多産を見込まれて嫁いだ辺境伯家でしたが旦那様が閨に来ません。どうしたらいいのでしょう?

あとさん♪

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本編

23.「君の許しが欲しい」

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※アリスの主観バリバリです



 逃げるに逃げられず、心の中で右往左往していた私に寄越された言葉は、なんという破壊力を持った言葉っ!
いいか? って訊いてますけど、先程から私の頭頂部に、キス、してましたよね? あら? それはカウントされないのですか。 なるほど、そうなのですね。では、どこにキスするのか、というと……?
旦那さまの温かい大胸筋に押し付けていた顔を離して見上げると……
まぁ…………
そこに居たのは、なんて、柔らかい笑みの麗しい旦那さま…………色気がっ! 色気が駄々洩れしていますよっ! 

「アリス…………君の許しが、欲しい…………」

 ふぁっ?! そんな色気駄々洩れ状態で、囁いてきますか? お声にまで色気を載せますか? なんですか、その無駄スキルっ! 女性にモテた事ないなんて、嘘でしょ? はっ! この辺境フィーニスの地の女性の好みは、旦那さまよりも、もっともっと筋肉隆々の男! が全面に押し出されたタイプが主流なのでしたね。王都では真逆ではありましたが。
旦那さまがもし、王都でお育ちなら、この顔にこの身体にこのお声、間違いなく一流の女タラシに成長していた事でしょう!! 『一流の女タラシ』なるものがどんな存在なのかは、甚だ疑問ではあるけれど! ソンナモノ、物語の中だけで実際には見た事ないし!

「……アリス?……」

 首っ! 首を傾げないで下さいませっ!!
私の返事を促す為の動作だとは理解していますが! 理解してはいても、それはそれ、これはこれ、ですよっ!! もうっ! どうしてここで可愛さまで出してくるのですかっ?! 私より大きいくせに、年上のくせにっ、可愛いなんて、反則ではありませんかっ!

 この顔にこの身体にこのお声の上に、可愛さまである………ですってぇ…………?
旦那さま、あなた、最悪に最強で最凶ですよ…………一級品の女タラシですわよ…………?

「…………」

 はぅぅぅっ…………旦那さまってば、私が返事をしないからって、幻の耳を頭の上に装着しないで下さいませっ!! 叱られたワンコの耳の幻影が視えますっ! そして表情に憂いまで載せてきやがりましたよっ! なんという波状攻撃っ!! 私の心がもちませんっ! 治癒士はいらっしゃいませんかっ?! 

「わ、私が、ダメって言ったら……しない、の……?」

 そう訊いたら。
基本は笑顔ではあるのですが、ちょっと残念そうな、でもどこか嬉しそうなお顔で

「しない…………アリスが嫌だという事は、絶対、しない」

っていうお返事が!
でもっ、それを私の唇付近――限りなく唇に近い頬とか、顎とか――を指でそっと触りながら言うの。私、促されてます? ちゃんと返事しなさいって、促されていますよね? それもNoではなく、Yes一択で、ですよね? そして、旦那さまの表情が………憂いと色気の籠った表情の中の、瞳が……これ、捕食者の、眼…………あぁ…………逆らえない、やつです…………

「……ばかぁ……」

 私がそう囁けば、旦那さまは、ちょっとだけ笑ったみたい。だって私、目を瞑ってしまったから、もう、旦那さまのお顔が見られないもの。
旦那さま。こういう時は、黙って奪ってしまうのが、良い男の条件の一つ(たぶん)ですよ? 私、頑張って、顔を上げているのですよ?

