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序章
第一話。4-9
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「お願いします。もし字が書けないようなら記号でも構いませんので……」
「ん、大丈夫。ネイアに教わったから……」
わざわざ裏返し、署名させるのは後日、書類整理に際して不要部分を削除するためであろう。
ネイアはそう察したが、口を挟むことはしなかった。
ペンを受け取り、署名するアベルの動作に遅滞や躊躇いはなく、その書き筋は特に目立った奇抜さもなく、自然で滑らかなものだった。
「ふ、ふ~ん。随分と書き慣れてるじゃない、私が教えた通りには、一応。勉強、サボってはないみたいね」
まだ少し頬の辺りにうっすら朱色を残したまま、少し不機嫌な表情でその様子を眺めながら、ネイアはあることに気がついた。
子供の頃、ネイアが教えたのはアベルの綴りに、孤児院の名前にもなっているシルメニアをファミリーネームとして加えたもの。
今、目にしている文字列は明らかに長過ぎた。
「はい、書けたよ」
「……ありがとうございます」
短いやり取りをして、アルベルトは書き上がった書類を手に取り確認をするまでの間、そのごく僅かな時間で、ネイアは辛うじて末尾に「影」を意味する単語の一部を見て取ったが、全体でどのような名、意味を成すのかまでは分からなかった。
「ネイア、ネイア。この【紙】ってさ、すごく書きやすいんだねえ。羽根ペンも使いやすくて僕、びっくりしちゃった」
「ん、大丈夫。ネイアに教わったから……」
わざわざ裏返し、署名させるのは後日、書類整理に際して不要部分を削除するためであろう。
ネイアはそう察したが、口を挟むことはしなかった。
ペンを受け取り、署名するアベルの動作に遅滞や躊躇いはなく、その書き筋は特に目立った奇抜さもなく、自然で滑らかなものだった。
「ふ、ふ~ん。随分と書き慣れてるじゃない、私が教えた通りには、一応。勉強、サボってはないみたいね」
まだ少し頬の辺りにうっすら朱色を残したまま、少し不機嫌な表情でその様子を眺めながら、ネイアはあることに気がついた。
子供の頃、ネイアが教えたのはアベルの綴りに、孤児院の名前にもなっているシルメニアをファミリーネームとして加えたもの。
今、目にしている文字列は明らかに長過ぎた。
「はい、書けたよ」
「……ありがとうございます」
短いやり取りをして、アルベルトは書き上がった書類を手に取り確認をするまでの間、そのごく僅かな時間で、ネイアは辛うじて末尾に「影」を意味する単語の一部を見て取ったが、全体でどのような名、意味を成すのかまでは分からなかった。
「ネイア、ネイア。この【紙】ってさ、すごく書きやすいんだねえ。羽根ペンも使いやすくて僕、びっくりしちゃった」
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