絶望勇者と私の後半戦

川井田ナツナ

文字の大きさ
7 / 8

6:私、女よ!

しおりを挟む
 ――――迷宮に入って二ヶ月が経った。

 さすがの私でもダンジョンに住み着き、勇者の指南を受ければ『ザコモンスター』ぐらいなら一人で倒せるようにもなる。
 ビシオンからもらったダガ―から滴る血を振り払い、鞘に納めた。

「よし、今日の食料は調達できたから泉に帰るか」

(……帰るの早っ)

 毎日の日課に追加されたザコモンスター狩りだが、ビシオンから乱獲は禁止されている。
 ザコモンスターといえど、その体内には魔石があり――小石サイズでも一週間分の贅沢な食費ぐらいにはなるらしい。

 だからこそ、隙をみせているモンスターが目に着けば――自然と体が反応した。

「――――ん”ッ!!」

「――――帰るって言っただろ?!」

 しかし、その度にビシオンが首根っこをつかみ止める。この繰り返しだ。
 どうも私には彼の言う『待つ』というのが向いていないらしい。

 そもそも、生きて帰れたとしても音信不通となった私は職場をクビになっているだろうし……借りていた部屋だって大家さんが他の人に貸し出しているかもしれない。
 そのことを考えるとなおさら、遠ざかっていく目先の利益が恋しく感じた……。

 また、その間にもミノタウロスは初めて見た時よりも力を付けているような気がしてならなかった。


 *

 
 ミノタウロスと遭遇して三カ月が経とうとしていたある日――――。

 朝の食事をしていると、ビシオンがミノタウロスとの戦闘に備えるように言ってきた。


「……えっ?! 私も戦うの??」


 すでにミノタウロスは多くの養分――まあ、他の冒険者のことだが。それらの手足を食べ、素人目の私でも分かるほどに強くなっていた。
 そんなミノタウロスと駆け出し初心者の私が戦うなんて、『死ね』と言われているようなもの――。

 だが、彼は私が言ったことを理解していないのか――


「ん?? そのためにいるんじゃないのか??」


 はああああああああああ??!!


「いやいやいや、ビシオンさん――――。見て分からないの?? 私、女よ!」

「そうだな……俺は男だ」

「いやいやいや、お互いの性別の話をしているわけじゃなくって。か弱い女の子ってことよ、自分で言わせないで!」

「か弱い……?? 確かに俺に比べれば『か弱い』が……まあ大丈夫だろ」

「……冗談じゃないのよね??」

 もしかしたら、この時に断っておけば良かったのかもしれない……。
 しかしながら、それでも彼は……私を戦闘に参加させただろう。

 ……そんな気がしてならない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

不実なあなたに感謝を

黒木メイ
恋愛
王太子妃であるベアトリーチェと踊るのは最初のダンスのみ。落ち人のアンナとは望まれるまま何度も踊るのに。王太子であるマルコが誰に好意を寄せているかははたから見れば一目瞭然だ。けれど、マルコが心から愛しているのはベアトリーチェだけだった。そのことに気づいていながらも受け入れられないベアトリーチェ。そんな時、マルコとアンナがとうとう一線を越えたことを知る。――――不実なあなたを恨んだ回数は数知れず。けれど、今では感謝すらしている。愚かなあなたのおかげで『幸せ』を取り戻すことができたのだから。 ※異世界転移をしている登場人物がいますが主人公ではないためタグを外しています。 ※曖昧設定。 ※一旦完結。 ※性描写は匂わせ程度。 ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載予定。

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

彼女の離縁とその波紋

豆狸
恋愛
夫にとって魅力的なのは、今も昔も恋人のあの女性なのでしょう。こうして私が悩んでいる間もふたりは楽しく笑い合っているのかと思うと、胸にぽっかりと穴が開いたような気持ちになりました。 ※子どもに関するセンシティブな内容があります。

俺の妻になれと言われたので秒でお断りしてみた

ましろ
恋愛
「俺の妻になれ」 「嫌ですけど」 何かしら、今の台詞は。 思わず脊髄反射的にお断りしてしまいました。 ちなみに『俺』とは皇太子殿下で私は伯爵令嬢。立派に不敬罪なのかもしれません。 ✻ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。 ✻R-15は保険です。

妻を蔑ろにしていた結果。

下菊みこと
恋愛
愚かな夫が自業自得で後悔するだけ。妻は結果に満足しています。 主人公は愛人を囲っていた。愛人曰く妻は彼女に嫌がらせをしているらしい。そんな性悪な妻が、屋敷の最上階から身投げしようとしていると報告されて急いで妻のもとへ行く。 小説家になろう様でも投稿しています。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

処理中です...