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【6-1】風子「雷ったら、結局私とフィラさんと山姥ちゃんの四人でお風呂に入ったのよね」
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──【6-1】──
雷と風子が女性の下着を持ってくると、
「じゃあ。雷ちゃんと伊織君はゆっくり休んで頂戴。詳しいことは明日に聞くから。それとシャワーを浴びるなら早目にお願いね」
とフィラは言う。
「僕はその……。寝かせてもらいます」
と伊織が眠そうに言うと、
「長時間の運転、ご苦労様。しっかり寝てね」
とフィラはウィングした。
「私はシャワーを浴びてから休ませてもらうわ」
と雷。
「どうぞ。ただし、悪いけど早目にね」
とフィラが言うと、
「じゃあ。今からすぐに入るわ」
と雷は自室に着替えを取りにいった。
「ということで。私は自室で寝ることにするわね」
と風子が背を向けると、
「待たんかい!」
とフィラは風子のシャツを摘んだ。
「え? どうしてよ?」
と振り返ると、
「風子には悪いけど、山姥ちゃんをお風呂に入れてあげて欲しいのよ」
と言うと、
「え……? え~!」
と驚く風子。
「私も一緒に入るからさ」
とフィラ。
「え~!」
とより嫌そうな顔を風子はした。
「何よ。私と入るのは不満な訳?」
と腰に手を当てて、風子を見上げる。
「だってさ~」
「何よ?」
「フィラさん、変なところを触るでしょ」
と顔を背けて少し頬を赤らませて言った。
フィラはわざとらしく、大きくため息を付くと、
「分かったわよ。悪かったわよ。私はほんのスキンシップのつもりだったけど、そんなに嫌ならもう触ったりはしないわよ」
とフィラは言った。
「ホントに?」
「本当に」
すると風子は、話し声で目が覚めた山姥娘に、
「山姥ちゃん、山姥ちゃん。一緒にお風呂へ入ろうか?」
と起きたばかりで横になっている山姥娘に言った。
「えっ……。あ。はい……」
と少しは具合が良くなっている様子だった。
するとフィラが、
「ただし、雷ちゃんのシャワーが終わってからね」
と言いながら、風呂場へ向かった。
「今のうちにササッとお風呂の準備をしてくるわ」
と言った。
下着とバスタオルと専用の洗顔料を持って、シャワーの用意をした雷が、風呂掃除をしているフィラと鉢合わせした。
「雷ちゃん、どうする? 三十分くらいでお風呂の準備が出来るけど?」
と言うと、
「フィラさん、ごめんなさい。実は凄く眠くて疲れているの……。今は少しでも早く休みたいわ……」
と雷は申し訳なさそうに言うと、
「分かった。大丈夫。先にシャワーを浴びてゆっくり休んでいいから」
とフィラは言い、デッキブラシを持って風呂場から出て、脱衣所の隅にそれを置いた。
「雷はいつも頑張り過ぎなところがあるからね。三人の中で一番体力がないのは分かっている。とは言っても私と風子が異常なんだけどね」
と言いながら、フィラは雷の背中をポンポンと叩くと、
「さっさと入っちゃいなさい」
と言った。
「ありがとう。フィラさんも日帰りで岡山から帰ってきたばかりで、倉庫の荷物整理をしていたのに大丈夫なの?」
と一度、服を脱ごうとしたがやめた。
「私は体力は普通だけど、少し休んだら復活するからね。まあ、これも吸血鬼(バンパイヤ)の能力だから」
「そうよね。正直、羨ましいわ」
「何を言っているの。風子の底なしの体力に比べたら私なんて大したことないわ」
とフィラ。
「風子の体力かあ~。でもさ」
「ん? 何?」
とフィラ。
雷は少し声のトーンが下がり、
「そんな風子なのに、あの治癒能力を使うと、立てないくらいにクタクタになってしまうものね。あれは風神だけの力だけど、私にも欲しかったわ……」
と雷は呟くように言った。
「何、言ってんの! 雷! あなただって十分に凄いわよ! なんせ、あの若い山姥ちゃんを服従させて、連れてきちゃうんだから。勉強もよく出来るし、私の中では自慢の娘なんだから」
とフィラはまるで自分のことのように、誇らしげに言った。
「……ありがとう、フィラさん……。じゃあ、シャワー、浴びてくるね」
と服を脱ごうとすると、
「悪いんだけど、うちの風呂は大きいから、一緒に入らない? 今日は雷とお風呂で色々話したい気分だわ」
