた…」
「ッ!」
「馬鹿馬鹿しいと思うだろ?w俺だって思ってる…
 だけど…お袋にとっては真剣な話だったんだよ…
 それだけ親父の事を愛していたから…」
「………」

浩介の表情が切なく揺れる…
 
「そんなお袋の姿を見て育ってきたからこそ…俺は――耐えられないんだよ…
 洋一がαと結ばれ――
 相手の事を本気で好きになった時に
 洋一が俺のお袋みたいに何時現れるかも分からない“運命の番”の存在に怯え始め
 嘆く姿を見んのは…っ!」

浩介は血でも吐くかのように苦し気に自分の想いを吐露すると
悲痛な表情(かお)のまま、浩介は鋭い視線で命の事を見つめる

「だから“命様”…
 これは俺の“エゴ”だって事は百も承知でお願いしたい。
 もしアンタが本当に洋一の事を想うのなら――
 


 もうこれ以上…俺の“大切な親友”に関わるのは止めてくれ。」
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