絶望勇者と私の後半戦

川井田ナツナ

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7:冒険者と勇者の違い

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 ミノタウロスがうろつく迷宮に進み、しばらく探索していると――遠くでミノタウロスが横切るのが見えた。

 ビシオンが先陣し、気配を気取られぬように進む。
 これまでの日課から、現在のミノタウロスは『あてもなくフラフラしているだけ』の状態にある。

 彼はこの状態を「人間の老人だって街中をフラフラしているだろ?」と例え話をしたが、いまいちピンと来なかった。なんせ相手はモンスターであり、人間ではない。

 とはいえ、先制をしかけるには持って来いのチャンスである。

「――私から行くわッ!」

 静かに駆け寄りジャンプ――ミノタウロスの首めがけて両手で掴んだダガーを振り上げた。

(やっと帰れる……)

 そう思ったのは気の緩みか、私の脳内が先に作りだしたミノタウロスが倒れる姿なのか……。

「死ねえええええええええええええ!!」

 私はこれまでに何度も観てきた冒険者たちと同じように、アドレナリン全開で不意打ちなのに声を上げた。
 そして、思い返されるビシオンの言葉……。


「冒険者と勇者の違い――――?! まあ、そうだな……養分は頭が沸きっぱなしだが、俺は沸かない。……いや、仮に沸いたとしても抑えられるがな」

「なんでそんな冷静でいられるの――――?」


 そんな話を聞いたのは、泉の畔で鍋に火をかけて湯を沸かしていたときだった。
 あのとき、ビシオンは何て答えたんだっけ……?

 振り返り様に斧を振るミノタウロスを観ながら、答えを探した。

 それが良かったのか、斧の軌道に合わせてダガーの刃を滑らせる。
 着地と同時に回避距離を取った。

「……相手がビシオンだったら、着地の瞬間――顔面に蹴りを入れられてたわね。フゥーー」

 息を大きく吐くと、すでに隣にはビシオンが居たことに気づいた。

「……さすがに寸止めするけどな、一応」
「どうだか――――。一旦、引く??」

 冷静になった私に、この先の展開は読めなかった。

「いや、充分だ……。それにアイツの顔見ろよ、俺たちに狩られたくてしょうがなさそうだぜ……」

 不敵に笑う彼は抑えているのだろう……。
 はらわたで煮えくり返り続ける『何か』を――――。
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