騎士団長に恋する僕は副団長に淫らな身体を弄ばれる【団長ルート 完結】【副団長ルート 完結】【団長&副団長ルート 完結】

紗綺

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恋情

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 アミルはあの日の事情を聴くと団長と向かい合っていた。
 中々話を切り出さず、言葉に迷う団長の様子にいたたまれない。

「その、カイルとは……」

 言い澱む団長に耳を塞ぎたくなる。
 けれどこれが正式な聴取であるなら逃げるわけにはいかない。

「同意の上の関係なのか……?」

 ひくっと喉が震えた。
 核心を突いた質問に捻る言葉も考えつかない。

 望んで行為をしているのかと問われれば違うと言える。
 けれど、無理やりだったのかと言えばそれは是とは言えない。
 始まりが一方的なものだったのは事実。
 巧みな手技で翻弄し、快感に屈するよう弄ばれた。
 しかし、最後には受け入れたのはアミル自身だ。


「僕から望んだ関係ではありません……」

 望んで関係を持ったことはない。
 だっていつだって仕掛けてきたのはカイルからだった。

「そうか!」

「けれど、最後に受け入れたのは僕の意思です」

 たとえ快楽に負けたのだとしても、拒絶しなかったのはアミルだ。
 逃げず、他に助けを求めることもせずに曖昧で消極的な拒否を続けた。
 だから、全ての罪をカイルに負わせる気にはなれない。

「同意の上で、快楽を共有する関係でした……」

 自分が口にした最低のセリフに吐き気がこみ上げてきた。
 きっと団長には軽蔑される。
 あんな、正視に耐えない痴態を繰り広げる人間が部下なんて。
 忌避され遠ざけられても仕方ないことだった。

「本当に……」

「本当です」

 団長の言葉に重ねて答えを返す。

「だが……、お前はカイルを好いているわけではないんだろう?」

「……っ!」

 憧れている人に、恋をしている人に、無遠慮に問われて感情が溢れてきそうだった。
 団長を好きなんだろうとは聞かれない微かな救いに心が乱れる。
 団長を好きなのかと問われたらきっと否定はできない。
 誤魔化したいのか認めたいのか混乱する思考で発した言葉は酷く冷たかった。

「だから、なんですか?」

「それはっ」

 息が苦しい。
 ただ問いに答えているだけなのに、どうしてこんなに呼吸が難しいんだろう。

「カイルとは欲望を解消し合う関係、それだけですから。
 気持ちとは関係ありません」

 絶句した団長の顔を見られなくて視線を逸らす。

「もういいですか、それでは失礼します」

 立ち上がったアミルに団長は制止の言葉を上げなかった。
 鈍い動きの足を叱咤して扉まで向かう。
 扉を開き、アミルが外へ踏み出しても止める言葉はなかった。
 背後で扉が閉まる音がした瞬間、弾かれたように駆けだしていた。
 心が伴わなくても身体の関係を持つ人間。
 アミルの返答に絶句していた団長はそれを信じられないのだろう。
 侮蔑されるのは怖い。
 けれど、貴方他の男を好きなのにカイルと身体の関係を持った男と言われることはもっと耐えられなかった。


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