花が落ちても

頼守 シロロ

文字の大きさ
4 / 9

4

しおりを挟む
 




桜が咲く季節になり、同じ高校に入って来た妹は、良くも悪くも人目を引いていた。

中学に上がる前からモデルとしての仕事で忙しくしている、双子の兄、サクは知らないみたいだったが、入学当初は俺達の妹の割には冴えないと言う噂のみで、当時は、少なくとも”そう言う奴ら“は居なかった。
しかし、彼女に友達が増えてからは、密かに校内の話題を攫っていた。

普段は何方かと言うと地味とも言えなくもない彼女が、笑うと八重歯が覗いて、とても可愛い事は俺達だけが知っていた事だと思っていた。

「好きです。付き合って下さい!」
「はあ、参考までに聞きたいんですけど、私のどこを見て好きになったんですか。」
「そ、れは……そ、その、笑った時に八重歯が可愛いなって。思って。」

ーー殺すか、いや、どうにかしてあの男の頭の中から俺達の妹の記憶を消そうかと真面目に考えてしまった。

数分経ったのか、数時間経ったのかも分からない時間感覚の中で、棒立ちになっていた俺の意識を現実に戻したのは、誰かが腕を掴んで揺らして来たからだった。
見れば、去年の夏頃から、二つ結びがスタンダードになっていた妹が居た。

「カグロ、カグロ。」
「樺恋?」

そうだよ樺恋だよ、と返って来て、思わず、体が動いていた。

抱き締められている事に何の文句も言わずに、苦しいから力を弱めて、とだけ言う妹に腕を軽く叩かれた。
言われたままに、少し、腕の力を緩めた。

「んもう。返事くらいしてよね。」

人目が無いからだろうか。俺の胸板に手をついて、爪先立ちで手を伸ばして兄の頭をよしよしと撫でてくれる彼女の対応は、心なしか五割り増しで甘かった。

優しいのはいつもと変わらないが、最近は、あまり話さないらしいサクよりも俺との方が距離感が近いからか、甘えてくれるものの、今みたいに妹の方から甘やかしてくれるのは滅多に無い事で。とても、貴重な時間だった。
暫くは一人だけで幸せを噛み締めていたが、つい、機嫌が悪い時には口数が減るサクがむすっとしている顔を見て、思わず、その話をしていた。

……久し振りに、ここまでキレているサクを見たかもしれない。
無意識に寒気のした腕を摩り、半歩後退った俺の耳に、地を這う様な、つい、漏れ出たと言った風の声が届いた。

「は?」

何か間違えたかもしれない、と、兄に幸せをお裾分けするつもりで話したのに。動機と結果は、必ずしも、同じにはならないと後に知った。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

【完結】狡い人

ジュレヌク
恋愛
双子のライラは、言う。 レイラは、狡い。 レイラの功績を盗み、賞を受賞し、母の愛も全て自分のものにしたくせに、事あるごとに、レイラを責める。 双子のライラに狡いと責められ、レイラは、黙る。 口に出して言いたいことは山ほどあるのに、おし黙る。 そこには、人それぞれの『狡さ』があった。 そんな二人の関係が、ある一つの出来事で大きく変わっていく。 恋を知り、大きく羽ばたくレイラと、地に落ちていくライラ。 2人の違いは、一体なんだったのか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

友人の結婚式で友人兄嫁がスピーチしてくれたのだけど修羅場だった

海林檎
恋愛
え·····こんな時代錯誤の家まだあったんだ····? 友人の家はまさに嫁は義実家の家政婦と言った風潮の生きた化石でガチで引いた上での修羅場展開になった話を書きます·····(((((´°ω°`*))))))

悪役令嬢の去った後、残された物は

たぬまる
恋愛
公爵令嬢シルビアが誕生パーティーで断罪され追放される。 シルビアは喜び去って行き 残された者達に不幸が降り注ぐ 気分転換に短編を書いてみました。

ねえ、今どんな気持ち?

かぜかおる
ファンタジー
アンナという1人の少女によって、私は第三王子の婚約者という地位も聖女の称号も奪われた 彼女はこの世界がゲームの世界と知っていて、裏ルートの攻略のために第三王子とその側近達を落としたみたい。 でも、あなたは真実を知らないみたいね ふんわり設定、口調迷子は許してください・・・

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

処理中です...