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【5-3】「風子。あんた、ケチね。いいわよ、使い古しでも。黄色くなっているパンティーでもいいわよ」
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──【5-3】──
「後、三十分くらいで着くよ。それにしても……」
と軽バンを運転している伊織は、後部座席に座っている雷と若い山姥(やまんば)を、バックミラーで確認する。
「まただわ。伊織さん、急いで停まって」
「分かった」
と車を停められるスペースがあったので、伊織はそこに急停車してハザードを点滅させた。
「ほら。しっかり」
と雷は後部右のドアから降りて、左のドアを開けると、雷との闘いで汚れた着物姿の若い山姥を、引っ張り出しながら支えた。
「ほら。吐きなさい。吐くと楽になるわ」
と背中を優しく擦っている。
すると美しい山姥の口から胃液が出てくる。
「そりゃ、苦しいわよね。胃の中の物をほとんど吐いちゃったものね」
と雷は心配そうに呟く。
「仕方がないね。生まれて初めて車に乗るのだから。酔って当たり前だよ」
と運転席から降りた伊織も心配そうである。
吐き終わると、肩で大きく息をした後に、山姥は右手人差し指を自らの口に入れると、指先から水流を発射して口の中を綺麗にした。
「こういう時は、その水の能力は便利ね」
と雷は感心している。
「……ご、ごめんなさい……。……わ、私……」
と闘いの時はあれほど健康そうな顔色が、今はまるで重病患者のようである。
「心配いらないわ。気分が良くなるまでここにいましょう」
と雷は言った。
「寒いだろ。僕の上着だけど、どうぞ」
と山姥に掛けてあげる。
「……あ……りが……とう」
「そんなの気にしないで」
そして、
「雷さんも風邪を引くよ。これを着てよ」
と雷の上着を手渡した。
「ありがとう。この調子だとここからニ時間以上かかってしまうかもね」
と雷は夜空を見あげた。
三月のこの夜は思いのほか冷えていた。
一方、フィラと風子は物置と化していた伊織の隣りの部屋を片付けていた。
片付けるといっても、その物置にしていた部屋のガラクタや大切な思い出の品々を、押入れやフリースペースなどに、分散して無理矢理押し込んでいく、と言った方が正しい。
「やっと物がなくなったわ……」
と息を切らせながらフィラは額の汗を拭う。
「そうだね。今、使っている物と古い物が混じってたよね」
と息も切れず、汗もかかずに平気な風子が言った。
「はあ。はあ。風子……」
「! 何?」
「あなた、疲れないの……? 私よりも物を運んでいたでしょう……?」
とフィラは頭に被っていた手拭いを使って、額と流れる汗を拭いた。
「え? あれくらい平気だけど」
とキョトンとしている。
フィラは肩で息をしながら、
「はあ。はあ。あなたの体力は化け物ね……」
とフィラが言うと、風子は口を尖らせて、
「化け物って! そういうフィラさんは歳じゃないの?」
とサラリと言ったが、
「な……! なんですって……!」
と言いながら、風子に近づくが、
「ほら。拭き掃除しないと、埃(ほこり)が凄いよ。私、バケツに水を汲んで、雑巾を持ってくる。フィラさん、ちょっと待ってて」
とそそくさとその場を立ち去った。
「風子の体力は尋常じゃないわね……。でも急がないと……。もうそろそろ着いちゃう……」
と言いながら、
「風子! 今、何時かしら? もう、一時回ったかな?」
と声をかけた。
「一時なんてとっくの前に過ぎてるわよ。もう、日曜日の二時前よ」
と風子。
「え! それはマズイわ。下手したら店の休憩室で寝てもらうことになるかも」
と慌てるフィラとは対照的に、
「別にいいんじゃない。日曜日でしょう。定休日じゃん」
と風子。
フィラは手を止めて少し考えて、
「まあ~。確かにそうなんだよね。でも部屋を整理して開けると決めたのだから、さあ! チャッチャと働いた」
と残っている荷物を運ぶ。
「え~」
と心の底から嫌そうな声が階段を登ってくる風子から聞こえた。
伊織と雷と若く美しい山姥を乗せた軽のワンボックスが古ぼけた西園寺ビルにやっと到着した。
時間は深夜五時前である。まだ、暗い。
「僕は車を駐車場に停めてくるから、雷さんは山姥さんを連れて行ってあげてよ。僕も急いて戻ってくるからさ」
