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16話
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「寝ている男を襲うだなんて、サキュバスらしくなってきたわね」
ご先祖様はどこか機嫌良さそうにそう言った。何度も経験したから分かる。これは夢の中だ。俺はむくりと起き上がり、そして「やっちまったーーーー!!!」と思いっきり叫んだ。
「ど、どうしよう! 友だちのこと襲っちゃった! そんなつもりなかったのに……体が勝手に! あれ? 薬飲んでもらってない? うわー! 終わった!!」
薬は持っていたんだ。でも、飲ませることを忘れてしまった。ということは、哲くんは今回のことをすべて現実だと分かっているということか。もう終わりじゃないか。俺が唸ったり叫んだりしているのをしばらく観察したご先祖様は、俺が静かになったのを見計らって、「落ち着いたかしら?」と話しかけてきた。
「すみません、取り乱してしまって。でも、薬はどうしよう……」
「大丈夫よ。きっとオトモダチは、夢だと思ってるわ」
ご先祖様は、もるで問題じゃないみたいな口ぶりで話した。そもそもサキュバスは、夜に寝ている男を襲うものだ。その理由は、まずは楽だということ。そして次に、行為自体を夢だと思わせやすいことがある。ご先祖様が俺に薬を作って渡してくれたのは、俺が今まで昼間の学校の中で誰かを襲っていて、夢と誤解させるも何もなく、それを心配したかららしい。確かにサキュバスと言えば寝ているときっていうイメージがあるなと思った。
「寝ていてふと目が覚めたら、美女が自分の上で善がってましたなんてこと、起きたときは夢だったと思うものよ。まあ、暗示をかけたりサキュバスの能力を使ったりすれば、完璧にごまかすことはできるんだけどね」
サキュバスの常識を今さら知った俺は、次に哲くんの件を考えた。俺がなにかサキュバスの能力を獲得していて、無意識のうちに使っていた可能性はあるかもしれないが、それは都合がよすぎるだろう。今は、哲くんが勝手に夢だったと誤解してくれることに賭けるしかない。俺はため息を吐いた。
「とりあえず、普通に接した方がいいですよね。いつも通りな感じで。でも、俺態度に出ちゃいそうだな……ちょっとさっきの記憶が鮮明すぎる」
「じゃあ、さっさと帰っちゃえば? 朝、オトモダチが起きる前に帰っちゃうの。心の整理がつかない前にやり取りをして、『こいつ変だな、まさかあの夢は現実なのか』って気づかれるよりはいいわ。で、次に会ったときに普通に接すればいいわ。あれは夢だったのかって思わせたもの勝ちよ」
確かに、変に話してボロを出すよりは良い気がする。朝、早めに起きて適当に理由を作り、哲くんが起きる前に帰ってしまおう。次に会うとしたら、月曜日か。それまでには、いろいろと整理をつけなくては。
「……相談に乗ってくれて、ありがとございました。なんとなく、どうにかできそうな気がしてました」
まあ、夢かどうか勘違いしてくれるかという賭けではあるが、なんとかなるだろう。俺は変なところで楽観的だった。ご先祖様は満足気に頷いている。
(そういえば、お礼伝えてない)
しばらくして世界がぼやけ始めた。俺の目が覚めようとしているんだろう。そう思ったとき、勉強を教えてもらったお礼を、俺はまだ哲くんに伝えていないことに気づいた。
*
月曜、朝。俺は登校した靴箱の前で、哲くんとばったり会ってしまった。
「お、おはよう哲くん」
目線はしっかりと合った。けれども哲くんは、さっと顔を逸らして、さっさと先に行こうとした。俺は慌てて彼を止める。これはどっちだ。夜のことを夢だと思っているのか、現実だと思っているのか。俺は何も知らないふりをして接しなければいけない。俺がどう切り出せばいいか迷っていると、哲くんは、「悪い」と呟いた。
