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暗躍は楽しんでいた
婚約者と少女が恋人関係になった報告に口の端を吊り上げる。
「やりましたね」
控えていた青年から労いの言葉をもらった鏡越しの弟は得意げな顔をして青年に二人を結びつけるための暗躍を語った。
「本当に頑張ったよ。
あの二人が一緒に過ごす時間を増やすために他の取り巻きを呼び出して引き離したり、他の子を近づけたり、それぞれの婚約者をけしかけたり。
大変だったー」
大変だったと言いながら楽しんでいたのを知っているので聞かされている青年も苦笑している。
婚約者は想いを遂げた喜びか出し抜いた者への優越感か、随分と態度や口が軽くなっているらしい。
聞いた内容は婚約の解消を申し出るには十分なもの。
後は婚約者が動くより早くあちらの家に婚約の解消を申し入れるだけ。
学園の外で動いていた青年にも労いの言葉をかける。
「あなたもよくやってくれたわ。
最有力候補が彼女から離れたのはあなたのおかげよ」
取り巻きのなかで家柄も容姿も一番優れていた者は家に呼び戻されて休学している。
それも彼が噂を撒いてくれたおかげ。
見事次点だった婚約者が少女の恋人に収まった。
「俺はお嬢の指示通りに動いただけですけどね」
それを成しえたことが素晴らしいというのに謙虚なことね。
自由に動けない私に変わって働いてくれる彼がいてこそ今回の計画が成った。
後はこの好機を逃さず叔父様に話を持っていくだけ。
また彼に動いてもらうことになる。
「叔父様へ手紙を書くわ。
最短で届けてちょうだい」
「承知しました。
俺がいない間、無茶をしないでくださいね」
領地まで大急ぎで届けろと言った指示にも文句を言わず従う。
家族を救ってもらった恩義がある青年は私に逆らわない。
苦言を零すのは珍しいがここで露見してしまえばすべてが水の泡になるのだから慎重になるのも当然のこと。
心配はありがたく受け取っておく。
「いよいよあなたにも覚悟を決めてもらうことになるわね。
戻るまでに気持ちを整理しておいてちょうだい」
叔父からの返事を受け取ったらかねてから進めていた計画が動き出す。
後戻りができなくなる前に覚悟を決めるようにと言い渡しておく。
「心配しなくても俺は逃げたりしませんよ」
青年が帰ってこなかったときのことも想定しているのを見透かされて微笑む。
あと少し。
これが終われば、自分らしく生きられる。
高揚感を抑え、その瞬間のために緊張を高めていく。
素早く書き上げた手紙を懐にしまう青年を見送って気を引き締めた。
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