天才クラシックプレイヤーが転生して国歌を作るまでのこと

クレームクリーム

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身の内に潜める暗がり

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橙の玄関口秀はまだ自宅と言っていいほどの時間は経っていないが

帰ってきたのだ。夕食の時間を大幅に過ぎてしまいながら。


今は何時だろうか…。


夕日の落ち具合でおおよそ判断できるのだが、

見えないので完璧アウトと考えるのが妥当だろう。


ドアを開けた。


只今戻っ………。


マーシャー君が無言で2食分のポトフを椅子に座り、

唯、見つめて居た。


…やってしまった。

その…すまない…、、、


いえ、別に気にしてませんよ


目が合わない。


ヤッテシマッタ。

練習が…少々…長引いてし…

…いや、

これは正しい答えではない。

訂正させてくれないか。


…っ、


話をして居たんだ。

名前は…確か…

グレイティア・フィオエラさんと。


…なん…何をですか…?


作曲の依頼だよ。

しかも娘さんの結婚式の為のだ。


…どうしたんですか…。


断ったさ。

依頼を受ける側がクライアントの注文に受けられない場合、

無理に受けて、相手の事情を狂わせる方が迷惑だろうから。


…そう…ですか。


そんなことより…。


本当にすまなかった。

孤独感という牢獄から救い出すと約束をした張本人がその不安を煽ってしまった。

こんなにも緩い決意が…

とても許される行為とは微塵も思っていないが…

これだけは言わせて欲しい。

二度と同じ過ちは繰り返さない…っ


一人の青年を迷わず抱き寄せた。


私は君を孤独と無縁の少年にすると今此処で誓おう。


秀は自身の不安に打ち勝った時よりも厚く固い意志を持って居た。

その姿といえば…そう。

”泰然自若“だ

いつも物静かな彼が身の内に潜める強い決心


…な…んで…そんな…こと…。


大人の私を余り甘く見ない方がいい。

なんだって出来る。

つまり、

君との約束も実現可能だ。


…っ、、、

なんか…ずるいです…。


…まぁ、元はと言えば…私が悪いから…。


先程の決意表明を高らかに語る姿とは打って変わって、

随分低姿勢に謝罪の言葉を連ねている。


君を見誤っていたよ。


…っ、それって…、、、。


決して貶しているわけではないさ。

君は年齢にしては大人びている、…いや。



我慢の仕方も気の使い方も全て心得ている。

私の青年期とは大違いだよ。

だから。

何度でも言うが、

少しでも君の側に長く居ることを約束するよ。


秀はポン。とマーシャーの頭に手を置き毛並みに沿って優しく撫でた。


夕食…もっと冷めてしまったね…。


大丈夫です。

またあっため直せますから…!


その言い草は他のことも言っているようだった。


じゃあ、レンジで…


レンジって…なんですか?


またやってしまった。


彼らは相変わらず、話しを騒がしく続けた。

今は夜十時、彼らの家の橙色はまだ灯っていた。
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