とフィラが言うと、
「……分かったわ」
と雷は返した。
「ん……。今、何時だ……?」
と伊織は寝ぼけ眼(まなこ)で時計を見ると、十二時前だった。
「いけない! お店の手伝い!」
と飛び起きたが、
「あ……。よく考えたら今日は日曜日で休みだったな」
と頭を掻いた。
寝巻き代わりのスウェットから、昨日着ていた服に着替える。今の伊織にはこの二着の服しかなかった。
「いくらもらえるか分からないけど、給料をもらったら服を買おうかな……」
と独り言を言いながら階段に向かう。顔を洗おうと二階の洗面所のある風呂場を目指す。
するとそこには、赤い短パンに白のTシャツを着た、色白のスラリとした美しい少女が洗面所に立っていた。
「えっ! きっ、君は!」
と顔を見ると、
「お早うございます」
と微笑んだ。
「えっと……。お早うございます」
と伊織は戸惑いながら返すと、
「よしよし。いいかい。うちでは必ず挨拶をすること。『お早うございます』『こんにちは』『こんばんは』『頂きます』『ご馳走様でした』そして……」
とフィラがヒョッコリと現れた。
「『フィラさん、いつもありがとうございます』よ」
と洗面台に立つ美しい娘に言った。
「はいっ! フィラさん! いつもありがとうございます!」
と元気よく言った。
「山姥ちゃん。その『ありがとうございます』は特に言わなくていいわよ」
と現れたのは風子だった。
「ちょっと。あなたは私に感謝していないってことかしら~?」
とフィラは素早く歩いて、風子の身体に密着して顔を見上げた。
「その意見には私も風子に賛成よ」
とフィラの後ろから雷も現れた。
「あ。お早うございます。フィラさん。風子さん。雷さん」
と伊織は挨拶をした。
「お早う、伊織さん。ところでフィラさん。『フィラさん、いつもありがとうございます』を強要するなんて、いつからこのビルは宗教団体みたいになったんですか?」
と雷は責めるように言った。
「いや……。そんなつもりは……」
「そうそう。そうなのよ。私もそう思った」
と風子は雷に合わせるように言う。
フィラは分が悪いと思ったのか、
「伊織君はどう思う?」
と訊いた。
「えっと……。今の僕はフィラさんにお世話になりっぱなしだから、『フィラさん、いつもありがとうございます』という気持ちはあります」
と言うと、
「うんうん。やっぱり私が見込んだ通り、伊織君はいい子ね」
と一八〇センチある伊織に、一四〇センチのフィラが向かい合わせになって、伊織を見上げながら腕を組み、何度も頷いている。
「ただ……」
と伊織。
「? ただ? なに?」
とフィラ。
「そういうのは自分から言って強要することではない気がします」
と言ったので、風子と雷は吹き出してしまった。
顔を真っ赤にしながら、フィラは頬を膨らませた。
「フィラさん、いつもありがとうございます!」
と山姥娘は一層大きな声で言ったが、
「あ~。もう! 分かったわよ。挨拶だけでいいわよ」
とフィラは機嫌が悪そうに一階へ降りるための階段のところに行くと、
「今からお昼ご飯にするから全員集合よ。あ。それと伊織君と山姥ちゃんは朝食になるけどね」
と言いながら、軽快に階段を降りて行った。
「え? 雷さんは朝ご飯を食べたのかい?」
と伊織が訊くと、
「ええ。その代わり朝食を食べたらすぐにまた、寝てしまったけどね」
と雷が言うと、
「ほら。身支度が済んだら、一緒にご飯よ。二人共、行きましょう」
と雷は山姥娘の手を引っ張った。
「はい。お姉さん」
と山姥娘は尊敬の眼差しを雷に向けていた。
二人は仲良く手を繋いで階段を降りていく。
伊織も二人に続いた。
「雷ったら、結局私とフィラさんと山姥ちゃんの四人でお風呂に入ったのよね」
と風子はいつの間にか伊織の後ろにいて、階段を降りながら言った。
二人とも身長が一八〇センチあるので、昭和に建てられた西園寺ビルだと所々、頭が天井に当たりそうである。
「ふ~ん。そうなんですね」
と伊織が言うと、
「伊織さん、もしかして想像した?」
と風子は顔を近づけて言った。
「え! いや、してないですよ!」
と焦る伊織を見て、
「そうなの? ふ~ん」
と言うと、全員階段を降りて道路に出た。
風子は伊織を駆け足で追い越すと、後ろで手を組んでくるりと回り、
「さ。早く行きましょう。もう、カレーはないからフィラさんの和食の食事が待ってるわよ」
