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【5-2】フィラ「やめないわよ! この目障りなデカ乳を今日という今日は仇を取ってやるわ!」
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──【5-2】──
友人である房江の住む岡山県まで新幹線で行き、本人に会ってきた西園寺・フィラ・梅は、最終電車に乗って自宅に帰ってきていた。
「フィラさん、よく帰ってきたね」
物音で帰ってきたフィラに気づいて、二階に降りてきた風子だったが、たった一日で明らかにだらしない生活をしたであろうと予想できる上下のスウェット姿に、綻(ほころ)びのある褞袍(どてら)を羽織り、風子はフィラを迎えた。
「何て格好なのよ。それにもうその上の服ってサイズが合ってないんじゃないの? おヘソ出てるわよ」
とフィラは上着のスウェットの裾を引っ張る。
「ちょっ! フィラさん、やめてよ!」
と慌てる風子。
「裾が上がっているのって、風子のおっぱいが大き過ぎるからじゃないの!」
とイライラしながらフィラは何度も引っ張る。
「ちょ! やめ! くすぐったい~」
「全く、こんなに身長と胸だけ大きくなって」
とフィラは眉間に皺(しわ)を寄せた。
「身長にサイズを合わせるとおヘソが出ちゃうのよ。だからって大き目のを買うと太って見えるし」
と風子は言い訳する。
「これからは男性の伊織君も住むのだから、なるべく肌を見せない服装を心がけてね」
と注意するが、
「だって今日、朝から補習だったんだよ。やりたくない勉強を朝からやらされてさ。ほとんどの生徒は春休みだっていうのに」
とお腹を掻く。
「私の言ったことに答えなさい! それにそういう姿を見せちゃいけないってさっきから言ってんの!」
とフィラは叱った。
風子は雷のように美人タイプではないが、どちらかというと可愛い系の顔に、一八〇センチの長身を持ち、Hカップの魅力的な胸を持っているが、このだらしない性格では魅力半減どころではないな、とフィラは思っている。
「黙っていたら色気があるけど、こうして普段通りだと、まだまだ子供ね」
と過去の幼かった風子の笑顔を思い出していた。
「で。補習の復習はやったの?」
と訊くと、
「補習の復習?」
と呟くと、明らかに顔色が悪くなった。
「やりたくもない勉強を、朝っぱらからやらされたので、家に帰ってカレーをお腹一杯に食べた後、一眠りしたら夜たった。そんなところでしょう?」
とフィラがため息混じりで言うと、
「え! 何で分かったの!」
と風子は驚いている。
「そりゃ、あなたのそのだらしない格好とボサボサ髪を見たら分かるわよ」
とフィラは呆れている。
「まあ、その……。次からはちゃんとやるから」
と苦笑いをしながら後ろ頭を掻く風子。
「身体ばっかり大きくなって、中身はまだまだ子供ね」
と小学生にしか見えないフィラ・梅は腰に手を当てて、風子を見上げながら言うと、思い出したように、
「そうそう! 無理をして帰ってきたのには二つの理由があるのよ」
フィラは真面目な表情を向けた。
「理由?」
と風子。
「一つはこのビルにまた、新しい同居人が増えることになりそうなのよ」
とフィラが言うと、
「えっ! 新しい同居人! それってまた男?」
と風子は複雑な表情をした。
「男性じゃないわ。私も今後は伊織君以外は住まわせないつもりだし」
「伊織さんって最近の男性には珍しく、真面目でエッチな視線を向けてこないものね」
と風子は少し顔を赤らめながら言う。
「おや? その言い方は男達から何か嫌な目にでもあわされたって感じじゃない?」
とフィラ。
「あったも何も、私のクラスの男子の半分は私に聞こえるように話しているのよ」
と風子。
「何て?」
「あのデカい乳、触りてえ~。とか。何カップなんだろうな~? とかさ。体育をしていても男子達が私の胸ばかり見てるし」
とため息をつくと、
「あ~。さいですか、そうですか。それはようございましたね~」
とフィラは風子との会話を切るように背中を向けて、自分の傍らに置いているスーツケースを開いて荷物の整理を始めた。
「ちょっとフィラさん、訊いてる? 私、本当に困っているんだけど?」
とフィラの背中から話しかけると、