と言い残して、カレー店の出入り口のある表に二人を降ろして、伊織は裏手の方に車を回した。
「どお? 山姥ちゃん、歩ける?」
と心配そうに雷は話しかける。
「……いいえ……。大丈夫じゃ、ありません……」
と辛そうである。
「二階に上がる階段を、この状態で登らせるのは難しいわね……」
と雷は呟く。
「取り敢えずは電話ね」
とスマートフォンでフィラに電話をした。
「もしもし。雷です。深夜にごめんなさい、というかもう朝ね。遅くなってごめんなさい」
するとフィラは電話に出た。
「ハアハア。おお~。おかえり、雷。ハアハア」
と言うフィラの声。
「あのう。私今、山姥さんと一緒にビルの前にいます」
「そう~。遅かったわね~。ハアハア」
と電話の向こうで、肩で息をしているように感じる。
「どうしたんですか? 大丈夫ですか?」
「大丈夫……。大丈夫……。急いで掃除をして疲れただけだから……。何とか部屋らしくなったから……」
と言うと、フィラの後ろから、
「雷ちゃん。早く上がって来なよ。伊織さんの隣りの部屋を空けたから、すぐにでも使えるよ~」
と風子の声が電話から聞こえた。
「風子。起きてたのね。お願いがあるんたけど」
と言うと、フィラは風子に変わった。
そして雷は風子に、ビル前の道路まで来て、山姥娘を雷と二人で支えて二階に運んで欲しい、と頼んだ。
「え? 伊織さんに頼めばいいんじゃないの?」
と風子は不思議そうに言ったが、
「駄目よ。山姥ちゃんは女の子なのよ。男の伊織さんに運ばせるのは。その……。セクハラよ! よくないわよ!」
と雷は訴えた。
すると、
「僕だとセクハラになるんだね……。よくない……。確かにそうかもね……」
といつの間にか雷の側に伊織が悲しそうに荷物を持って立っていた。
「え……。あ! あの……。その……」
と雷は慌ててしまい、うっかり電話を切ってしまった。
すると、ビルの方から人が降りてくる足音が聞こえた。
「おかえり。雷と伊織君」
とフィラ。
「二人共、お帰り」
と風子。
フィラは無造作に山姥娘に近づくと、
「どうしたの、この子? 顔色が悪いわね」
と訊くと、
「生まれて初めて車に乗ったみたいで、酔ってしまったみたいなんです」
と雷が答えると、
「そうなの? じゃあ、車の中はこの子の吐瀉物(げろ)で汚れまくりかしら?」
と眉をひそめたが、
「吐きそうになったら車を停めていたから、車内は汚れていないわよ。でも何度も停まったから、帰るのに時間がかかっちゃって」
と雷は言う。
「ほうほう、なるほど」
と言いながら、白装束の着物で座り込んでいる山姥の顔を覗き込んだ。
山姥娘は辛そうな顔をフィラの方に向けた。
「ほお~。顔色は悪いけど、かなりの美形ね。それに」
と露骨に着物の胸元を覗くと、
「おっぱいが大きそうね。まあ、風子ほどじゃないけど」
と何度も頷く。
「ちょっと、フィラさんたら」
と雷は苦笑し、伊織は困惑気味である。
「うちのカレー屋はサラリーマンや男子学生がメインターゲットだからね。美人でスタイルのいい子は大歓迎よ」
とここはドライな西園寺・フィラ・梅が出た、という感じである。
フィラは腰に手を当てて、
「伊織君は出張の荷物を取り敢えず二階の事務所に上げて頂戴。風子と雷は山姥ちゃんを二階の事務所のソファーまで、両側から付き添ってあげて」
と指示した。
西園寺ビルのコンクリートの階段を、白装束の美しく若い山姥は、風神の子風子(ふうこ)と雷神の子雷(らい)に支えられながら、ゆっくりと登って行くと、
「このソファーに寝かせて」
と言う西園寺・フィラ・梅の指示で、ゆっくりと横になった。
「じゃあ、僕はこの荷物を倉庫に戻してきます」
と山田伊織が言うと、
「あ。伊織君。その荷物は取り敢えず、この部屋の隅にでも置いておいて」
とフィラは言いながら、苦しそうに横になっている山姥娘の側にいった。
「え? でもここは事務所ですよ。いいんですか?」
と不思議そうに荷物を持ったまま立っている。
「倉庫は片付けて、この山姥ちゃんの部屋にすることにしたのよ。だから置くところがないのよ」
「あ。そうなんですね」
ともう一つの空いているソファーの上に荷物を下ろすと、部屋の隅に新聞紙を敷き始めた。
「気を使ってくれて悪いわね」
とフィラは言った
伊織は、また持てるだけの荷物をリノリウムの床に敷いた新聞紙の上に置いた。