と伊織を置いて、軽快に店の中に入っていった。
2025年4月21日
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雷と風子が女性の下着を持ってくると、
「じゃあ。雷ちゃんと伊織君はゆっくり休んで頂戴。詳しいことは明日に聞くから。それとシャワーを浴びるなら早目にお願いね」
とフィラは言う。
「僕はその……。寝かせてもらいます」
と伊織が眠そうに言うと、
「長時間の運転、ご苦労様。しっかり寝てね」
とフィラはウィングした。
「私はシャワーを浴びてから休ませてもらうわ」
と雷。
「どうぞ。ただし、悪いけど早目にね」
とフィラが言うと、
「じゃあ。今からすぐに入るわ」
と雷は自室に着替えを取りにいった。
「ということで。私は自室で寝ることにするわね」
と風子が背を向けると、
「待たんかい!」
とフィラは風子のシャツを摘んだ。
「え? どうしてよ?」
と振り返ると、
「風子には悪いけど、山姥ちゃんをお風呂に入れてあげて欲しいのよ」
と言うと、
「え……? え~!」
と驚く風子。
「私も一緒に入るからさ」
とフィラ。
「え~!」
とより嫌そうな顔を風子はした。
「何よ。私と入るのは不満な訳?」
と腰に手を当てて、風子を見上げる。
「だってさ~」
「何よ?」
「フィラさん、変なところを触るでしょ」
と顔を背けて少し頬を赤らませて言った。
フィラはわざとらしく、大きくため息を付くと、
「分かったわよ。悪かったわよ。私はほんのスキンシップのつもりだったけど、そんなに嫌ならもう触ったりはしないわよ」
とフィラは言った。
「ホントに?」
「本当に」
すると風子は、話し声で目が覚めた山姥娘に、
「山姥ちゃん、山姥ちゃん。一緒にお風呂へ入ろうか?」
と起きたばかりで横になっている山姥娘に言った。
「えっ……。あ。はい……」
と少しは具合が良くなっている様子だった。
するとフィラが、
「ただし、雷ちゃんのシャワーが終わってからね」
と言いながら、風呂場へ向かった。
「今のうちにササッとお風呂の準備をしてくるわ」
と言った。
下着とバスタオルと専用の洗顔料を持って、シャワーの用意をした雷が、風呂掃除をしているフィラと鉢合わせした。
「雷ちゃん、どうする? 三十分くらいでお風呂の準備が出来るけど?」
と言うと、
「フィラさん、ごめんなさい。実は凄く眠くて疲れているの……。今は少しでも早く休みたいわ……」
と雷は申し訳なさそうに言うと、
「分かった。大丈夫。先にシャワーを浴びてゆっくり休んでいいから」
とフィラは言い、デッキブラシを持って風呂場から出て、脱衣所の隅にそれを置いた。
「雷はいつも頑張り過ぎなところがあるからね。三人の中で一番体力がないのは分かっている。とは言っても私と風子が異常なんだけどね」
と言いながら、フィラは雷の背中をポンポンと叩くと、
「さっさと入っちゃいなさい」
と言った。
「ありがとう。フィラさんも日帰りで岡山から帰ってきたばかりで、倉庫の荷物整理をしていたのに大丈夫なの?」
と一度、服を脱ごうとしたがやめた。
「私は体力は普通だけど、少し休んだら復活するからね。まあ、これも吸血鬼(バンパイヤ)の能力だから」
「そうよね。正直、羨ましいわ」
「何を言っているの。風子の底なしの体力に比べたら私なんて大したことないわ」
とフィラ。
「風子の体力かあ~。でもさ」
「ん? 何?」
とフィラ。
雷は少し声のトーンが下がり、
「そんな風子なのに、あの治癒能力を使うと、立てないくらいにクタクタになってしまうものね。あれは風神だけの力だけど、私にも欲しかったわ……」
と雷は呟くように言った。
「何、言ってんの! 雷! あなただって十分に凄いわよ! なんせ、あの若い山姥ちゃんを服従させて、連れてきちゃうんだから。勉強もよく出来るし、私の中では自慢の娘なんだから」
とフィラはまるで自分のことのように、誇らしげに言った。
「……ありがとう、フィラさん……。じゃあ、シャワー、浴びてくるね」
と服を脱ごうとすると、
「悪いんだけど、うちの風呂は大きいから、一緒に入らない? 今日は雷とお風呂で色々話したい気分だわ」
とフィラが言うと、
「……分かったわ」
と雷は返した。
「ん……。今、何時だ……?」
と伊織は寝ぼけ眼(まなこ)で時計を見ると、十二時前だった。
