まんまる【短編】

河野 る宇

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*まんまる

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 その人は、白いワンピースをいつも着ていた。僕にとても優しい笑顔を向けてくれる。

 キレイな長い黒髪が歩くたびに揺れて、化粧はあんまりしないけど、他のお友達に負けてないと思った。

 僕を手に乗せて優しく撫でてくれる。

 その人は、僕の優しい飼い主さん。

 僕の友達はクマさんのぬいぐるみ。でも、クマさんてなんだろう? 僕は見たことがないけど、飼い主さんがそう言ってた。

 クマさんのお腹の中には、僕のたいせつな食べ物が入ってる僕のヒミツ基地だ。

 回しぐるまで走る僕を飼い主さんはいつも楽しそうに見つめてる。

 そんな飼い主さんの笑顔が僕はとても好きだ。





 いつも同じ時間に飼い主さんに会いにくる人がいる。飼い主さんの恋人で、僕をとても可愛がってくれる。

 プラモデルが好きで、飼い主さんと一緒に作ってるコトもある。

 飼い主さんが好きなのは、お船の模型で、恋人さんが長い時間かけて作った帆のお船がお気に入り。

 お船は水に浮かべるものだって飼い主さんが言ってた。

 どんな風に浮かぶのかな?





 とてもキレイなお月さまの夜は、僕を連れて一緒に空を眺めるのが飼い主さんのお気に入り。

 まん丸なお月さまはスゴく美味しそう。半分のときは、きっと飼い主さんが恋人さんに半分あげたんだね。





 飼い主さんは時々お友達の女の子と僕をお見合いさせてくれるけど、僕はいつもその子に噛まれてばかりいる。

 僕のお嫁さんはとっても気まぐれだ。





 一度、飼い主さんが僕を手から落としてしまい、僕は痛みと驚いたのとでヒョコヒョコした。

 飼い主さんは慌てて僕をお医者さんに連れてった。

 運良く怪我はしなかったけど、飼い主さんは涙をはらはらと落としてずっと僕に「ゴメンね、ゴメンね」って謝った。

 僕はだいじょうぶだよ、だから泣かないで、泣かないで。そんなに大きな雨粒を落とさないで。

 僕は小さいから、何かあったら小さすぎてお医者さんは何も出来ないコトが多いんだって。

 だから飼い主さんはそんなに泣いてくれるんだね。





 僕のお嫁さんが赤ちゃんを産んだんだって飼い主さんが教えてくれた。それで最近お嫁さんが会いにこなかったんだね。

 よくわからないけど、飼い主さんがとても喜んでたから僕も嬉しい。





 ──いくつかの寒くなるときを繰り返して、飼い主さんは涙をためた目で僕を見つめている。

 もう、手足が重くてあんまり動かせないけど、僕は元気だよ。

 僕の飼い主さんでいてくれてありがとう。僕を好きでいてくれてありがとう。

 僕は生きたよ。たくさん、たくさん生きたよ。

 お空にはまん丸お月さま──今日だけは僕と半分こ。







END
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