「先行っていいか」
「え、あ」
哲くんにしては、冷たい言い方だった。いや、話し方はいつもと変わらないんだけど、空気と言うか雰囲気が俺を拒絶してる感じ。そっか、夜のことを夢だと思ってるにしろ、現実だと想ってるにしろ、哲くんにとって俺とセックスしたことは記憶として残ってるもんな。確かに、こんな態度にもなるよね。哲くんが夜のことを夢だと勘違いしてくれたら、全部が丸く収まるはずだ。そう勝手に考えていた俺は、それが間違いであることに今気づいた。
「……待って、2つだけ言わせて」
同性とセックスする夢なんて、普通は不快に思うよね。夢の中でセックスの相手だった俺のことも気持ち悪くなったのかな。もう哲くんは俺のことを嫌いになってたら、そうなってたらもう、これまでみたいな関わり方はできなくなるわけで。俺は自分の手をぎゅっと握った。
「まずは、日曜日勝手に帰ってごめん。どうしても早く帰らなくちゃいけなくて」
哲くんは、足を止めて俺の話を聞いてくれるようだった。良かった、ここで無視されたら流石に傷ついた。俺は「後ね、」と続ける。
「勉強教えてくれてありがとう! 俺の分からなかったところ、哲くんは丁寧に教えてくれて、すごく助かった。勉強会の後に言えれば良かったんだけどタイミングがなくて、日曜は俺が早く帰っちゃったから……うん、伝えたかったのはこの2つ」
俺は「ごめんね、引き留めちゃって」と哲くんに謝った。下駄箱から靴を取り、履き替える。言いたいことは全て伝えた。身の振り方を考える、と言うと少し違うかもしれないけど、これからはもっと考えて行動しよう。俺はそう思った。
「俺も……」
声が聞こえ、顔を上げると、哲くんはまだそこにいた。彼は複雑な表情を浮かべている。
「俺も、勉強会楽しかった。また……分からないとこあれば、教えるから」
そう言うと、哲くんは先に行ってしまった。俺は不意のことに、驚いてポカンとしてしまう。
(もしかして、嫌われてはないのかな……?)
だとしたら嬉しい。俺はほっとした気持ちでリュクを持ち直し、教室へと向かった。
ご先祖様はどこか機嫌良さそうにそう言った。何度も経験したから分かる。これは夢の中だ。俺はむくりと起き上がり、そして「やっちまったーーーー!!!」と思いっきり叫んだ。
「ど、どうしよう! 友だちのこと襲っちゃった! そんなつもりなかったのに……体が勝手に! あれ? 薬飲んでもらってない? うわー! 終わった!!」
薬は持っていたんだ。でも、飲ませることを忘れてしまった。ということは、哲くんは今回のことをすべて現実だと分かっているということか。もう終わりじゃないか。俺が唸ったり叫んだりしているのをしばらく観察したご先祖様は、俺が静かになったのを見計らって、「落ち着いたかしら?」と話しかけてきた。
「すみません、取り乱してしまって。でも、薬はどうしよう……」
「大丈夫よ。きっとオトモダチは、夢だと思ってるわ」
ご先祖様は、もるで問題じゃないみたいな口ぶりで話した。そもそもサキュバスは、夜に寝ている男を襲うものだ。その理由は、まずは楽だということ。そして次に、行為自体を夢だと思わせやすいことがある。ご先祖様が俺に薬を作って渡してくれたのは、俺が今まで昼間の学校の中で誰かを襲っていて、夢と誤解させるも何もなく、それを心配したかららしい。確かにサキュバスと言えば寝ているときっていうイメージがあるなと思った。
「寝ていてふと目が覚めたら、美女が自分の上で善がってましたなんてこと、起きたときは夢だったと思うものよ。まあ、暗示をかけたりサキュバスの能力を使ったりすれば、完璧にごまかすことはできるんだけどね」
