【完結/R18】ヤンデレ絶倫王太子に身も心も溶かされています

久藤れい

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11話

 かつん、かつん。冷たい石畳でできた牢屋に硬質な足音が響く。
 がちゃりと牢屋の扉を開いて中に入ったオスクロは、怯えるサンドルの前に立つ。

 鎖が擦れる耳障りな音が響いて、オスクロは僅かに眉を顰めた。彼の表情の変化にサンドルがびくりと肩を揺らす。

 サンドルは牢屋の奥で鎖に繋がれ磔にされている。上裸の肌には鞭うたれた赤い跡がいくつも残っていた。
 オスクロの私情を抜きにして、彼が犯した罪はそれだけ重い。

「ずいぶんな反応じゃないか」

 明らかにオスクロに対し恐怖を感じている様子のサンドルに、ニヒルに口元を吊り上げる。
 ポケットに入れていた魔道具を取り出し、見せつけるようにサンドルに突き付ける。

「これは人の声を録音する魔道具だ」
「ろく、おん」
「そうだ。お前の罪を全て吐け」

 サンドルのただでさえ悪かった顔色がさらに青ざめる。
 恐らく彼は裁きのために要求されていると思っているのだろうが、オスクロの思惑は違う。

(ルーチェに現実を突きつける)

 いまだサンドルの幻影を追いかけるルーチェに事実を叩きつけるのだ。
 そのために新しく開発されたばかりの魔道具を魔道研究所から持ち出してきた。

 国の天才魔術師が作り出したこの魔道具は、人の声音をそのまま保存する。
 本人が喋ったままを録音するので、信頼度が桁違いだ。今後、国の主要な場面で活躍する魔道具となるだろう。

 そんな貴重な品を持ってくるほど、実はオスクロには余裕がない。
 いつまでも自分を見てくれないルーチェに焦りを抱いている。

(彼女を手に入れるためなら、手段は選ばない)

 身も心も等しく欲しいのだ。身体ばかり手に入っても意味がない。
 また、日夜抱いているというのに子を孕む気配がないことも焦りを加速させている。

 ルーチェを城に連れてきてすでに一か月がたつが、子を孕むどころか日々憔悴していくのだから苛立ちを隠せずにいた。

「さあ、吐け。自分の犯した罪を全てだ」
「い、嫌だっ。許してくれ!!」

 魔道具を顔面まで近づけると、サンドルは涙を流しながら許しを請う。
 今更な反応にオスクロは勢いよくサンドルの顔面を掴んだ。剣術で鍛えた握力で、ギリギリと彼の顔を締め上げる。

「吐け。二度は言わない」

 淀んだ青い瞳は人を殺せるほどに研ぎ澄まされていて、さらにオスクロの纏う冷徹な雰囲気に負けたサンドルは、擦れる声音で自身の罪過を吐露し始めた。



 * * *



 サンドルを絞り上げ、余罪を含めて洗いざらい吐き出させたオスクロは上機嫌に城の奥へと向かっていた。

(余罪を含めて、いい供述だった。とはいえ、使い道がないにこしたことはない)

 現実は見てほしいが、ルーチェがしくしくと泣く姿は心が痛むのだ。同時に酷くそそるものもあるけれど。
 すました顔でそんなことを思案しつつ城のさらに奥まった場所、別棟が立つそこへと向かう。
 ルーチェを保護している塔だった。

 塔の最上階に着くと、オスクロはポケットに入れていた鍵を取り出して部屋の扉に差し込んだ。
 かちゃりと軽い音が響き、施錠が解除される。

 ルーチェは白いベッドにうずもれるようにして丸くなっていた。
 薄い水色のベビードールを身に纏っていることから、メイドの手で身体は清められた後のようだ。

 ベッドの手前に置かれているローテーブルには手つかずの食事が残っている。
 ちらりとそれらを視界に入れて、オスクロは静かにベッドに近づいた。

 やんわりと体重を受け入れるベッドに腰を下ろして、金の髪を撫でる。
 連れてきた時より、ずいぶんと指通りが良くなった。メイドたちがきちんと手入れをしているからだ。

「ルーチェ、ダメじゃないか。食事はきちんと摂らないと」
「……」
「ほら、一緒に食べよう。――それとも、食べさせられる方が好みかな?」

 そうっと耳元で囁くと、びくりとルーチェの肩が揺れる。
 恐る恐る振り返ったルーチェに、にこりと綺麗な笑顔で笑いかける。

「どうする? ルーチェ」
「……自分で食べるわ」
「そうか。つまらないな」

 軽く肩をすくめてベッドから立ち上がり、手を伸ばしてひょいとルーチェを抱き上げた。
 最初の頃は散々に抵抗されたが、すっかりと大人しくなった。

 そのままソファに座ったオスクロは膝にルーチェを乗せて食事に手を伸ばす。
 食堂の食事より数段豪華ではあるのだが、冷たくて味気ない。

 とはいえ、食べなければますますルーチェの体力が落ちてしまう。
 これ以上痩せることも、体力が無くなることも避けなければならなかった。

 ルーチェが寝ている間に見せた宮廷医師には、これ以上体重が落ちれば夜の営みに耐えられないだろうといわれている。

「ほら、口をあけて」
「……」

 スプーンで冷たいジャガイモのポタージュを掬う。
 最初から冷水スープとして作られるジャガイモのポタージュは冷えていてもそれなりに美味しい。
 ルーチェの口元に運ぶと、彼女は眉を寄せてそっぽを向いてしまう。

「おや」

 いつものことなので落胆はない。自身の口元に運んで、ぱくりとポタージュを口に入れたオスクロはそのままルーチェの顎を掴んで口づけをした。

「ん、んん」

 精一杯の抵抗をするルーチェの口の中にポタージュを流し込む。
 口内で少しだけ温くなったポタージュを口移しされたルーチェが泣きそうに眉を寄せたので、そっと口づけから解放した後その口を塞いでおく。

「飲み込んで」
「……っ」

 こくりと喉が動いたのを見て、再びポタージュにスプーンを入れると、その腕に白い手がかかる。

「……自分で、食べるわ」

 散々に啼いている影響でかすれた声音で告げられる。
 オスクロは「そう? 食べさせてもらいたくなったら、いつでもいうんだよ」と告げてスプーンをルーチェに渡した。
 膝の上にちょこんと座ったまま、震える指でポタージュを掬う姿をじっと見つめながら。
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