「う~ん。それにしても」
とフィラは山姥の顔を覗き込む。
「タイプは違うけど、雷にも負けないくらいの美形ね」
と言いながら、無造作に美人山姥の胸を触った。
「ちょ! ちょっと何をやっているの! フィラさん!」
と雷は困惑したが、
「あ。やっぱり。この子、ブラジャーを付けてないじゃない。こんなにおっぱい大きいのに。ということは」
とミニスカートのように短い白装束の着物の裾にも手を突っ込んだ。
「ちょ! フィラさん!」
と雷の声に怒気が混じる。
「ふ~ん。腰巻きは巻いているけど、パン……」
と言いかけた時に、雷は赤面しながら慌てて、フィラの口を塞いだ。
「フィラさんもいちいち口に出して言わなくていいでしょう! それにちょっと、伊織さん! 男性はさっさと自室に戻っていて下さい。いつまでここに居るんですか!」
と強く注意する。
「あ。ごめん。そんなつもりはないんだよ。分かった」
と事務所から出ようとすると、
「伊織君はまだ、ここに居て頂戴」
とフィラが言うと振り返って、
「雷と風子。あなた達のパンティーを二枚ほど持ってきて。この子のお尻のサイズと合いそうなヤツをお願い」
と言うと、雷は顔を真っ赤にして、
「フィラさん! そんなことを伊織さんの前で言わないで!」
と怒ったが、
「ほら。自室から古いのでいいから持ってきて」
とフィラが急かすと、
「そんなの使い古しなんて持ってこれる訳ないじゃない! 新しいのを持ってくるわよ」
と雷は三階に繋がる階段を上っていった。
「風子も持ってきてよ」
とフィラが言うと、
「え~。私のを~。買ってもらったばかりなのに~」
と口を尖らせる。
すると、
「風子。あんた、ケチね。いいわよ、使い古しでも。黄色くなっているパンティーでもいいわよ」
とフィラが言うと、さすがの風子も赤面して、
「わっ! 私の下着は黄色くないもん! 待ってなさい!」
と言いながら、勢いよく三階に上がっていった。
「あ。風子! あなたは中学三年くらいの時にちょうどだったブラジャーも持ってきてくれるかな? サイズが一つ小さいやつ。多分、この子に合うと思う」
と言うと、
「分かったわよ!」
と言う声が聞こえた。
2025年3月21日
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また、まとめサイト等への引用をする場合は無断ではなく、こちらへお知らせ下さい。許可するかを判断致します。
「後、三十分くらいで着くよ。それにしても……」
と軽バンを運転している伊織は、後部座席に座っている雷と若い山姥(やまんば)を、バックミラーで確認する。
「まただわ。伊織さん、急いで停まって」
「分かった」
と車を停められるスペースがあったので、伊織はそこに急停車してハザードを点滅させた。
「ほら。しっかり」
と雷は後部右のドアから降りて、左のドアを開けると、雷との闘いで汚れた着物姿の若い山姥を、引っ張り出しながら支えた。
「ほら。吐きなさい。吐くと楽になるわ」
と背中を優しく擦っている。
すると美しい山姥の口から胃液が出てくる。
「そりゃ、苦しいわよね。胃の中の物をほとんど吐いちゃったものね」
と雷は心配そうに呟く。
「仕方がないね。生まれて初めて車に乗るのだから。酔って当たり前だよ」
と運転席から降りた伊織も心配そうである。
吐き終わると、肩で大きく息をした後に、山姥は右手人差し指を自らの口に入れると、指先から水流を発射して口の中を綺麗にした。
「こういう時は、その水の能力は便利ね」
と雷は感心している。
「……ご、ごめんなさい……。……わ、私……」
と闘いの時はあれほど健康そうな顔色が、今はまるで重病患者のようである。
「心配いらないわ。気分が良くなるまでここにいましょう」
と雷は言った。
「寒いだろ。僕の上着だけど、どうぞ」
と山姥に掛けてあげる。
「……あ……りが……とう」
「そんなの気にしないで」
そして、
「雷さんも風邪を引くよ。これを着てよ」
と雷の上着を手渡した。
「ありがとう。この調子だとここからニ時間以上かかってしまうかもね」
と雷は夜空を見あげた。
三月のこの夜は思いのほか冷えていた。
一方、フィラと風子は物置と化していた伊織の隣りの部屋を片付けていた。
片付けるといっても、その物置にしていた部屋のガラクタや大切な思い出の品々を、押入れやフリースペースなどに、分散して無理矢理押し込んでいく、と言った方が正しい。