「どうせ! どうせ、私はペッタンコですよ! まな板ですよ! 二百年生きているけど、胸だけは全然成長してないわよ! 悪かったわよ!」
と怒り始めた。
「……フィラさんって背も成長していないよね」
と風子はデリカシーのなさを発揮した。
「な! なんだと~!」
「うわっ! 何を怒ってんのよ? 小さくて可愛いじゃん」
「うるさい! 私は小さくて可愛くて、胸がペッタンコが我慢できないのよ!」
「胸がペッタンコだなんて、一言も言ってないじゃん」
すると、
「風子! あんたの~!」
「えっ? なになに?」
「あんたの~」
とフィラは風子に近寄ると、
「このデッカいおっぱいが私は羨ましいやら、妬(ねた)ましいやら! こんちくしょう~!」
とフィラは子供のような小柄な手で、風子の大きな胸の膨らみを揉み出した。
「アハハ! くすぐったい! やめてよ、フィラさん!」
「やめないわよ! この目障りなデカ乳を今日という今日は仇を取ってやるわ!」
「ちょっ! フィラさん! フィラさんは私の胸を揉むためにこんな遅くに新幹線で帰ってきたの!」
と言う風子の言葉に我を思い出した。
「そうだわ。私、こうしちゃいられないんだった」
と言うと、風子に背を向けて、
「風子。手伝って!」
と声をかけた。
フィラは風子に事情を話した。
雷と伊織が声が聞こえるという別荘に行くと、そこには持ち主の母親の霊と、無断で屋根裏に住んでいた若い山姥が居たことを、風子に話した。
「山姥!」
と風子は想像を巡らしたのか、
「山姥だから、きっと牙が口から出ていて、こ~んな恐ろしい顔をしているんでしょうね」
と自らの可愛らしい顔の口元を横に引っ張り、くるりとした目を吊り上がらせた。
「それがね。その若い山姥って凄い美人らしいわ」
「え! 本当に?」
と風子は顔から手を離して驚く。
「私が知る限りでも確かに美しい山姥は存在するのよ。だって山姥といっても、人間の男と交わらなければ子供が出来ないからね」
「まっ! 交わる!」
と性的な話が苦手な風子は身体を固まらせながら焦っている。
身体は大人でも、男子と一度も付き合ったことのない十七歳の風子と違い、見た目は小学生でも二百年も生きた人生の大先輩であるフィラは、男女の営みの話題なんて一向に平気な様子である。
「ところがよ。その山姥は雷と闘ったって言うじゃない。雷と闘えるくらいの能力があるということは、相当恐ろしい見た目をしているはずなのよ」
「え? どういうこと?」
と風子。
「山姥ってのはね。見た目がおどろおどろしくて、鬼のような顔をしている者ほど、高い妖術が使える妖怪というか種族なの」
「ふう~ん」
「でもそれに反してね。目が覚めるような美しい女の姿の山姥もいるのよ。ただし、その美しい山姥は妖術は使えないし、人間の女と能力はほとんど変わらないわ」
「へえ~」
「ところがよ。雷からの報告だとその山姥は『見た目が美しくて妖術も使う』って言うのよ。正直、私は混乱しちゃってるのよね」
「私、スマホで調べてあげようか?」
と自分の部屋に戻ろうとすると、
「帰り道の電車の中で散々、検索したわよ。でも出てこなかったわ」
「そうなんだ……」
「それでよ。そんなよく分からない山姥を、何の教育もしないで人間界に放ったらどうなると思う?」
「う~ん。人間の皆さんが困ってしまう!」
とまるで良い考えが浮かんだかのように言ったが、
「多くの人々に迷惑をかけてしまうだろうし、下手をしたら山姥の正体が公(おおやけ)にされて」
「されて?」
「妖怪狩りが始まってしまうかもしれない」
「えっ! それって! フィラさん、危ないじゃん!」
と風子は焦った様子だったが、
「あのねえ。風を操(あやつ)れて、生物の病気を治せて、霊が見えて除霊できる女の子もかなり危ないと思うわよ」
とフィラが横目を向けて意地悪そうに言うと、
「……えっ! 私~!」
と風子は驚いた。
「つまり、その山姥の子を住まわせて再教育することは、私達を守ることにも繋がっていくのよ」
とフィラは言った。
「へえ~。そうか。そうなんだ。フィラさんって見た目と違って色々考えているんだねえ~」
と風子は感心したが、
「見た目と違って、が正直引っかかるけど、まあ、いいわ」
と風子の言葉に不満を言ったが、
「で、フィラさんはどうするつもりなの?」
と訊いた。
「雷ちゃんの話によると、どうも学校には行ったことがなくて『怪力』と『水』を操る能力を持っているみたいね」
