1 / 1
*まんまる
しおりを挟むその人は、白いワンピースをいつも着ていた。僕にとても優しい笑顔を向けてくれる。
キレイな長い黒髪が歩くたびに揺れて、化粧はあんまりしないけど、他のお友達に負けてないと思った。
僕を手に乗せて優しく撫でてくれる。
その人は、僕の優しい飼い主さん。
僕の友達はクマさんのぬいぐるみ。でも、クマさんてなんだろう? 僕は見たことがないけど、飼い主さんがそう言ってた。
クマさんのお腹の中には、僕のたいせつな食べ物が入ってる僕のヒミツ基地だ。
回しぐるまで走る僕を飼い主さんはいつも楽しそうに見つめてる。
そんな飼い主さんの笑顔が僕はとても好きだ。
いつも同じ時間に飼い主さんに会いにくる人がいる。飼い主さんの恋人で、僕をとても可愛がってくれる。
プラモデルが好きで、飼い主さんと一緒に作ってるコトもある。
飼い主さんが好きなのは、お船の模型で、恋人さんが長い時間かけて作った帆のお船がお気に入り。
お船は水に浮かべるものだって飼い主さんが言ってた。
どんな風に浮かぶのかな?
とてもキレイなお月さまの夜は、僕を連れて一緒に空を眺めるのが飼い主さんのお気に入り。
まん丸なお月さまはスゴく美味しそう。半分のときは、きっと飼い主さんが恋人さんに半分あげたんだね。
飼い主さんは時々お友達の女の子と僕をお見合いさせてくれるけど、僕はいつもその子に噛まれてばかりいる。
僕のお嫁さんはとっても気まぐれだ。
一度、飼い主さんが僕を手から落としてしまい、僕は痛みと驚いたのとでヒョコヒョコした。
飼い主さんは慌てて僕をお医者さんに連れてった。
運良く怪我はしなかったけど、飼い主さんは涙をはらはらと落としてずっと僕に「ゴメンね、ゴメンね」って謝った。
僕はだいじょうぶだよ、だから泣かないで、泣かないで。そんなに大きな雨粒を落とさないで。
僕は小さいから、何かあったら小さすぎてお医者さんは何も出来ないコトが多いんだって。
だから飼い主さんはそんなに泣いてくれるんだね。
僕のお嫁さんが赤ちゃんを産んだんだって飼い主さんが教えてくれた。それで最近お嫁さんが会いにこなかったんだね。
よくわからないけど、飼い主さんがとても喜んでたから僕も嬉しい。
──いくつかの寒くなるときを繰り返して、飼い主さんは涙をためた目で僕を見つめている。
もう、手足が重くてあんまり動かせないけど、僕は元気だよ。
僕の飼い主さんでいてくれてありがとう。僕を好きでいてくれてありがとう。
僕は生きたよ。たくさん、たくさん生きたよ。
お空にはまん丸お月さま──今日だけは僕と半分こ。
END
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
小さな歌姫と大きな騎士さまのねがいごと
石河 翠
児童書・童話
むかしむかしとある国で、戦いに疲れた騎士がいました。政争に敗れた彼は王都を離れ、辺境のとりでを守っています。そこで彼は、心優しい小さな歌姫に出会いました。
歌姫は彼の心を癒し、生きる意味を教えてくれました。彼らはお互いをかけがえのないものとしてみなすようになります。ところがある日、隣の国が攻めこんできたという知らせが届くのです。
大切な歌姫が傷つくことを恐れ、歌姫に急ぎ逃げるように告げる騎士。実は高貴な身分である彼は、ともに逃げることも叶わず、そのまま戦場へ向かいます。一方で、彼のことを諦められない歌姫は騎士の後を追いかけます。しかし、すでに騎士は敵に囲まれ、絶対絶命の危機に陥っていました。
愛するひとを傷つけさせたりはしない。騎士を救うべく、歌姫は命を賭けてある決断を下すのです。戦場に美しい花があふれたそのとき、騎士が目にしたものとは……。
恋した騎士にすべてを捧げた小さな歌姫と、彼女のことを最後まで待ちつづけた不器用な騎士の物語。
扉絵は、あっきコタロウさんのフリーイラストを使用しています。
緑色の友達
石河 翠
児童書・童話
むかしむかしあるところに、大きな森に囲まれた小さな村がありました。そこに住む女の子ララは、祭りの前日に不思議な男の子に出会います。ところが男の子にはある秘密があったのです……。
こちらは小説家になろうにも投稿しております。
表紙は、貴様 二太郎様に描いて頂きました。
魔女は小鳥を慈しむ
石河 翠
児童書・童話
母親に「あなたのことが大好きだよ」と言ってもらいたい少女は、森の魔女を訪ねます。
本当の気持ちを知るために、魔法をかけて欲しいと願ったからです。
当たり前の普通の幸せが欲しかったのなら、魔法なんて使うべきではなかったのに。
こちらの作品は、小説家になろうとエブリスタにも投稿しております。
紅薔薇と森の待ち人
石河 翠
児童書・童話
くにざかいの深い森で、貧しい若者と美しい少女が出会いました。仲睦まじく暮らす二人でしたが、森の周辺にはいつしか不穏な気配がただよいはじめます。若者と彼が愛する森を守るために、少女が下した決断とは……。
こちらは小説家になろうにも投稿しております。
表紙は、夕立様に描いて頂きました。
そうして、女の子は人形へ戻ってしまいました。
桗梛葉 (たなは)
児童書・童話
神様がある日人形を作りました。
それは女の子の人形で、あまりに上手にできていたので神様はその人形に命を与える事にしました。
でも笑わないその子はやっぱりお人形だと言われました。
そこで神様は心に1つの袋をあげたのです。
青色のマグカップ
紅夢
児童書・童話
毎月の第一日曜日に開かれる蚤の市――“カーブーツセール”を練り歩くのが趣味の『私』は毎月必ずマグカップだけを見て歩く老人と知り合う。
彼はある思い出のマグカップを探していると話すが……
薄れていく“思い出”という宝物のお話。
悪女の死んだ国
神々廻
児童書・童話
ある日、民から恨まれていた悪女が死んだ。しかし、悪女がいなくなってからすぐに国は植民地になってしまった。実は悪女は民を1番に考えていた。
悪女は何を思い生きたのか。悪女は後世に何を残したのか.........
2話完結 1/14に2話の内容を増やしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる