騎士団長に恋する僕は副団長に淫らな身体を弄ばれる【団長ルート 完結】【副団長ルート 完結】【団長&副団長ルート 完結】

紗綺

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 あの聴取の日から、カイルとの情事を見られた後からアミルは団長に避けられていた。
 これまでも関わりは少なかったけれど、わずかに視線が合うだけで目を逸らされる。
 腫れ物に触れるような関係、それが僕と団長の関係を正しく表している気がした。


 常に団長の側にいて僕より気まずい関係のはずのカイルはいつも通りだ。

「団長に避けられてるって聞いたけど、落ち込んでないの?」

「落ち込む必要なんてないでしょう。 元々側で話をする機会もなかった方ですから」

 ふーんと軽く答えるカイルには僕の虚勢なんてきっと見透かされている。けれど踏み込んでこないのは知っていた。

「じゃあ、気を紛らわせてあげようか。
 一緒に訓練どう?」

 カイルの顔を見る。その顔は忌々しいほどいつもと同じ。
 ふと。これまで浮かべていた顔も、今の顔も、全て自然なものじゃないんだと思った。
 笑っているように見えても笑っていない。全て演じた顔でしかないんだと。
 今さらそんなことに気づいた自分がおかしくて軽く笑いが零れた。

「光栄です。
 では、お願いします」

 カイルの誘いに従って双剣を手に取りカイルの後に続いた。

 開けた場所まで来て剣を構える。
 カイルの獲物はスタンダードな長剣。応用が利き、騎士団で最も多く使われている武器だ。
 対するアミルの剣は、一般的な剣よりも少し短めの双剣。
 前にカイルが指南してくれてから鍛錬を重ね、扱いには慣れてきた。
 僕の構えを見たカイルがおもしろそうに口の端を吊り上げる。

 ふっと息を吐いて駆け出す。

 右の剣で繰り出した僕の突きを長剣の腹で弾くカイル。
 難なく防がれたことに驚きはない。
 戦闘に参加させてもらえないひよっこと魔獣討伐の最前線で戦う副団長では天と地ほどの差がある。
 反撃する間を作らないよう連続で攻撃を繰り出す。
 繰り返す攻撃の全てを弾き返すカイルの動きをじっと見つめる。
 完全に動きを捉えられていた。

 単調な動きになったところをすかさず撃ち込まれて片剣を取り落とした。
 振り下ろされた長剣を躱し、残った剣を脇腹に向けて突き出す。
 振り下ろしたはずの長剣で突きを弾かれ、体勢を崩される。

「……っ、参りました」

 首元に突き付けられた長剣に降参を告げる。
 全く勝負にならなかった。
 わかっていたことだけれど悔しい。

「基礎訓練もちゃんとしてたみたいだね。
 前より筋力が付いてる」

 自分では実感がなかったけれどちゃんと成長しているらしかった。

「実戦で使うにはまだ修練が足りないけど、アミルは器用だから鍛錬を続けていれば双剣を使いこなせるよ。
 差し当たっては基礎体力と筋力の向上を目標にすると良い」

 筋力が増えたとは言ったけどまだまだだと言われる。
 悔しいけどその通りだった。

 その他にもいくつか助言をもらい、訓練を続ける。
 カイルの言葉は適格で、自分に何が足りないのか明確に理解できていく。
 一刻程打ち合ったあと、次の予定があると立ち去るカイルに礼をし、訓練は終わった。
 やっぱりカイルの剣技はすごい。
 そんな人に直接教えを受けられるなんて貴重な機会だった。
 訓練には参加しているけれど、カイルはあまり面倒見が良い方じゃない。
 強者としていつでも手合わせには応じているけれど、勝つ方法は自分たちで考えて試せといったようすで事細かに助言をするところなんてみたことがなかった。
 細やかに助言をしてくれるなんてかなり希少な機会だったに違いない。
 どうしてかと聞いたらきっと気まぐれだと言うのだろうけど。
 言われたことを念頭に置いて鍛錬を続ける。
 もっと強くなりたい。
 団長や副団長に追いつけるくらい、強く。
 全然足りていないことは自覚している。
 だから繰り返し鍛錬をする。遠い道でも、進まないという選択肢はなかった。


 訓練場を立ち去るカイルに礼を続けるアミル。
 その姿を団長が見ていることには気づかなかった。


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