と言うと、
「う~ん……」
とフィラは頭を抱えた。
「人間と見た目が変わらないのなら、私のコネで戸籍を作って児童養護施設に預けるという方法も考えたんだけどね」
と言ったが、頭を掻きながら、
「ところが学校に通ったことがない上に『怪力』と『水』を操る能力を持っているって言うじゃない」
と言うと、深くため息をついた。
「二つの特殊能力かあ~。そんなのがあったら、とてもじゃないけど人間に任せられないものね」
と風子が大きく膨らんだ胸の下で腕を組んだ。
「そうなのよね……。となると残る方法は?」
「ここで預かるしかない……」
とフィラと風子は顔を見合わせて、大きくため息をした。
「住むにしても部屋はどうするの?」
と風子。
「そうなのよね~。伊織君に部屋を貸してしまったから、今は空きの部屋って言えば……」
「一階のお店の休憩室か、フィラさんの部屋を一つ、空けてもらうか? かな」
「はあ~! 私の部屋はダメよ! 何でこのビルのオーナーが広い部屋を持てないのよ! そんなの絶対にダメ!」
と強く主張した。
「なら、カレー店の休憩室を山姥に?」
「それもダメよ。風子と雷が学校から帰って、学生服からお店の服に着替えることが出来なくなるわ」
「確かにそうだよね。この二階の事務所とかで着替えていたら、お昼の忙しい時間に私と雷ちゃんは、余り手伝えないことになるものね」
「……そうなのよね……」
と二人は再び大きくため息をついたが、
「仕方がないわね。今は取り敢えず物置にしている部屋を片付けましょう。で近いうちにみんなのスペースを四人部屋にリフォームするしかないわね」
とフィラは言った。
「ということで、風子。手伝いなさい。取り敢(あ)えず、伊織君の部屋の隣りの物置部屋を片付けるわ」
とフィラが言うと、
「え~。今から~。大変だよ~。明日にしようよ~」
と白い肌の臍(へそ)辺りを掻いた。
「何、言ってんの! ニ、三時間もしたら、二人が帰ってくるわよ。ほら、手伝う!」
とフィラは素早く頭に手拭いを巻いて、箒(ほうき)を持った。こういうところは、昭和の女性という感じである。
「分かったわよ、もう~」
と風子は渋々、フィラについていった。
2025年3月3日
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友人である房江の住む岡山県まで新幹線で行き、本人に会ってきた西園寺・フィラ・梅は、最終電車に乗って自宅に帰ってきていた。
「フィラさん、よく帰ってきたね」
物音で帰ってきたフィラに気づいて、二階に降りてきた風子だったが、たった一日で明らかにだらしない生活をしたであろうと予想できる上下のスウェット姿に、綻(ほころ)びのある褞袍(どてら)を羽織り、風子はフィラを迎えた。
「何て格好なのよ。それにもうその上の服ってサイズが合ってないんじゃないの? おヘソ出てるわよ」
とフィラは上着のスウェットの裾を引っ張る。
「ちょっ! フィラさん、やめてよ!」
と慌てる風子。
「裾が上がっているのって、風子のおっぱいが大き過ぎるからじゃないの!」
とイライラしながらフィラは何度も引っ張る。
「ちょ! やめ! くすぐったい~」
「全く、こんなに身長と胸だけ大きくなって」
とフィラは眉間に皺(しわ)を寄せた。
「身長にサイズを合わせるとおヘソが出ちゃうのよ。だからって大き目のを買うと太って見えるし」
と風子は言い訳する。
「これからは男性の伊織君も住むのだから、なるべく肌を見せない服装を心がけてね」
と注意するが、
「だって今日、朝から補習だったんだよ。やりたくない勉強を朝からやらされてさ。ほとんどの生徒は春休みだっていうのに」
とお腹を掻く。
「私の言ったことに答えなさい! それにそういう姿を見せちゃいけないってさっきから言ってんの!」
とフィラは叱った。
風子は雷のように美人タイプではないが、どちらかというと可愛い系の顔に、一八〇センチの長身を持ち、Hカップの魅力的な胸を持っているが、このだらしない性格では魅力半減どころではないな、とフィラは思っている。
「黙っていたら色気があるけど、こうして普段通りだと、まだまだ子供ね」
と過去の幼かった風子の笑顔を思い出していた。
「で。補習の復習はやったの?」
と訊くと、
「補習の復習?」
と呟くと、明らかに顔色が悪くなった。
