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4:牛人間
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三日後――。
集合場のダンジョン前に少し早く着いた私は手鏡を手に――前髪のチェックをしていた。
そこに――
「遅くなってすまん。準備に手間取ってな」
夜逃げでもして来たかのような――荷の詰まったリュックを背負ったビシオンがやって来た。
「……え? どうしたの、その荷物??」
「あ?? クエストはミノタウロスだろ??」
小さなポーチを腰に身に付けた私とは……明らかに違う。
酸いも甘いもを知る――これが経験の差なのだろう。
「……私、生きて帰れるわよね??」
ふと、帰ってお昼寝したい気分になった。
そんな私を気遣ってか――
「まあ、大丈夫だろ?」
余計に帰りたくなったのだった。
*
クエスト――
【迷宮の番人 ~ミノタウロス一体の討伐~】
このクエストは迷宮と名前が付くだけあって、どこを見ても同じような壁ばかりだ。
右へ曲がっては行き止まり、左に曲がっては行き止まりと――初デートにしては選択ミスとしか言いようがない。
しかしながら、ビシオンは地図を作りながらだというのに愚痴一つこぼさない。
「戻った二つ目の十字路を今度は左に行ってみよう」
すでに三時間は歩いているだろうに、なぜかお腹は空いてない。
「ビシオ~~ン。そろそろお昼ご飯にしましょ~」
「昼飯だと?! 朝飯抜いて来たのか??」
「いやいや、食べてきたわよ。だって、そろそろお昼でしょ??」
大きなリュックを背負ったビシオンを気遣って言っただけだった。
なのに彼は――
「昼?? まだ入って三十分ぐらいだぞ??」
「――――え?!」
何を言っているのか理解できなかった。
「いや、ほら見てよ! 時計だって……十二時……じゃなくなってる」
確かにさっき見たときは、時計の針は十一時五十分をさしていた。そこから少し歩いたから、十二時になっている……はずだった。
「――――どういうことなのビシオンッ!?」
腕に掴みかかると、彼はあたりを見まわして静かに壁の上を指さした。
「あいつがこの迷宮の『時間』――そのものなのさ」
壁の上に居たのは……大きな懐中時計を首からぶら下げた小太りなリスだった。
「何……あのリス……?」
「あ、一応ウサギリスな。耳は短いけど、味はウサギ肉だから――」
「いやいや、今はそんな情報聞いてないから」
「あ……そう。まあ、何にせよ――――あいつが現れたってことは……近いな」
「――――はぁ?? 近いって……?」
嫌な気がしてならない私は落ち着いた様子のビシオンが居なかったら、たぶんここで死んでいただろう……。
行き止まりの壁をぶち抜いて現れたのは、牛の頭をした巨人。
――――牛人間だった。
「キモ――――――――ッッッ!!!」
集合場のダンジョン前に少し早く着いた私は手鏡を手に――前髪のチェックをしていた。
そこに――
「遅くなってすまん。準備に手間取ってな」
夜逃げでもして来たかのような――荷の詰まったリュックを背負ったビシオンがやって来た。
「……え? どうしたの、その荷物??」
「あ?? クエストはミノタウロスだろ??」
小さなポーチを腰に身に付けた私とは……明らかに違う。
酸いも甘いもを知る――これが経験の差なのだろう。
「……私、生きて帰れるわよね??」
ふと、帰ってお昼寝したい気分になった。
そんな私を気遣ってか――
「まあ、大丈夫だろ?」
余計に帰りたくなったのだった。
*
クエスト――
【迷宮の番人 ~ミノタウロス一体の討伐~】
このクエストは迷宮と名前が付くだけあって、どこを見ても同じような壁ばかりだ。
右へ曲がっては行き止まり、左に曲がっては行き止まりと――初デートにしては選択ミスとしか言いようがない。
しかしながら、ビシオンは地図を作りながらだというのに愚痴一つこぼさない。
「戻った二つ目の十字路を今度は左に行ってみよう」
すでに三時間は歩いているだろうに、なぜかお腹は空いてない。
「ビシオ~~ン。そろそろお昼ご飯にしましょ~」
「昼飯だと?! 朝飯抜いて来たのか??」
「いやいや、食べてきたわよ。だって、そろそろお昼でしょ??」
大きなリュックを背負ったビシオンを気遣って言っただけだった。
なのに彼は――
「昼?? まだ入って三十分ぐらいだぞ??」
「――――え?!」
何を言っているのか理解できなかった。
「いや、ほら見てよ! 時計だって……十二時……じゃなくなってる」
確かにさっき見たときは、時計の針は十一時五十分をさしていた。そこから少し歩いたから、十二時になっている……はずだった。
「――――どういうことなのビシオンッ!?」
腕に掴みかかると、彼はあたりを見まわして静かに壁の上を指さした。
「あいつがこの迷宮の『時間』――そのものなのさ」
壁の上に居たのは……大きな懐中時計を首からぶら下げた小太りなリスだった。
「何……あのリス……?」
「あ、一応ウサギリスな。耳は短いけど、味はウサギ肉だから――」
「いやいや、今はそんな情報聞いてないから」
「あ……そう。まあ、何にせよ――――あいつが現れたってことは……近いな」
「――――はぁ?? 近いって……?」
嫌な気がしてならない私は落ち着いた様子のビシオンが居なかったら、たぶんここで死んでいただろう……。
行き止まりの壁をぶち抜いて現れたのは、牛の頭をした巨人。
――――牛人間だった。
「キモ――――――――ッッッ!!!」
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