「参った……」

旦那さまの呟きが聞こえます。

「じゃぁ、アリス……嫌じゃない、なら……目を開けて……俺を見て……?」

 あぁ。
失敗しました。目を瞑ってしまったから、私の感覚、全てが耳から得る情報をつぶさに把握しようとしていました。だから、旦那さまのあのお声が、一級品の女タラシのお声が、私の全てになってしまいました。つまり、言いなりになって目を開けてしまいました。
眼前に、嬉しそうに笑う旦那さまが。

「よかった」

 形の良い唇から、そんな言葉が零れ落ちたかと思った次の瞬間に、私の唇は旦那さまに奪われていました…………。
柔らかく、しっとりと包まれたかと思ったら、すぐ離れて、また包まれて…………そして唇の隙間からそっと舌が差し入れられました…………
歯列を撫でられ、くすぐったくて、すぐに舌を差し出してしまったのは私の敗北宣言以外、何物でもないと思うのです…………
 旦那さまの舌と私の舌が触れ合ったと思った瞬間、身体中に言いようのない痺れが駆け巡りました。訳も解らず夢中になって旦那さまの舌を追いました。その度に、身体からは力が抜けて、その代わり腰の奥から熱くなって、堪らなくて喉の奥から抗議の声をあげるのだけど、その声は鼻声になって、我ながら甘ったれた声になっていて、旦那さまは止めてくれなくて…………私の頬に触れていた旦那さまの手が、いつの間にか私の胸に触れていて…………その存在を確かめる様に、そっと優しく触れてくれるから、ちょっとだけ嬉しくて、でも、このままここで?! とちょっとだけ冷静になった頭の隅が警告を発していて、大部分の私の思考は旦那さまの齎す舌の感触がただただ気持ちよくて何も考えられなくて、本当にどうしたらいいのかわからなくて――――

『頃合いか』

 そんな声と同時に突然出現した圧倒的な熱量!
火の精霊サラマンダーの王、フレイさまが私たちの側に突然現れて―― 同時に、旦那さまは意識を失いぐったりと倒れ込み――当然、私の上に倒れ込みかけ――フレイさまが、私と旦那さまを抱き留めてくれました。(正確には、抱き留めて貰ったのは私。旦那さまは首根っこ掴まれてぶら下げられた状態でした……)

「精霊王、さま……」

『邪魔だてして悪かった、アリス。だが、盛ったら止めろと事前に依頼していたのは、イザークこいつだからな? 我が覗き見していた訳ではないのだぞ?』

覗き見? 精霊王さまが?

「旦那さまが契約者なのですから……覗き見もなにも、ないのでは……?」

『うむ、その通りだな。だがイザークこいつはここに三重の結界を張り巡らせておったぞ? 滑稽だとは思わぬか? ここは、魔獣はおろか、普通の獣もあまり寄り付かぬ土地だ。だが結界を張ったイザークこいつは、余程そなたとの時間を邪魔されたくなかったと見える』

くつくつと楽しそうに笑う精霊王さま。

『して、アリスよ。イザークこいつが目覚めるまで待つか?』

「え?」

『我が眠らせたから、水でも浴びさせねば早々には起きんよ。だが、屋敷ではそなたの誕生日を祝うと、屋敷の者たちが総出で準備をしておる。先代夫婦に弟……それに、そなたの兄と名乗る者が訪れておるよ?』

「え? 兄さま? どの兄さまでしょう?」

私には、4人の兄がいるのです。

『我に区別はつかん』

確かに。自己紹介もしていないのでしょうし、無理もありません。早く本邸宅に帰って、どの兄さまなのか確認しなくてはなりません。

「どうしましょう、旦那さまに連れて来て頂いたから、帰り方が判りません」

『何の為の我ぞ? そなたにはイザークこいつ同様の加護を与えると申したであろう?』

え?

『覚悟はよいか?』

え? と思っていたら精霊王さまが私の肩を抱いて

『煤だらけになるとパルフェに叱られるが、許せ』

え? と思う間もなく、本邸宅の厨房、大竈の前に立っていました。煤に塗れた当主夫妻が突然現れたのですもの、厨房の料理人たちに大混乱と大騒ぎを齎してしまい。

本当に、面目次第もありません…………




でも、瞬間移動を体験してしまいました! 
フレイさま、ありがとうございました!!








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『溺愛』の定義を教えて欲しい(泣き言)
必要最低条件を知りたいです  ( ̄▽ ̄;)
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