転移したら勇者の敵国だった話

駐車場のネコ

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異世界生活

第28話〜霊〜

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リットからの衝撃的な話を聞いて、やはり魔王様はとてつもなく凄い人物なのだと再認識した。

雪合戦で対戦したときもそうだったが、強さの底が全く見えない。

これまで何回か魔物の討伐をしたが、その中には強いやつ、弱いやつ、沢山いた。

その中で、俺は何となくだが自分と比べて力がある、俊敏さがある、打撃に弱いなど特徴を捉えた上で戦闘を行ってきた。

しかし魔王様は何処が長所で何処が短所なのか、どれくらいの力を抑えているか、基全ての面において誰も近寄ることができない領域にいた。

その常人ならざる王、そのメンバーと共に過ごしたと言われるならば、人や魔物と話すことが出来る事は造作もない事なのだろうと理解した。

「まさか魔王様に所縁があるとは思いもしなかった。

せっかく紹介してもらったんだ、つまらないかもしれないが、俺について話そう。」

そうしてタクミは自分が異世界から来た転移者である事から、魔王様に会った雪合戦に至るまで、洗いざらい話した。

魔王の同僚のお陰で、悠久の時を過ごしているリットにとってはありふれた話だったかもしれないが、最後まできちんと話を聞いてくれた。

「さて、こんなところだな。

話は変わるが、ひとつ質問をしていいか?」

「構わないよ。

何でも出来る範囲で答えてあげよう。」

「この家に入る前、浜辺近くの森で昼寝をしていたら、俺の相棒のヒューが二匹に増えたんだが、一体何がどうなってるんだ?」

「ああ、そのことか。

詳しく話しても理解するのに難しい話になるから簡単に言うと、イタズラ好きの妖精の仕業だね。

なぜ君にイタズラをしているかは分からないけど、相当高位の精霊だね。

ヒューと君が真名によって意思伝達が出来る様にならない限り、何方が本物かは僕にもわからない。

上手に精霊もヒューになりきるからね。」

「だとしたらヒューがどちらか分からないのに信頼を築くことなんて出来るのか?

ヒューだと思って精霊の世話をひたすらにしていたら信頼は薄まってしまうんじゃないか?」


「いや、君が思うほど都合が悪い話ではないさ。

妖精は幸せの象徴だと昔から言われているよ。

僕が魔王と出会ってからかなり経つけど、もっとずっと前から言われていることだ。

精霊はイタズラのしがいがある人にしかつかない。

言い換えれば歴史を変えてしまうほどの強い源のみに姿を見せるのさ。

精霊はついた人に不幸を働きかける事はない。

そのかわり幸運を勝手に運んでくれる事もない。

ヒューになりきっている以上、ヒューを超えた力は発揮できないし、ヒューよりダメなわけでもない。

見た目通りヒューが二匹に増えたと思っていいだろうね。

とは言っても見た目が同じだと困るだろうから、首輪などで区別はつけたほうがいいかもしれないね。

いつか精霊が望むことを君がして、それで精霊の気がすめば、とてつもない幸運が君に訪れるよ。

こう聞くとそう悪い話じゃないだろう?

もしかしたら魔王になれるかもしれないし、それで真名が分かるかもしれないよ。

精霊に気に入られてる君は一体これから何をしてくれるんだろう。

僕はとっても楽しみさ。」

「なるほどな。

なら何方も相棒として仲良く過ごしていくとするよ。」

「気を悪くしたらごめんね。

実は僕がここに君を招き入れた理由は、精霊が君についていたからに他ならないんだ。

君が体一つでここへ来ても、僕は君をここへは招き入れなかったと思う。

精霊が付いていると言うことは世界のキーパーソンであることを暗に示しているんだ。

精霊は周りにそう教えてくれるのに加えて、君の成長の手助けをしてくれるという意味でも重要な存在になんだ。

そう教えてあげないと、ヒューと君に信頼が生まれないし、せっかくついた精霊をみすみす無駄にするのはもったいないからね。

長く生きているけどなかなかこんな状況には出会わないからね。

年上としてのアドバイスをしてあげたくなったのさ。

頑張って精霊の期待に応えておくれよ。

さて、こんな時間だしそろそろ僕は寝るとするよ。

またいつでも困ったらおいでよ。

出来る限り力になろう。」

「ありがとう、リット。

また話を聞きに来させてもらうよ。」

そう言って家を出た俺達は、魔王国へと戻ってきた。

安らぎの羽根ではいつもの暖かくて美味しい料理をたらふく食べ、心地よい温度のお風呂で汗を流した。

ヒュー達の世話をして布団に入るとすぐに疲れがどっと押し寄せて、あっという間に泥のように眠ったのだった。



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