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【1】火葬場の天井。
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──【1】──
皆さん、こんばんは。
東岡忠良(あずまおかただよし)です。
僕は幼い頃から二十代後半まで、三日に一度は金縛りにあいました。
僕は基本的に霊というのを信じない方でしたので、金縛りもただ自分自身が疲れているだけだろう、と思うようにしていました。
ですが、数々の霊体験を実際に経験していくうちに、
「ああ。霊というのは存在するのかもしれない」
そう思うようになりました。
よい機会なので実際にあった話を、ここに書いていきたいと思います。
どうか、お付き合い下さい。
──【1】──
火葬場の天井。
これは僕が記憶している体験で、最も古いつまり、最も幼かった頃の体験になります。
親戚の伯父さんが亡くなったという知らせが入り、僕ら家族は新幹線に乗って◯◯県に行きました。
駅からタクシーで伯父さんの家に着くと、広い平屋の家屋は叔父さんのご家族と親戚一同そして近所の方々により、粛々と葬儀の準備がされていました。
お坊さんが来られてお経を上げると、車で火葬場へ行くことになりました。
僕ら家族も車に乗ってその火葬場に行くことになり、曲がりくねった山道を登って行くと、鉄筋の立派な建物がありました。
僕ら家族は車から降りて、お坊さんによる最後の別れのために、伯父の遺体が入った棺の前に、一同が参列した時でした。
僕はふと、建物の天井を見上げると、真っ白なドーム型の天井に、無数の黒い手形や爪で引っ掻いたような傷などが付いていることに気づきました。
その手形の数の多さとはっきりと見えていることに、それが変だとか、おかしなこととは考えられないほど当たり前に感じたのです。
周りの大人達や子供達も特に気にする様子もありません。
火葬場には初めて来たこともあり、
「もしかして、火葬場というのは天井に無数の手形があるのは、ごく普通のことなんだろうな」
と思ったのです。
お坊さんによるお経が終わると、棺は火葬口の奥に入れられました。
伯父の遺体が焼ける終わるまで、集まった人達がくつろげる別室に案内されたのですが、僕はやっぱり手形でいっぱいの天井が不思議で仕方がありませんでした。
そして僕は母に、
「どうして天井にいっぱい手形があるの?」
と訊いたのです。
すると母はまともに相手をしてくれません。
「あんたは何を言っているの?」
と言われ、僕は、
「もしかして、訊いてはいけないことだったのかな?」
と思い始めたのですが、天井を見上げるとやっぱりはっきりと無数の黒く煤で付けたような手形があるのです。
僕は親戚の中でも特に優しい伯母さんを見つけて言いました。
「ねえ、おばちゃん。この上の天井って何でこんなにいっぱい手形が付いているの?」
と。
すると伯母は少し困ったようでしたが、
「忠良ちゃん。ちょっと待ってね」
とこの火葬場の女性職員を連れてきてくれました。
すると女性職員は僕に、
「ボク、どうしたの?」
と話しかけてくれました。
僕は、
「ねえ。この天井にはなんでこんなにたくさんの手形や引っ掻いたキズがあるの?」
と質問しました。
すると女性職員は笑顔で、
「坊や。ここの建物はまだ新しいから、天井は真っ白でしょう」
と言うのです。
「えっ? でもほら。あそこにも、あそこにも黒い手形やキズがあるよ。ほら。あそこにも」
と僕は訴えるかのように、女性職員に言いました。
すると伯母が、
「忠良ちゃん。手形なんてないでしょう。あまり人騒がせなことを言っちゃダメよ」
と言われたのです。
それを聞いた女性職員も微笑んでいます。
僕は正直、ショックでした。
僕の言うことを誰も信じてくれない。
いや、違う。
この手形や傷は『僕にしか見えていない』んだと、その時に分かったのです。
ただ、最後にその女性職員は言いました。
「ただね。時々、いらっしゃるんですよ。この建物の天井に手形がいっぱいあるって言う方が……」
2024年2月18日
