【完結/R18】ヤンデレ絶倫王太子に身も心も溶かされています

久藤れい

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18話

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「ふんふんふーん」

 鼻歌を歌いながらふっくらと膨らんだお腹を撫で、ルーチェは窓際で日向ぼっこをしていた。
 小さな音が響いて視線を扉に向けると、鍵と魔力認証を経てオスクロが姿を現した。

 ルーチェが一度『間違って』外に出てから、扉には鍵だけではなく魔力認証が追加された。
 オスクロの魔力にのみ反応するのだ。

 ルーチェの世話を任されているメイドたちは困り果てていたが、『間違い』に世話係のメイドが関わっていたことからオスクロは断固として自分以外の魔力認証を拒絶していた。

 ――と、いうのはルーチェが妊娠する前までの話だ。

 彼女が身重になってからは、さすがに医師と産婆の魔力認証は許可された。
 産婆はルーチェが処女かどうか確認した魔術師のような人物だった。

 彼女が産婆だと知って驚くルーチェに「あたしを何だと思っていたんだい」と産婆は呆れた様子で肩をすくめたのが、少し前の話だ。
 医師は国中を探して珍しい女性医師を引っ張ってきたあたりに、彼のルーチェへの溺愛ぶりがうかがえる。

「オスクロさん、お帰りなさい」
「ただいま、ルーチェ」

 閉ざされた小さな塔。そこがルーチェにとって世界の全てになってから早六年がたつ。
 部屋の外に出ることを拒絶するルーチェと、彼女を檻の中に閉じ込めておきたいオスクロの思惑は綺麗に一致して、彼女はもう六年もの間、この部屋からでてはいない。

「子どもたちの様子はどうですか?」
「元気だよ。二人に庭で遊ぶ許可を与えたから、すぐに見えるよ。――ほら」

 窓の外を示されて、塔から見える庭へと視線を流す。そこには無邪気に遊ぶ二人の愛の結晶がいた。
 ルーチェは最初に男児を、次に女児を生んだ。年子の彼らは非常に仲が良く、健やかに育っている。

 妊娠すると暫く夜を共にできない。
 それを渋ったオスクロによって、妊娠を阻害する薬を数年飲んだため、三人目を身ごもるまでに多少の時間がかかった。

 すっかり大きく育ったお腹を前に、オスクロが床に膝をつく。
 夫としては当たり前の行為だが、他に人がいれば王太子が膝をつく光景に慌てるだろう。
 とはいえ、ルーチェには見慣れたものである。彼女の膨らんだお腹に耳を当てた彼の漆黒の髪をそっと撫でた。

「動くかな?」
「先ほどまで元気だったんですけど」

 じっと暫く待ってみても、腹の中の子は動く気配がない。
 それでも諦めず腹に耳を当て目を閉じる愛しい人に、ルーチェは小さな笑みを零す。

「元気に生まれておいで」

 優しい声がまだ見ぬ我が子に掛けられる。
 でもきっと、子供が生まれたすぐにオスクロはルーチェに夜を強請るのだろう。

 今までの子供たちのときもそうだった。
 医師は「せめて半年は安静に」と渋い顔をしていたが、子供を身ごもって十月十日、彼の熱に触れられないルーチェのほうが我慢できずに彼を強請ってしまうから意味がない。

(ああ、早く生みたいわ)

 そうしたら、子供たちが寝静まった深夜に彼と気持ちいいことができるのに。
 うっとりと頬を赤らめたルーチェに、ようやく耳を外して視線をあげたオスクロが笑う。

「おや、いけない顔だ」

 何を考えていたのかお見通しだといわんばかりのセリフに、頬が朱色に染まる。
 立ち上がったオスクロが触れるだけのキスをルーチェの頬に落とした。

「もう少しだけ我慢だよ、ルーチェ」
「はい」

 従順に頷くと、満足げに微笑まれる。
 オスクロの優しい眼差しを注がれて、身体の中心が熱を持ってしまう。

(ああ、どうしよう)

 お腹が大きくなってからは、オスクロがいない間に一人で処理することも難しい。
 本当に困ってしまって頬に手を当てるルーチェにオスクロが笑う。

「困ったな。私の奥さんは欲張りだ」

 あえて耳元で低い声で囁かれる。
 ぞくんと粟立った背中に、物欲しげな瞳をオスクロに向けてしまった。

「何かあっては困るからね。子を生むまでは我慢だ」
「そんなぁ」

 ここまで焦らされて放置なんてあんまりだ。けれど、子を優先する気持ちは痛いほどにわかる。
 ルーチェだって腹の中の子は愛おしい。それに、ルーチェが生む子供たちはみな王位継承権を持っているのだ。
 万が一があってはならない。

 街娘の血を王家に混ぜることに、相当な議論が巻き起こったらしいとルーチェも小耳に挟んだ。
 だが、彼の跡取りを生むべきだった令嬢が性に奔放すぎて誰の子かもわからぬ子供をもう何人も生んでいるという。
 そんなご令嬢に後継ぎを生ませるわけには、と誰もが辟易としたらしい。

 そしてなにより、オスクロ自身が『妃はルーチェ以外必要ない』と断じて、全ての縁談を断ったというのだ。
 事実、彼は夜は必ずルーチェの元を訪れる。

 その上、ルーチェ自身が健康な子供を二人生んだのもあって、世論は「王家の血を途絶えさせるよりは、まだ」という方向に傾いているらしい。

(私はどちらでもいいの)

 自身の王太子の寵姫という立場にも、子供が王位を継ぐことにも、なに興味はない。
 ルーチェの関心があるのはただ一つ。

(オスクロさんの愛があればいい)

 太い肉棒でつき抜かれ、奥を揺さぶられる。あの快感を得られるのであれば、それだけでいい。
 子供を生んだ後の夜に想いを馳せて、うっとりと瞳を潤ませた彼女を、心底愛おしそうにオスクロが眺めていた。
 世界でただ一人、尊き血を持つ王太子を跪かせられるかつて少女だった女は、そうやって愛を育む。
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