「いけない! お店の手伝い!」
と飛び起きたが、
「あ……。よく考えたら今日は日曜日で休みだったな」
と頭を掻いた。
寝巻き代わりのスウェットから、昨日着ていた服に着替える。今の伊織にはこの二着の服しかなかった。
「いくらもらえるか分からないけど、給料をもらったら服を買おうかな……」
と独り言を言いながら階段に向かう。顔を洗おうと二階の洗面所のある風呂場を目指す。
するとそこには、赤い短パンに白のTシャツを着た、色白のスラリとした美しい少女が洗面所に立っていた。
「えっ! きっ、君は!」
と顔を見ると、
「お早うございます」
と微笑んだ。
「えっと……。お早うございます」
と伊織は戸惑いながら返すと、
「よしよし。いいかい。うちでは必ず挨拶をすること。『お早うございます』『こんにちは』『こんばんは』『頂きます』『ご馳走様でした』そして……」
とフィラがヒョッコリと現れた。
「『フィラさん、いつもありがとうございます』よ」
と洗面台に立つ美しい娘に言った。
「はいっ! フィラさん! いつもありがとうございます!」
と元気よく言った。
「山姥ちゃん。その『ありがとうございます』は特に言わなくていいわよ」
と現れたのは風子だった。
「ちょっと。あなたは私に感謝していないってことかしら~?」
とフィラは素早く歩いて、風子の身体に密着して顔を見上げた。
「その意見には私も風子に賛成よ」
とフィラの後ろから雷も現れた。
「あ。お早うございます。フィラさん。風子さん。雷さん」
と伊織は挨拶をした。
「お早う、伊織さん。ところでフィラさん。『フィラさん、いつもありがとうございます』を強要するなんて、いつからこのビルは宗教団体みたいになったんですか?」
と雷は責めるように言った。
「いや……。そんなつもりは……」
「そうそう。そうなのよ。私もそう思った」
と風子は雷に合わせるように言う。
フィラは分が悪いと思ったのか、
「伊織君はどう思う?」
と訊いた。
「えっと……。今の僕はフィラさんにお世話になりっぱなしだから、『フィラさん、いつもありがとうございます』という気持ちはあります」
と言うと、
「うんうん。やっぱり私が見込んだ通り、伊織君はいい子ね」
と一八〇センチある伊織に、一四〇センチのフィラが向かい合わせになって、伊織を見上げながら腕を組み、何度も頷いている。
「ただ……」
と伊織。
「? ただ? なに?」
とフィラ。
「そういうのは自分から言って強要することではない気がします」
と言ったので、風子と雷は吹き出してしまった。
顔を真っ赤にしながら、フィラは頬を膨らませた。
「フィラさん、いつもありがとうございます!」
と山姥娘は一層大きな声で言ったが、
「あ~。もう! 分かったわよ。挨拶だけでいいわよ」
とフィラは機嫌が悪そうに一階へ降りるための階段のところに行くと、
「今からお昼ご飯にするから全員集合よ。あ。それと伊織君と山姥ちゃんは朝食になるけどね」
と言いながら、軽快に階段を降りて行った。
「え? 雷さんは朝ご飯を食べたのかい?」
と伊織が訊くと、
「ええ。その代わり朝食を食べたらすぐにまた、寝てしまったけどね」
と雷が言うと、
「ほら。身支度が済んだら、一緒にご飯よ。二人共、行きましょう」
と雷は山姥娘の手を引っ張った。
「はい。お姉さん」
と山姥娘は尊敬の眼差しを雷に向けていた。
二人は仲良く手を繋いで階段を降りていく。
伊織も二人に続いた。
「雷ったら、結局私とフィラさんと山姥ちゃんの四人でお風呂に入ったのよね」
と風子はいつの間にか伊織の後ろにいて、階段を降りながら言った。
二人とも身長が一八〇センチあるので、昭和に建てられた西園寺ビルだと所々、頭が天井に当たりそうである。
「ふ~ん。そうなんですね」
と伊織が言うと、
「伊織さん、もしかして想像した?」
と風子は顔を近づけて言った。
「え! いや、してないですよ!」
と焦る伊織を見て、
「そうなの? ふ~ん」
と言うと、全員階段を降りて道路に出た。
風子は伊織を駆け足で追い越すと、後ろで手を組んでくるりと回り、
「さ。早く行きましょう。もう、カレーはないからフィラさんの和食の食事が待ってるわよ」
と伊織を置いて、軽快に店の中に入っていった。
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