まさか、こんな事になるとは思ってもいなかった

あとさん♪

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本編

5.乙女ゲーム『この恋をアナタと』②(マリア視点)

 
  翌日、王太子(ジョンのお父さんよ)が突然王子宮に乗り込んで来てジョンを何処かに連れて行ってしまった。
 あたしも王子宮から無理矢理追い出されて、王宮の一室を与えられて……って言えば聞こえは良いけど軟禁されているわよね。

 ドアは施錠された上に見張りの近衛が立ってるし、自由に出歩くのを禁止されたし。
 一体どうしたんだろう? 誰も何も教えてくれない。1日に3回食事を運んでくれるメイドさんがいるけど、何も答えてくれない。日に1度ベッドメイキングして部屋の掃除をしてくれるメイドさんも、あたしの質問に無反応。あたしをチラリとも見ないの。

 ねぇ、ジョンは何処に居るの? せっかくトゥルーエンドを迎えたと思ったら離れ離れになるなんて、どうなってるの?
 もしや、あたしの知らないSEASON2が始まったとでも言うのかな。

 不安な日々を過ごしていたら、王様から連絡が来た。あたしに会いたいんだって!
 この国の国王陛下は昔戦場を駆け回ってたという脳筋陛下なのよね。
 うぅっ国王さまに嫌われたらジョンとの結婚を反対されちゃうんじゃない?
 それは避けないと!
 困ったな、選択肢が無い状態はどう対処したらいいか解らない。

 あたしは怖々と謁見の場に向かった。
 国王さまとの謁見の場は、あたしたちが卒業記念パーティをした王宮の一番広いホールだった。
 そこに入ったら、驚いた事に学園の皆が居たわ。うん? もう卒業したんだから元学園生? かな? あの卒業記念パーティに参加した全員が居るんじゃないかな。

「マリア! 会いたかった!」

 声をかけてくれたのは……騎士団長の息子のロバートだった。でも。

「ロバート! 貴方、その顔どうしたの?!」

 彼はビックリする程顔を腫らせていた。えっと、試合に負けたボクサーって感じ? 片目がプックリ腫れて、その目、見えてないでしょ! 至る所青タンだらけで、一体誰と戦ったの?

「親父に稽古つけさせられて……」

 ロバートはお兄さん達が優秀な騎士で、それにコンプレックスを感じているの。自分は兄に劣る不出来な人間だって。
 ぶっちゃけ、お兄さん達とは年が離れているのがそもそもの原因なのよ。
 身体も出来上がっていない少年が、現役騎士と同じ能力な訳ない。なまじ、すぐ上のお兄さんがちっちゃい時から開花した天才肌だったせいで比べられたけど、ロバートは大器晩成型。ちゃんと身体を作って地味だけど毎日稽古を続けたら成功する子なのよ。
 まぁ、説明したらいい感じに更生したと思うんだけど。お父さんとも仲良くやれてるみたいだし? でも騎士団長のつける稽古って過激なのね。顔の形変わるまでやらなくても……怖っ。

「そう……大変だったわね……ねぇ、ジョンが何処に居るか知らない? 全然会えてないの!」

「ジョン殿下? マリアは一緒だと思ってた……」

「マリア! ロバート!」

 後ろから愛しい人の声がする! あたしは満面の笑みで振り返った。

「ジョン! 会いたかったわ!」

 ジョンがあたしを抱きしめてくれる。温かな腕の中……幸せ♪

「マリア、辛い目に遭っていないか? 不自由は無いか? ……一緒に居てやれなくて済まない……」
「ううん、良いの。今ここに居るから」

「ところで、この集まりは一体何なんだ?」

 ジョンの後ろに居たらしいキースが言う。
 キースは子爵子息でジョンの側近候補なの。ジョンの幼馴染でもあるわね。
 キースの家は元々は侯爵家だったけど、前の前の当主が、昔なんか悪い事して子爵に落とされちゃったんだよね。それが負い目になってて根暗君なんだけど、キース本人は頭良いんだから王子の側近になって、この先頑張れば昇進するよって慰めるとちょっと明るくなるんだ。
 この子BAD ENDだとヤンデレ化するから取扱い注意なんだよね……。


「よく分からないが……父上がお怒りなんだ。俺が勝手に婚約破棄したから」
「?? それと、この集まりに何の関係が?」
「お祖父さまも俺に聞きたいらしいんだ。何故婚約破棄したのか、と」
「あたし、国王陛下があたしに会いたがっているって聞いて来たんだけど……」
「あぁ、マリア。お祖父様も愛らしい君を見たら、きっとお許しくださるはずだ」

 その時、木か何かを打ち付けるようなカンカンって高い音が鳴り響いたわ。
 後から気がついたけど、あの音って法廷ドラマでよく裁判長が叩いてる木槌の音、あれにそっくりだった。
 その音を合図に、場内はシン……と静まり返った。そして厳かな声が聞こえた。


「国王陛下、並びに王太子殿下のお出ましです」


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