「やりたくもない勉強を、朝っぱらからやらされたので、家に帰ってカレーをお腹一杯に食べた後、一眠りしたら夜たった。そんなところでしょう?」
とフィラがため息混じりで言うと、
「え! 何で分かったの!」
と風子は驚いている。
「そりゃ、あなたのそのだらしない格好とボサボサ髪を見たら分かるわよ」
とフィラは呆れている。
「まあ、その……。次からはちゃんとやるから」
と苦笑いをしながら後ろ頭を掻く風子。
「身体ばっかり大きくなって、中身はまだまだ子供ね」
と小学生にしか見えないフィラ・梅は腰に手を当てて、風子を見上げながら言うと、思い出したように、
「そうそう! 無理をして帰ってきたのには二つの理由があるのよ」
フィラは真面目な表情を向けた。
「理由?」
と風子。
「一つはこのビルにまた、新しい同居人が増えることになりそうなのよ」
とフィラが言うと、
「えっ! 新しい同居人! それってまた男?」
と風子は複雑な表情をした。
「男性じゃないわ。私も今後は伊織君以外は住まわせないつもりだし」
「伊織さんって最近の男性には珍しく、真面目でエッチな視線を向けてこないものね」
と風子は少し顔を赤らめながら言う。
「おや? その言い方は男達から何か嫌な目にでもあわされたって感じじゃない?」
とフィラ。
「あったも何も、私のクラスの男子の半分は私に聞こえるように話しているのよ」
と風子。
「何て?」
「あのデカい乳、触りてえ~。とか。何カップなんだろうな~? とかさ。体育をしていても男子達が私の胸ばかり見てるし」
とため息をつくと、
「あ~。さいですか、そうですか。それはようございましたね~」
とフィラは風子との会話を切るように背中を向けて、自分の傍らに置いているスーツケースを開いて荷物の整理を始めた。
「ちょっとフィラさん、訊いてる? 私、本当に困っているんだけど?」
とフィラの背中から話しかけると、
「どうせ! どうせ、私はペッタンコですよ! まな板ですよ! 二百年生きているけど、胸だけは全然成長してないわよ! 悪かったわよ!」
と怒り始めた。
「……フィラさんって背も成長していないよね」
と風子はデリカシーのなさを発揮した。
「な! なんだと~!」
「うわっ! 何を怒ってんのよ? 小さくて可愛いじゃん」
「うるさい! 私は小さくて可愛くて、胸がペッタンコが我慢できないのよ!」
「胸がペッタンコだなんて、一言も言ってないじゃん」
すると、
「風子! あんたの~!」
「えっ? なになに?」
「あんたの~」
とフィラは風子に近寄ると、
「このデッカいおっぱいが私は羨ましいやら、妬(ねた)ましいやら! こんちくしょう~!」
とフィラは子供のような小柄な手で、風子の大きな胸の膨らみを揉み出した。
「アハハ! くすぐったい! やめてよ、フィラさん!」
「やめないわよ! この目障りなデカ乳を今日という今日は仇を取ってやるわ!」
「ちょっ! フィラさん! フィラさんは私の胸を揉むためにこんな遅くに新幹線で帰ってきたの!」
と言う風子の言葉に我を思い出した。
「そうだわ。私、こうしちゃいられないんだった」
と言うと、風子に背を向けて、
「風子。手伝って!」
と声をかけた。
フィラは風子に事情を話した。
雷と伊織が声が聞こえるという別荘に行くと、そこには持ち主の母親の霊と、無断で屋根裏に住んでいた若い山姥が居たことを、風子に話した。
「山姥!」
と風子は想像を巡らしたのか、
「山姥だから、きっと牙が口から出ていて、こ~んな恐ろしい顔をしているんでしょうね」
と自らの可愛らしい顔の口元を横に引っ張り、くるりとした目を吊り上がらせた。
「それがね。その若い山姥って凄い美人らしいわ」
「え! 本当に?」
と風子は顔から手を離して驚く。
「私が知る限りでも確かに美しい山姥は存在するのよ。だって山姥といっても、人間の男と交わらなければ子供が出来ないからね」
「まっ! 交わる!」
と性的な話が苦手な風子は身体を固まらせながら焦っている。
身体は大人でも、男子と一度も付き合ったことのない十七歳の風子と違い、見た目は小学生でも二百年も生きた人生の大先輩であるフィラは、男女の営みの話題なんて一向に平気な様子である。
「ところがよ。その山姥は雷と闘ったって言うじゃない。雷と闘えるくらいの能力があるということは、相当恐ろしい見た目をしているはずなのよ」