「やっと物がなくなったわ……」
と息を切らせながらフィラは額の汗を拭う。
「そうだね。今、使っている物と古い物が混じってたよね」
と息も切れず、汗もかかずに平気な風子が言った。
「はあ。はあ。風子……」
「! 何?」
「あなた、疲れないの……? 私よりも物を運んでいたでしょう……?」
とフィラは頭に被っていた手拭いを使って、額と流れる汗を拭いた。
「え? あれくらい平気だけど」
とキョトンとしている。
フィラは肩で息をしながら、
「はあ。はあ。あなたの体力は化け物ね……」
とフィラが言うと、風子は口を尖らせて、
「化け物って! そういうフィラさんは歳じゃないの?」
とサラリと言ったが、
「な……! なんですって……!」
と言いながら、風子に近づくが、
「ほら。拭き掃除しないと、埃(ほこり)が凄いよ。私、バケツに水を汲んで、雑巾を持ってくる。フィラさん、ちょっと待ってて」
とそそくさとその場を立ち去った。
「風子の体力は尋常じゃないわね……。でも急がないと……。もうそろそろ着いちゃう……」
と言いながら、
「風子! 今、何時かしら? もう、一時回ったかな?」
と声をかけた。
「一時なんてとっくの前に過ぎてるわよ。もう、日曜日の二時前よ」
と風子。
「え! それはマズイわ。下手したら店の休憩室で寝てもらうことになるかも」
と慌てるフィラとは対照的に、
「別にいいんじゃない。日曜日でしょう。定休日じゃん」
と風子。
フィラは手を止めて少し考えて、
「まあ~。確かにそうなんだよね。でも部屋を整理して開けると決めたのだから、さあ! チャッチャと働いた」
と残っている荷物を運ぶ。
「え~」
と心の底から嫌そうな声が階段を登ってくる風子から聞こえた。
伊織と雷と若く美しい山姥を乗せた軽のワンボックスが古ぼけた西園寺ビルにやっと到着した。
時間は深夜五時前である。まだ、暗い。
「僕は車を駐車場に停めてくるから、雷さんは山姥さんを連れて行ってあげてよ。僕も急いて戻ってくるからさ」
と言い残して、カレー店の出入り口のある表に二人を降ろして、伊織は裏手の方に車を回した。
「どお? 山姥ちゃん、歩ける?」
と心配そうに雷は話しかける。
「……いいえ……。大丈夫じゃ、ありません……」
と辛そうである。
「二階に上がる階段を、この状態で登らせるのは難しいわね……」
と雷は呟く。
「取り敢えずは電話ね」
とスマートフォンでフィラに電話をした。
「もしもし。雷です。深夜にごめんなさい、というかもう朝ね。遅くなってごめんなさい」
するとフィラは電話に出た。
「ハアハア。おお~。おかえり、雷。ハアハア」
と言うフィラの声。
「あのう。私今、山姥さんと一緒にビルの前にいます」
「そう~。遅かったわね~。ハアハア」
と電話の向こうで、肩で息をしているように感じる。
「どうしたんですか? 大丈夫ですか?」
「大丈夫……。大丈夫……。急いで掃除をして疲れただけだから……。何とか部屋らしくなったから……」
と言うと、フィラの後ろから、
「雷ちゃん。早く上がって来なよ。伊織さんの隣りの部屋を空けたから、すぐにでも使えるよ~」
と風子の声が電話から聞こえた。
「風子。起きてたのね。お願いがあるんたけど」
と言うと、フィラは風子に変わった。
そして雷は風子に、ビル前の道路まで来て、山姥娘を雷と二人で支えて二階に運んで欲しい、と頼んだ。
「え? 伊織さんに頼めばいいんじゃないの?」
と風子は不思議そうに言ったが、
「駄目よ。山姥ちゃんは女の子なのよ。男の伊織さんに運ばせるのは。その……。セクハラよ! よくないわよ!」
と雷は訴えた。
すると、
「僕だとセクハラになるんだね……。よくない……。確かにそうかもね……」
といつの間にか雷の側に伊織が悲しそうに荷物を持って立っていた。
「え……。あ! あの……。その……」
と雷は慌ててしまい、うっかり電話を切ってしまった。
すると、ビルの方から人が降りてくる足音が聞こえた。
「おかえり。雷と伊織君」
とフィラ。
「二人共、お帰り」
と風子。
フィラは無造作に山姥娘に近づくと、
「どうしたの、この子? 顔色が悪いわね」
と訊くと、
「生まれて初めて車に乗ったみたいで、酔ってしまったみたいなんです」
と雷が答えると、
「そうなの? じゃあ、車の中はこの子の吐瀉物(げろ)で汚れまくりかしら?」