サキュバスの常識を今さら知った俺は、次に哲くんの件を考えた。俺がなにかサキュバスの能力を獲得していて、無意識のうちに使っていた可能性はあるかもしれないが、それは都合がよすぎるだろう。今は、哲くんが勝手に夢だったと誤解してくれることに賭けるしかない。俺はため息を吐いた。
「とりあえず、普通に接した方がいいですよね。いつも通りな感じで。でも、俺態度に出ちゃいそうだな……ちょっとさっきの記憶が鮮明すぎる」
「じゃあ、さっさと帰っちゃえば? 朝、オトモダチが起きる前に帰っちゃうの。心の整理がつかない前にやり取りをして、『こいつ変だな、まさかあの夢は現実なのか』って気づかれるよりはいいわ。で、次に会ったときに普通に接すればいいわ。あれは夢だったのかって思わせたもの勝ちよ」
確かに、変に話してボロを出すよりは良い気がする。朝、早めに起きて適当に理由を作り、哲くんが起きる前に帰ってしまおう。次に会うとしたら、月曜日か。それまでには、いろいろと整理をつけなくては。
「……相談に乗ってくれて、ありがとございました。なんとなく、どうにかできそうな気がしてました」
まあ、夢かどうか勘違いしてくれるかという賭けではあるが、なんとかなるだろう。俺は変なところで楽観的だった。ご先祖様は満足気に頷いている。
(そういえば、お礼伝えてない)
しばらくして世界がぼやけ始めた。俺の目が覚めようとしているんだろう。そう思ったとき、勉強を教えてもらったお礼を、俺はまだ哲くんに伝えていないことに気づいた。
*
月曜、朝。俺は登校した靴箱の前で、哲くんとばったり会ってしまった。
「お、おはよう哲くん」
目線はしっかりと合った。けれども哲くんは、さっと顔を逸らして、さっさと先に行こうとした。俺は慌てて彼を止める。これはどっちだ。夜のことを夢だと思っているのか、現実だと思っているのか。俺は何も知らないふりをして接しなければいけない。俺がどう切り出せばいいか迷っていると、哲くんは、「悪い」と呟いた。
「先行っていいか」
「え、あ」
哲くんにしては、冷たい言い方だった。いや、話し方はいつもと変わらないんだけど、空気と言うか雰囲気が俺を拒絶してる感じ。そっか、夜のことを夢だと思ってるにしろ、現実だと想ってるにしろ、哲くんにとって俺とセックスしたことは記憶として残ってるもんな。確かに、こんな態度にもなるよね。哲くんが夜のことを夢だと勘違いしてくれたら、全部が丸く収まるはずだ。そう勝手に考えていた俺は、それが間違いであることに今気づいた。
「……待って、2つだけ言わせて」
同性とセックスする夢なんて、普通は不快に思うよね。夢の中でセックスの相手だった俺のことも気持ち悪くなったのかな。もう哲くんは俺のことを嫌いになってたら、そうなってたらもう、これまでみたいな関わり方はできなくなるわけで。俺は自分の手をぎゅっと握った。
「まずは、日曜日勝手に帰ってごめん。どうしても早く帰らなくちゃいけなくて」
哲くんは、足を止めて俺の話を聞いてくれるようだった。良かった、ここで無視されたら流石に傷ついた。俺は「後ね、」と続ける。
「勉強教えてくれてありがとう! 俺の分からなかったところ、哲くんは丁寧に教えてくれて、すごく助かった。勉強会の後に言えれば良かったんだけどタイミングがなくて、日曜は俺が早く帰っちゃったから……うん、伝えたかったのはこの2つ」
俺は「ごめんね、引き留めちゃって」と哲くんに謝った。下駄箱から靴を取り、履き替える。言いたいことは全て伝えた。身の振り方を考える、と言うと少し違うかもしれないけど、これからはもっと考えて行動しよう。俺はそう思った。
「俺も……」
声が聞こえ、顔を上げると、哲くんはまだそこにいた。彼は複雑な表情を浮かべている。
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