「え? どういうこと?」
と風子。
「山姥ってのはね。見た目がおどろおどろしくて、鬼のような顔をしている者ほど、高い妖術が使える妖怪というか種族なの」
「ふう~ん」
「でもそれに反してね。目が覚めるような美しい女の姿の山姥もいるのよ。ただし、その美しい山姥は妖術は使えないし、人間の女と能力はほとんど変わらないわ」
「へえ~」
「ところがよ。雷からの報告だとその山姥は『見た目が美しくて妖術も使う』って言うのよ。正直、私は混乱しちゃってるのよね」
「私、スマホで調べてあげようか?」
と自分の部屋に戻ろうとすると、
「帰り道の電車の中で散々、検索したわよ。でも出てこなかったわ」
「そうなんだ……」
「それでよ。そんなよく分からない山姥を、何の教育もしないで人間界に放ったらどうなると思う?」
「う~ん。人間の皆さんが困ってしまう!」
とまるで良い考えが浮かんだかのように言ったが、
「多くの人々に迷惑をかけてしまうだろうし、下手をしたら山姥の正体が公(おおやけ)にされて」
「されて?」
「妖怪狩りが始まってしまうかもしれない」
「えっ! それって! フィラさん、危ないじゃん!」
と風子は焦った様子だったが、
「あのねえ。風を操(あやつ)れて、生物の病気を治せて、霊が見えて除霊できる女の子もかなり危ないと思うわよ」
とフィラが横目を向けて意地悪そうに言うと、
「……えっ! 私~!」
と風子は驚いた。
「つまり、その山姥の子を住まわせて再教育することは、私達を守ることにも繋がっていくのよ」
とフィラは言った。
「へえ~。そうか。そうなんだ。フィラさんって見た目と違って色々考えているんだねえ~」
と風子は感心したが、
「見た目と違って、が正直引っかかるけど、まあ、いいわ」
と風子の言葉に不満を言ったが、
「で、フィラさんはどうするつもりなの?」
と訊いた。
「雷ちゃんの話によると、どうも学校には行ったことがなくて『怪力』と『水』を操る能力を持っているみたいね」
と言うと、
「う~ん……」
とフィラは頭を抱えた。
「人間と見た目が変わらないのなら、私のコネで戸籍を作って児童養護施設に預けるという方法も考えたんだけどね」
と言ったが、頭を掻きながら、
「ところが学校に通ったことがない上に『怪力』と『水』を操る能力を持っているって言うじゃない」
と言うと、深くため息をついた。
「二つの特殊能力かあ~。そんなのがあったら、とてもじゃないけど人間に任せられないものね」
と風子が大きく膨らんだ胸の下で腕を組んだ。
「そうなのよね……。となると残る方法は?」
「ここで預かるしかない……」
とフィラと風子は顔を見合わせて、大きくため息をした。
「住むにしても部屋はどうするの?」
と風子。
「そうなのよね~。伊織君に部屋を貸してしまったから、今は空きの部屋って言えば……」
「一階のお店の休憩室か、フィラさんの部屋を一つ、空けてもらうか? かな」
「はあ~! 私の部屋はダメよ! 何でこのビルのオーナーが広い部屋を持てないのよ! そんなの絶対にダメ!」
と強く主張した。
「なら、カレー店の休憩室を山姥に?」
「それもダメよ。風子と雷が学校から帰って、学生服からお店の服に着替えることが出来なくなるわ」
「確かにそうだよね。この二階の事務所とかで着替えていたら、お昼の忙しい時間に私と雷ちゃんは、余り手伝えないことになるものね」
「……そうなのよね……」
と二人は再び大きくため息をついたが、
「仕方がないわね。今は取り敢えず物置にしている部屋を片付けましょう。で近いうちにみんなのスペースを四人部屋にリフォームするしかないわね」
とフィラは言った。
「ということで、風子。手伝いなさい。取り敢(あ)えず、伊織君の部屋の隣りの物置部屋を片付けるわ」
とフィラが言うと、
「え~。今から~。大変だよ~。明日にしようよ~」
と白い肌の臍(へそ)辺りを掻いた。
「何、言ってんの! ニ、三時間もしたら、二人が帰ってくるわよ。ほら、手伝う!」
とフィラは素早く頭に手拭いを巻いて、箒(ほうき)を持った。こういうところは、昭和の女性という感じである。
「分かったわよ、もう~」
と風子は渋々、フィラについていった。
2025年3月3日
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