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春乃が帰り、夕食を終え孝文も帰路につこうとしていた。
「佐々木さん。ぜひ何でもない日にでもまたいらして頂戴な」
高嶺の母が、孝文に手土産を持たせながら言った。
普段あまりお家から出ず、料理が趣味な母からすれば、たまに来て、面白い話を聞かせてくれる相手を離したくないのだろう。
父は単身赴任、娘は嫁ぎ、上の息子は病気がちで入退院を繰り返し、下の息子はほぼ部屋に籠っている家族など面白くはない。
彼女の今の楽しみは孝文との会話やたまに遊びに来る孫と会うことくらいだろう。
「いえ、奥様。流石に何もないときに来るのはご迷惑でしょう。
またぜひ、夕食にお誘い頂ければ」
母は少女のようにはにかんで微笑んだ。
「えぇそうするわ。そ、⋯高嶺。表まで送って差し上げて」
随分冷える夜だ。
こんな日はいつも姉が甘い物を用意してくれていた。
姉兄と一緒にこたつに入り、眠るまで話し合ったこともあった。
「いやぁ。今日は冷えますねぇ」
「⋯⋯」
「そういえば高嶺先生。約束のあれ、見つかったと言ったらどうします?」
「佐々木さん。ぜひ何でもない日にでもまたいらして頂戴な」
高嶺の母が、孝文に手土産を持たせながら言った。
普段あまりお家から出ず、料理が趣味な母からすれば、たまに来て、面白い話を聞かせてくれる相手を離したくないのだろう。
父は単身赴任、娘は嫁ぎ、上の息子は病気がちで入退院を繰り返し、下の息子はほぼ部屋に籠っている家族など面白くはない。
彼女の今の楽しみは孝文との会話やたまに遊びに来る孫と会うことくらいだろう。
「いえ、奥様。流石に何もないときに来るのはご迷惑でしょう。
またぜひ、夕食にお誘い頂ければ」
母は少女のようにはにかんで微笑んだ。
「えぇそうするわ。そ、⋯高嶺。表まで送って差し上げて」
随分冷える夜だ。
こんな日はいつも姉が甘い物を用意してくれていた。
姉兄と一緒にこたつに入り、眠るまで話し合ったこともあった。
「いやぁ。今日は冷えますねぇ」
「⋯⋯」
「そういえば高嶺先生。約束のあれ、見つかったと言ったらどうします?」
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