※当サイトの内容、テキスト等の無断転載・無断使用を固く禁じます。
また、まとめサイト等への引用をする場合は無断ではなく、こちらへお知らせ下さい。許可するかを判断致します。
皆さん、こんばんは。
東岡忠良(あずまおかただよし)です。
僕は幼い頃から二十代後半まで、三日に一度は金縛りにあいました。
僕は基本的に霊というのを信じない方でしたので、金縛りもただ自分自身が疲れているだけだろう、と思うようにしていました。
ですが、数々の霊体験を実際に経験していくうちに、
「ああ。霊というのは存在するのかもしれない」
そう思うようになりました。
よい機会なので実際にあった話を、ここに書いていきたいと思います。
どうか、お付き合い下さい。
──【1】──
火葬場の天井。
これは僕が記憶している体験で、最も古いつまり、最も幼かった頃の体験になります。
親戚の伯父さんが亡くなったという知らせが入り、僕ら家族は新幹線に乗って◯◯県に行きました。
駅からタクシーで伯父さんの家に着くと、広い平屋の家屋は叔父さんのご家族と親戚一同そして近所の方々により、粛々と葬儀の準備がされていました。
お坊さんが来られてお経を上げると、車で火葬場へ行くことになりました。
僕ら家族も車に乗ってその火葬場に行くことになり、曲がりくねった山道を登って行くと、鉄筋の立派な建物がありました。
僕ら家族は車から降りて、お坊さんによる最後の別れのために、伯父の遺体が入った棺の前に、一同が参列した時でした。
僕はふと、建物の天井を見上げると、真っ白なドーム型の天井に、無数の黒い手形や爪で引っ掻いたような傷などが付いていることに気づきました。
その手形の数の多さとはっきりと見えていることに、それが変だとか、おかしなこととは考えられないほど当たり前に感じたのです。
周りの大人達や子供達も特に気にする様子もありません。
火葬場には初めて来たこともあり、
「もしかして、火葬場というのは天井に無数の手形があるのは、ごく普通のことなんだろうな」
と思ったのです。
お坊さんによるお経が終わると、棺は火葬口の奥に入れられました。
伯父の遺体が焼ける終わるまで、集まった人達がくつろげる別室に案内されたのですが、僕はやっぱり手形でいっぱいの天井が不思議で仕方がありませんでした。
そして僕は母に、
「どうして天井にいっぱい手形があるの?」
と訊いたのです。
すると母はまともに相手をしてくれません。
「あんたは何を言っているの?」
と言われ、僕は、
「もしかして、訊いてはいけないことだったのかな?」
と思い始めたのですが、天井を見上げるとやっぱりはっきりと無数の黒く煤で付けたような手形があるのです。
僕は親戚の中でも特に優しい伯母さんを見つけて言いました。
「ねえ、おばちゃん。この上の天井って何でこんなにいっぱい手形が付いているの?」
と。
すると伯母は少し困ったようでしたが、
「忠良ちゃん。ちょっと待ってね」
とこの火葬場の女性職員を連れてきてくれました。
すると女性職員は僕に、
「ボク、どうしたの?」
と話しかけてくれました。
僕は、
「ねえ。この天井にはなんでこんなにたくさんの手形や引っ掻いたキズがあるの?」
と質問しました。
すると女性職員は笑顔で、
「坊や。ここの建物はまだ新しいから、天井は真っ白でしょう」
と言うのです。
「えっ? でもほら。あそこにも、あそこにも黒い手形やキズがあるよ。ほら。あそこにも」
と僕は訴えるかのように、女性職員に言いました。
すると伯母が、
「忠良ちゃん。手形なんてないでしょう。あまり人騒がせなことを言っちゃダメよ」
と言われたのです。
それを聞いた女性職員も微笑んでいます。
僕は正直、ショックでした。
僕の言うことを誰も信じてくれない。
いや、違う。
この手形や傷は『僕にしか見えていない』んだと、その時に分かったのです。
ただ、最後にその女性職員は言いました。
「ただね。時々、いらっしゃるんですよ。この建物の天井に手形がいっぱいあるって言う方が……」
2024年2月18日
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