と眉をひそめたが、
「吐きそうになったら車を停めていたから、車内は汚れていないわよ。でも何度も停まったから、帰るのに時間がかかっちゃって」
と雷は言う。
「ほうほう、なるほど」
と言いながら、白装束の着物で座り込んでいる山姥の顔を覗き込んだ。
山姥娘は辛そうな顔をフィラの方に向けた。
「ほお~。顔色は悪いけど、かなりの美形ね。それに」
と露骨に着物の胸元を覗くと、
「おっぱいが大きそうね。まあ、風子ほどじゃないけど」
と何度も頷く。
「ちょっと、フィラさんたら」
と雷は苦笑し、伊織は困惑気味である。
「うちのカレー屋はサラリーマンや男子学生がメインターゲットだからね。美人でスタイルのいい子は大歓迎よ」
とここはドライな西園寺・フィラ・梅が出た、という感じである。
フィラは腰に手を当てて、
「伊織君は出張の荷物を取り敢えず二階の事務所に上げて頂戴。風子と雷は山姥ちゃんを二階の事務所のソファーまで、両側から付き添ってあげて」
と指示した。
西園寺ビルのコンクリートの階段を、白装束の美しく若い山姥は、風神の子風子(ふうこ)と雷神の子雷(らい)に支えられながら、ゆっくりと登って行くと、
「このソファーに寝かせて」
と言う西園寺・フィラ・梅の指示で、ゆっくりと横になった。
「じゃあ、僕はこの荷物を倉庫に戻してきます」
と山田伊織が言うと、
「あ。伊織君。その荷物は取り敢えず、この部屋の隅にでも置いておいて」
とフィラは言いながら、苦しそうに横になっている山姥娘の側にいった。
「え? でもここは事務所ですよ。いいんですか?」
と不思議そうに荷物を持ったまま立っている。
「倉庫は片付けて、この山姥ちゃんの部屋にすることにしたのよ。だから置くところがないのよ」
「あ。そうなんですね」
ともう一つの空いているソファーの上に荷物を下ろすと、部屋の隅に新聞紙を敷き始めた。
「気を使ってくれて悪いわね」
とフィラは言った
伊織は、また持てるだけの荷物をリノリウムの床に敷いた新聞紙の上に置いた。
「う~ん。それにしても」
とフィラは山姥の顔を覗き込む。
「タイプは違うけど、雷にも負けないくらいの美形ね」
と言いながら、無造作に美人山姥の胸を触った。
「ちょ! ちょっと何をやっているの! フィラさん!」
と雷は困惑したが、
「あ。やっぱり。この子、ブラジャーを付けてないじゃない。こんなにおっぱい大きいのに。ということは」
とミニスカートのように短い白装束の着物の裾にも手を突っ込んだ。
「ちょ! フィラさん!」
と雷の声に怒気が混じる。
「ふ~ん。腰巻きは巻いているけど、パン……」
と言いかけた時に、雷は赤面しながら慌てて、フィラの口を塞いだ。
「フィラさんもいちいち口に出して言わなくていいでしょう! それにちょっと、伊織さん! 男性はさっさと自室に戻っていて下さい。いつまでここに居るんですか!」
と強く注意する。
「あ。ごめん。そんなつもりはないんだよ。分かった」
と事務所から出ようとすると、
「伊織君はまだ、ここに居て頂戴」
とフィラが言うと振り返って、
「雷と風子。あなた達のパンティーを二枚ほど持ってきて。この子のお尻のサイズと合いそうなヤツをお願い」
と言うと、雷は顔を真っ赤にして、
「フィラさん! そんなことを伊織さんの前で言わないで!」
と怒ったが、
「ほら。自室から古いのでいいから持ってきて」
とフィラが急かすと、
「そんなの使い古しなんて持ってこれる訳ないじゃない! 新しいのを持ってくるわよ」
と雷は三階に繋がる階段を上っていった。
「風子も持ってきてよ」
とフィラが言うと、
「え~。私のを~。買ってもらったばかりなのに~」
と口を尖らせる。
すると、
「風子。あんた、ケチね。いいわよ、使い古しでも。黄色くなっているパンティーでもいいわよ」
とフィラが言うと、さすがの風子も赤面して、
「わっ! 私の下着は黄色くないもん! 待ってなさい!」
と言いながら、勢いよく三階に上がっていった。
「あ。風子! あなたは中学三年くらいの時にちょうどだったブラジャーも持ってきてくれるかな? サイズが一つ小さいやつ。多分、この子に合うと思う」
と言うと、
「分かったわよ!」
と言う声が聞こえた。
2025年3月21日
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